横断歩道を使って横断する車両に道路交通法25条の2第1項が適用され、正常な交通を妨害するおそれがあるときは「横断禁止」ですが、
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
読者様から教えてもらったのですが、なぜか支離滅裂な解釈をする人が出てくる。
これはこの人に限らず、一部の「道交法界隈」と呼ばれる人はなぜか横断歩道通行車両に25条の2第1項が適用されないと主張する。
それ、横断歩道を渡っている自転車を邪魔したらダメ、という規定なんですよね。
法は自己中に解釈すると痛い目に遭いますよ。— シゲ (@TauShigeShige) November 6, 2024
しまいには何の根拠も示さないまま、「どちらにせよ」とまとめに入ってますが、なぜか珍解釈をして間違いを認めないという…
どちらにせよ、横断歩道を渡る自転車は第25条の2で違反に問われることはないですね。
— シゲ (@TauShigeShige) November 7, 2024
そもそもなぜこのような珍解釈をするのかについては、理由がある。
横断歩道を使って横断する車両に25条の2第1項を適用しないと主張する理由
なぜこんな珍解釈に至るかというと、
それ、横断歩道を渡っている自転車を邪魔したらダメ、という規定なんですよね。
法は自己中に解釈すると痛い目に遭いますよ。— シゲ (@TauShigeShige) November 6, 2024
この界隈(ビッグ主語)、横断歩道を「歩道」と捉え、歩道を「横切る」車道通行車両こそが「横断」と思っているからなんですね…
横断歩道は「歩道」ではない(歩道は工作物で仕切ることが要件、2条1項2号。なお横断歩道は「道路の部分」、同4号)。
横断歩道を歩道と捉えた場合には車道通行車両が歩道を横切ることが許されてないことになり(17条1項但し書き。歩道を横切ることが許されるのは路外出入と駐停車の一部のみ)、意味がわからなくなる。
さらに横断歩道は「横断の用に供する」とあり、「横断歩道によつて道路を横断」(12条1項)とあるように横断歩道を使っている歩行者も「道路の横断」なのであって車両についても分ける理由がない。
けどこの界隈(ビッグ主語)は横断歩道を歩道と捉え、歩道なんだから車両が横断歩道を使うことは禁止で、普通自転車のみが許されているという独自解釈をする。
そんなもんは判例や警察庁の見解と整合しないわけで…
道路交通法上、車両の横断歩道通行を直接に禁止する規定はない
「小児用の車の意義について」(警察庁交通局交通企画課 中澤見山)、月刊交通1979年7月(昭和54年)、東京法令出版
本件のように附近に自転車横断帯がない場所で自転車に乗ったまま道路横断のために横断歩道を進行することについては、これを容認又は禁止する明文の規定は置かれていない
昭和56年6月10日 東京高裁
第84回国会 衆議院 地方行政委員会運輸委員会交通安全対策特別委員会連合審査会 第1号 昭和53年4月26日
○水平委員 それから、自転車の横断帯の新設によって、自転車は一応乗ったまま横断できますね。ところが、歩行者の横断道では必ず下車をして、自転車を引いて渡らなければならぬという配慮が必要だと思うのですが、この道交法の中にはそうした法的根拠といいますか、法的に明確にされていないですね。そこらあたり、なぜ明確にそういうことをうたわれなかったかということについてお答え願いたいと思います。
○杉原政府委員 従来必ずしも徹底をしないきらいがございましたが、基本的には横断歩道で歩行者の妨害になるときには、押して歩行者と同じ立場で歩いてもらうということでございます。今度も、歩道の自転車の通行を法律上認めることにしたわけでございますが、この場合も、歩行者の通行を妨害するときには一時停止をしろ、基本的に徐行を義務づけております。いつでも、どういう状態のもとでもとまれるスピードで走ってくれという形にしておるわけであります。基本的にそういう考え方で対処してまいりたいというふうに思っております。
○水平委員 自転車の通行が認められるようになった歩道の上においては、いまおっしゃったような一時停止だとか、徐行の配慮、これはいいのです。私の言うのは、歩行者の横断帯も自転車が渡ることができるでしょう、そうした場合に、一時停止も徐行の配慮も必要でありますが、横断帯という歩行者の保護、安全を図る意味からも、自転車も同時にそれはおりて引いていくべきではないか、そういうことが法的になぜ明確に確認をされておかなかったか、こういうことなんです。
○杉原政府委員 一応、いま歩行者がおってそれの通行の妨害になるときには、おりて押して歩いてもらうということになっておりますが、徹底を欠くきらいがございますので、これは教則その他できちっと指導するようにいたしたいと思います。
「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について|e-Govパブリック・コメントパブリックコメントの「「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について」に関する意見募集の実施についての詳細です。
イ 横断歩道を進行する普通自転車が従うべき信号灯火を定めることについて
この項目に対しては、
○ 自転車に乗ったまま横断歩道を通行することはできないはずであり、また、自転車で横断歩道を通行することは大変危険。
といった御意見がありました。今回の改正は、道路交通法の一部を改正する法律(平成19年法律第90号。以下「改正法」といいます。)により、例外的に歩道を通行することができる普通自転車の範囲を明確化したことに伴い、自転車横断帯が設置されていない交差点において、これらの普通自転車が横断歩道を進行して道路を横断することが見込まれることを踏まえ、横断歩道を通行する普通自転車が従うべき信号を車両用でなく歩行者用灯器とするものです。
道路交通法においては、普通自転車が横断歩道を通行することを禁止する規定はありませんが、横断歩道は歩行者の横断のための場所であることから、交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)において、横断歩道の通行について、歩行者の通行を妨げてはならない旨を周知し、歩行者の安全確保を図ることとしています。
クルマやオートバイについても、横断歩道を使って横断することを禁止した規定はない。
よく「平成20年施行令改正で普通自転車のみが横断歩道が使えるようになった」みたいな話をする人がいるけど、余裕でデマなのよ。
少なくとも昭和53年には「横断歩道を使って横断することを禁止してない」という解釈だし、その理由は「横断歩道は歩道ではない」からなのよね。
界隈の考え方を否定して矛盾する
じゃあちゃんと調べて訂正すりゃ済むよね…とはならないのがこの界隈(ビッグ主語)でして、「横断歩道を使って横断する自転車に25条の2が適用」と訂正しない理由は、この界隈の基本原理と矛盾しちゃうからなのよね…
この界隈(ビッグ主語)って「優先側が非優先に譲るべきではない」と考えるので、正しい道路交通法解釈とこの界隈(ビッグ主語)を組み合わせると
「優先側のクルマが、非優先側の横断歩道通行自転車に譲るべきではない」
になってしまう。
だからなにがなんでも正しい解釈を受け入れないし、そのためなら平気でデマを使ってしまうし、訂正しない。
警察庁も裁判所も25条の2だというのに…
民事では36条2項(優先道路)を適用する場合もありますが、民事特有の考え方なので自転車に優先権がないことには変わりない。
横断歩道を歩道と捉え、さらにその「歩道」を「横切る」ことこそが「横断」だと思っているから25条の2を真逆に捉えてしまうし、ましてや「優先側が非優先に譲るべきではない」という考えが強い以上、横断歩道通行自転車に25条の2が適用されることを認めるわけにはいかないという謎状態に陥るわけですが、この界隈(ビッグ主語)の発想だと横断歩道=歩道と捉えている以上、普通自転車だけが横断歩道を通行できると捉えている。
間違いに間違いを重ねて辻褄が合わない事態が起きても、正しい解釈に訂正するとこの界隈の基本原則すら否定してしまうから訂正するわけにはいかなくなる。
それのどこが道路交通法に詳しい人たちなのかさっぱりわかりませんが、要は正しい解釈より独自見解優先の人たちなので相手にするだけムダなんだと捉えたほうがマシなのよね…
ちなみに、横断歩道通行車両に25条の2が適用されることは、車道を通行する車両の注意義務を減じるわけではない。
その意味では、他人の義務/注意義務と自分の義務/注意義務は別なんだという当たり前の話に落ち着きますが、この界隈(ビッグ主語)ってどんどん独自見解を発展させて「自転車はノールックで横断歩道を通行してよい」なんて言う人すら出てくる始末。
要は訂正する気がないから訂正しない人たちに、正しい解釈を説いたところで訂正するわけがないのでブロック推奨なのよ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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