痛ましい事故、ご冥福を。
10月2日15時27分、通行人が「道路上に高齢者が倒れている。事故みたいです」と消防に119番通報し、消防が警察に通報した。
現場は押しボタン式の交差点が近くにある片側一車線の県道。60歳代女性が運転する軽乗用自動車が五泉市曙町方面の道から右折で交差点を曲がり、五泉市街地方面に向かう際に県道を横断していた90歳代の女性と衝突した。
この事故により、車と衝突した90歳代の女性の女性は新潟市内の病院に搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は、急性硬膜下血腫。
警察は、軽乗用自動車を運転していた女性が右折する際に左右の確認が不十分だった可能性もあるとみて捜査を続けている。
【高齢者が倒れている】90代女性の死亡を確認、新潟県五泉市内で車と県道を横断中の歩行者が衝突五泉警察署によると、10月2日15時26分ころ、新潟県五泉市五十嵐新田地内の県道上において、60歳代女性が運転…
警察によりますと2日午後3時半ごろ、女性(60代)が軽自動車を運転し交差点で右折しようとしたころ、県道を横断していた女性(91)と衝突したということです。
女性は新潟市内の病院に搬送されましたが、救急隊員の呼びかけに応じず、意識不明の状態で搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。
軽自動車を運転していた女性にケガはないということです。事故があった十字路交差点の片側には押しボタン式の信号と横断歩道がありましたが、女性は信号と横断歩道がない反対側の道路上を横断していたということです。
【高齢者が倒れている】90代女性の死亡を確認、新潟県五泉市内で車と県道を横断中の歩行者が衝突五泉警察署によると、10月2日15時26分ころ、新潟県五泉市五十嵐新田地内の県道上において、60歳代女性が運転…
現場はこちら。
報道からすると、加害者が進行していたのは対面信号がなく一時停止規制があり、ここを右折した模様。
ちょっと違うケースを挙げます。
下記の場合に、歩行者Yは歩行者用信号に従う義務があるのでしょうか?
歩行者Yは横断歩道がない側を横断しようとしています。
これ、私も勘違いしていたけど「信号に従う義務がある」。
理由はこれ。
信号の種類 | 信号の意味 |
人の形の記号を有する青色の灯火 | 一 歩行者等は、進行することができること。 |
人の形の記号を有する赤色の灯火 | 一 歩行者等は、道路を横断してはならないこと。 |
「横断歩道において」という文言がなく、一律に横断を規制している。
そしてよく言われる「対面」の範囲にしても、平成20年施行令改正以前の「横断歩道を通行する自転車が従うべき信号」の解釈をみても、同一方向なら全部含んでいるのよね。

話を戻すと、報道の事故はこう。
加害者 | 被害者 |
信号はなく一時停止規制 | 信号による規制 |
以前取り上げたけど、歩行者は信号規制されているけど交差するクルマには信号規制がない交差点はまあまああります。


ただまあ、一時停止して交差道路の安全確認をしてから進行するのが43条の趣旨。
仮に被害者が赤信号だったとしても、一時停止して安全確認する際に横断しようとする歩行者がいればクルマが譲歩することになるわけで(まさかわざと突っ込んで事故るクルマはいないでしょ)。
そうすると報道にあるように、被害者側の信号灯火がどっちだろうとあんまり関係ないのよね。
警察は、軽乗用自動車を運転していた女性が右折する際に左右の確認が不十分だった可能性もあるとみて捜査を続けている。
歩行者の信号灯火が関係するとしたらこれ。
対面信号が「青」で直進するクルマAと、歩行者Yの関係であれば、Aは「特別な事情がない限りは」信頼の原則が働くと考えられるので(福岡地裁小倉支部 昭和45年1月16日を見る限り)、歩行者Yが横断開始した時点で回避可能性があるかないかの問題になる。
ところが歩行者Yと対面信号がなく右折するクルマBの関係であれば、右折する際には徐行義務があり、なおかつ交差道路の安全確認をしてから右折進行する義務があるため、安全確認している段階で横断歩行者がいたら安全確保しなければならない。
以前挙げた2つの判例が参考になりますかね。

ちなみに、目の前に横断歩道があっても道路交通法上は「横断歩道の付近」には当たらない可能性があり、

道路交通法ってなかなかややこしい。
とはいえ、要はこのケース、右折するにあたり交差道路の安全確認を尽くしていれば横断歩行者の発見が容易だったと捉えられるので、実際に運転するに当たっては難しい話ではないのよね。
ややこしいのは直進車両Aと横断歩行者Yのケース。
この場合なら回避可能性があるかないかの問題になりますが、事故報道のように一時停止+右折する際には安全確認義務はクルマのほうが大きい。
具体的な状況は捜査次第ですが、民事責任上も歩行者過失はかなり小さい可能性。
理屈の上では仮に被害者側の歩行者信号が赤だったとしたら38条の2は関係しないことになりますが(警察学論集1967/12)、それも結局あんまり関係ないのよね。
どのみち安全確認義務があるので。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
教えて下さい。「歩行者Yは歩行者用信号に従う義務があるのでしょうか?」で「信号に従う義務がある」というのは停止線の向こう側(交差点側)だからでしょうか?交差点からどれだけ離れていれば義務が無いことになるでしょうか?
コメントありがとうございます。
停止線は歩行者に対する効力がないので関係なく、施行令の規定が「横断歩道を横断してはならない」ではなく「横断してはならない」になっているからです。
信号の効力がどのくらいまでなのかはなかなか難しいです…