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「自転車通行可」の歩道を減らす意図がどこにあるか?

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モビリティジャーナリストという方が発信しているブログに違和感があるのですが、11月から改正道路交通法が施行され自転車の酒気帯び運転の罰則新設やながらスマホの罰則強化を皮切りに取り締まりが強化され、「歩道の自転車通行可」の標識が撤去されていることに気づいたのだと。

自転車安全対策の「次の一手」を読む : THINK MOBILITY
今月から、自転車運転中の「ながらスマホ」が道路交通法違反となり、飲酒運転については酒酔い運転に加え、酒気帯び運転が新たに罰則対象になるとともに、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること、飲酒運転をするおそれがある者に自転車を...

要はこのジャーナリストは、11月の改正道路交通法施行と「歩道の自転車通行可標識の撤去」に因果関係があると捉えたものと思われますが、警視庁管内(東京都)では歩道の自転車通行可標識の撤去は1年以上前から順次行ってきたモノ

青梅街道の「自転車通行可標識の撤去」について取り上げたのは2023年8月(1年以上前)。

青梅街道の「普通自転車歩道通行可」が撤去。
ふーん、という感想しかありませんが、区内の青梅街道の歩道に設置している標識「普通自転車歩道通行可」は、8月中旬以降に撤去する予定です。影響は特定小型原付だけですね。「普通自転車歩道通行可」の撤去と影響そもそも、当該「普通自転車歩道通行可」を...

目黒区内の「自転車通行可標識」が山手通り除き全撤去されたとアナウンスされたのが2023年12月(1年前)。

で。
自転車の場合(なお、普通自転車を意味することはいうまでもない)、「やむを得ないと認められるとき」や「13歳未満、70歳以上」については標識の有無にかかわらず歩道通行が可能になっており(63条の4第1項各号)、都内であればかなりのケースにて「やむを得ないと認められるとき」が認められる可能性がある高く、標識の撤去により自転車が歩道通行できなくなる可能性はほとんどないに等しい。

(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。

じゃあなぜ警視庁管内で「自転車通行可の標識撤去」を1年以上前から進めていたかを考えると、これによるメインターゲットは特定小型原付なんですよね。
特定小型原付の歩道通行要件は「自転車通行可の標識」+「時速6キロモード」ですが、自転車でいう63条の4第1項3号に相当する「やむを得ないと認められるとき」という例外規定がない。

なので標識撤去の実質的効果は、歩道から特定小型原付を排除することにあると考えられ、特定小型原付の施行とほぼ同時に標識撤去を推進してきたことを鑑みても、メインターゲットは特定小型原付なのかと。

 

なお「やむを得ないと認められるとき」については具体的内容は交通の方法に関する教則で示すとしてますが、かなり曖昧だと国会でも疑問視されている。

第166回国会 参議院 内閣委員会 第9号 平成19年4月17日

 

○亀井郁夫君

国民新党の亀井でございますが、道交法というのは非常に一般の人たちに密着した法律ですから、もっといろいろな点で、今日も指摘ありましたけれども、分かりやすく作っていく必要があると思いますから、いろいろ研究してほしいと思うんですけれども、今日これから何点か、私も素人でございますけれども、常識の観点からお聞きしたいと思うわけでございますが。
普通自転車については、児童や幼児については車道又は交通の状況に照らして歩道を通行することができるということになっておるんですけど、普通自転車がね、普通自転車が歩道を走ることができるということになっているんだけれども、ほとんどの人が今ごろは交通事情が厳しいからみんな歩道を走っている人が多いんですけれども、どういう場合に歩道を走ることができるか。その認定はだれがするんですか。そして、それはどういう形で表示されているんですか。どこにもそういうことは書いてないんで、その辺がどうなっているんでしょうか。

 

○政府参考人(矢代隆義君)

お答え申し上げます。
現在の道路交通法では、自転車は車道を通行することが原則と、それから都道府県の公安委員会が普通自転車歩道通行可の規制、これは標識を立てますが、した場合には車道を通っても歩道を通ってもいいということになっております。したがいまして、基本的には各都道府県公安委員会がそれを判断して歩道通行のできる場所を決めていくと、これが大原則でございます。
そこで、今回の改正ではこれに加えまして、児童、幼児等が運転する場合、あるいは車道の交通の状況に照らしまして自転車の通行の安全を確保するため当該自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合ということでございますが、このやむを得ないと認められる場合というのは、これは客観的に決まるというふうなものでございまして、道交法でやむを得ない場合というのは極めて限定的な意味でありまして、言い換えますと、どうしてもそうせざるを得ない状況のことを言っております。
したがいまして、例えば道路工事が行われておってそこを通れない、あるいは駐車車両が連続的に存在しているというような場合、あるいは狭い車道で大型車が連続してどんどん来る、通れない、進めないと、そういうような場合が想定されるわけですが、これを一つ一つずっと書き出すのはなかなか容易でないわけですけれども、交通の方法に関する教則、これは国家公安委員会が定めておりますので、その中でこのやむを得ないというのはこういうことなんだということをよく示していく考えでございます。だれが決めるかということになりますと、これは客観的にもう決まってくるものであると、こういうことでございます

 

○亀井郁夫君

どうも分かったような分からないような、客観的に決めるというんだけれども、決める人がたくさんおるわけだから困っちゃうわけですね。そうすると、道路を走るんだといっても、普通自転車を運転している人が危ないと思ったら歩道を走っていいんですね。そうすると、おかしいじゃないかと言っても、それは自分がそう思っていたからと言えばいいんであれば、そんなふうにだれでも決められるようになってはいかぬし。また、国家公安委員会が決めたというんだったら、決めたところをある程度はっきりしておけばいいと思うんだけれども、そういう点でもおかしいと思います。その辺どうなんですか。

 

○政府参考人(矢代隆義君)

このやむを得ない場合について、自転車の利用者の方が自分で判断して、言葉を換えて言えば勝手に判断していいというわけではありませんで、やはりそういう客観的に先ほど私が申し上げましたような状況でないにもかかわらず、自分はやむを得ないと思ったんだと、こういうふうに言われましても、それはやはりそこで現場では、それでは違反になるということで指導することになると思います。
それで、なぜそのようにせざるを得なかったかと言いますと、公安委員会の規制というのは標識を立てるわけですので、この道路はいいか悪いかと決めますと、これは二十四時間三百六十五日もうオール・オア・ナッシングでございまして、それで、交通の道路の変化というような状況ですとか、交通の状況にちょっと対応できない場合がやっぱりあるわけなんですね。そういうことを考慮いたしまして、そこで先ほど申し上げましたように、大原則は公安委員会が決めていきますけれども、それによることができない場合があるであろうから、それについて法定事項とさせていただくと、こういうことでございます。

「やむを得ない場合」の具体例は「交通の方法に関する教則」で示すとしている。
では教則ではどうなっているのか?

(4) 普通自転車は、次の場合に限り、歩道の車道寄りの部分(歩道に白線と自転車の標示(付表3(2)22)がある場合は、それによつて指定された部分)を通ることができます。ただし、警察官や交通巡視員が歩行者の安全を確保するため歩道を通つてはならない旨を指示したときは、その指示に従わなければなりません。
(中略)
ウ 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場所を通行する場合や、著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合など、普通自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき。

例示列挙されているのは以下の場合。

①道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場所を通行する場合
②著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合
③など

標識撤去が自転車に影響するか?ですが、警察官が指導する上で「標識がないじゃないか!」という言い訳にはできるでしょうけど、そもそも標識があったとしても警察官は「歩道通行禁止」を言い渡せる権限があるわけでして(63条の4第1項本文)、

ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。

標識撤去が自転車に対する実質的効果を生むのか?についてですが、ほとんどないに等しいでしょう。
それにもかかわらず標識撤去を推進した理由は、特定小型原付を歩道から排除する効果がメインで、自転車に対しては実質的効果ではなく形式的な指導をしやすくする程度なのかと。

 

で。
警視庁が標識撤去を推進する政策についてはやや疑問視してまして、特定小型原付なら「時速6キロモード」、自転車なら「徐行」という歩道通行時のルールを守るなら事故の危険性はほとんどない。
それらが期待できないから標識撤去にしたのか?警視庁の本音がどこにあるのかはよくわからないのです。
そりゃ表向きは「自転車は原則車道!」でしょうけど、現実的には徐行するなら歩道から排除する理由が薄いし、誰も徐行しないから標識を撤去して「原則車道!」を指導しやすくしたとも取れますが、一方では「やむを得ないと認められるとき」という曖昧な例外規定があり都内の現状からするとかなりのケースで「やむを得ないと認められる」はず。

 

結局、道路構造には権限を持たない警察的には「他に打つ手がないから」なんとなく標識撤去したんじゃないかとすら考えてしまいますが、どちらにせよ標識撤去による実質的効果は「特定小型原付を歩道から排除する」ことしかないでしょう。

 

そもそも、1年以上前から標識撤去の推進が話題になっていたように思うけど、今さら気づいたというのもジャーナリストとしては疑問。

 

そしてもっと大事なのは、標識撤去による形式的意味ではなく実質的効果はあるのか?に目を向けないと意味がないし、実質的効果が疑問だから警視庁の方針には謎が残る。

 

日本は本音と建前が別だという社会なので、SPランドにしても自由恋愛なんちゃらが発動してセーフになりますが、標識撤去はあまりにも形式的で実質的効果は薄いと思うし、標識撤去にも費用がかかることを考えると、他に打つ手がないのかと疑問視しちゃうのよね。

そもそも、法律と構造が合致しないから自由な道路設計を妨げている現状もあるわけで、現行法規のままあれこれ考えるとどこかにしわ寄せがくるのは当たり前。

そもそもなぜ、白山通りの自転車レーンがあんなことになったのか?
ちょっと前に某報道にて白山通りの普通自転車専用通行帯(以下、自転車レーン)が絶賛されたようですが、現実的にはむしろ悪評と懸念の声が多いし、歩道通行を選択する自転車も多いのが現状。ところで、当該自転車レーンに携わったという人から謎のメールまで...

ちなみにここ。

歩車分離式信号では車両の信号に従うというルールに、近い将来改められるのかもしれません

自転車安全対策の「次の一手」を読む : THINK MOBILITY
今月から、自転車運転中の「ながらスマホ」が道路交通法違反となり、飲酒運転については酒酔い運転に加え、酒気帯び運転が新たに罰則対象になるとともに、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること、飲酒運転をするおそれがある者に自転車を...

そもそもルールを勘違いしているのではなかろうか。
歩車分離式であっても、横断歩道を通行する自転車は歩行者用、車道通行自転車は三灯式信号に従うのがルールで、例外的にこれがあるときはこれに従う。

歩車分離式と「歩行者自転車専用信号」は必ずしも関係しないのでね…

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