歩道を通行して歩行者に衝突…ご冥福を。

ところで、歩道通行自転車は徐行し歩行者の通行を妨げることになる場合は一時停止する義務がありますが(63条の4第2項)、この事故の直接的な問題はここ。
女子高校生は、なぜぶつかってしまったのでしょうか。
警視庁の調べに対しては、「ぶつかる5~6メートル手前で下を向いていたらぶつかったと話しています。
女子高校生は男性が近づいていたことに気づいておらず、「寒かったから下を向いていた」ということです。
【何が】歩道で女子高校生の自転車が歩行者に衝突し85歳男性死亡 自動車と歩行者の事故…薄暮時間帯は昼間の3.3倍 東京・三鷹市|FNNプライムオンライン女子高校生が乗った自転車が85歳の高齢男性に衝突し、男性が死亡する事故が起きました。今回、一体なぜ事故が起きてしまったのか。現場を取材しました。事故は8日の日没直後、歩行者と自転車が行き交う歩道で起きました。8日午後5時ごろ、東京・三鷹市の...
前方不注視ですよね…
この状態なら仮に車道を通行していても、横断歩行者や車道歩行者(まあまあ見かけますが…)に衝突するわけで、前方注視義務違反が問題にされるべきと思うのですが、
「歩道を通行していたからだ」
にまとめがちになりますよね…
そりゃこの事故だけをみたら歩道上で事故ったのだからそうだけど、本質的には著しい前方不注視のまま漠然進行した点が問題。
この加害者は重過失致死罪(刑法211条後段)の容疑で家裁送致されることになるでしょうけど、重過失とは過失が重大なことを意味し、結果が重大なことではない。
刑法209条、210条が通常の過失により死傷の結果を発生させた場合の規定であるのに対し、同法211条後段は重大な過失により右と同じ死傷の結果を発生させた場合に前2条に比し刑を加重する規定であり、右にいう重大な過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、わずかな注意を払うことにより結果の発生を容易に回避しえたのに、これを怠つて結果を発生させた場合をいい、その要件として、発生した結果が重大であることあるいは結果の発生すべき可能性が大であつたことは必ずしも必要としないと解するのが相当である。
東京高裁 昭和57年8月10日
わずかな注意で容易に事故を回避できたと思われますが、「わずかな注意」とは前方を注視するというだけの話なのよね…
やや下りになっていて、しかも歩行者の往来が予想される歩道を下向きで前方不注視のまま漠然進行したら、事故になるのは目に見えてまして。
車道通行していても前方不注視のまま漠然進行したら横断歩行者なり衝突するわけで、前をちゃんと見てなかった点が非難されるポイントになる。
少年事件扱いだから家裁送致ですが、成人だと余裕で有罪になるような案件。
わりとあるのよね。


ちなみに下記事故の「加害者」は高校生ですが、

これも重過失致傷で家裁送致されていたはず。
民事については通常自転車が100%になりますが、ちょっとの不注意が重大な結果になるので、「ちょっとの不注意」では済まないのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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