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自転車に乗る高校生をクルマで轢き殺そうとして逮捕。

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治安悪すぎて笑えないし、仮に立腹したとしても故意にぶつけていい理由にもならないけど、不幸中の幸いで軽症で済んだのはまだ救いか。

「からかわれ腹が立ち、驚かせようと…」男子高校生と口論後、車で追いかけひき逃げか 43歳の男逮捕|日テレNEWS NNN
男子高校生と口論した後、「待っとけよ」と言って立ち去った男が車で高校生をひき逃げ。一体何が―。

ところで。
この場合、殺人未遂として逮捕されてますが、同じようにクルマで自転車に対し故意に衝突させた事件がありましたよね…

これについては道路交通法違反(妨害運転罪)、傷害、殺人未遂で懲役6年。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

激昂型の人に免許を与えちゃダメなんですが、免許取得時に見抜けないから…
ところで、今回は「運転行為による殺人未遂」と「ひき逃げ(道路交通法違反)」と考えられますが、刑事ではなく行政処分はどうなるのでしょうか?
基本的にはこうなる(擦り傷とのことなので加療15日以内と想定)。

内容 点数
運転傷害等(治療期間十五日未満又は建造物損壊) 45
救護義務違反 35
合計 80
127 「運転傷害等(治療期間十五日未満又は建造物損壊)」とは、自動車等の運転により人を負傷させ又は建造物を損壊させる行為で故意によるもののうち、121、123及び125に規定する行為以外のものをいう。

なんか最近、おかしな点数計算を披露する人がいる気がしますが、運転傷害等に過失行為の付加点数が別に加算されるわけではない。

事故時の点数計算と、行政処分の話。
読者様から質問を頂いたのですが、そもそもこの方については直接この方に質問した方がいいのではないかと思いますが…この動画で解説されている点数計算に疑問があり質問させてください。危険運転致死の場合に、危険運転致死の基礎点数に「専ら運転者の不注意...

そして「運転行為による殺人未遂(運転傷害)」と「救護義務違反」は施行令でいう「同時に」に当てはまるわけもなく、それぞれ加算される。
事故の実行行為(運転傷害)」と、「事故後の義務違反(救護義務違反)」はそもそも違うのだから当たり前ですが…
免許取消10年コースですかね。

 

ところであまり知られて話になりますが、故意による事故の場合、保険会社は免責になる可能性がある。
任意保険は加害者たる運転者の賠償責任を肩代わりして支払うようなもんですが、保険法には故意免責がありましてね。

(保険者の免責)
第十七条 保険者は、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じた損害をてん補する責任を負わない。戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。
2 責任保険契約(損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう。以下同じ。)に関する前項の規定の適用については、同項中「故意又は重大な過失」とあるのは、「故意」とする。

運転行為による殺人の場合、加害者には弁済する義務が生じますが、保険会社は故意免責(保険法17条2項)を理由に免責になる。
ただし自賠責保険については被害者請求できるので、今回のような軽症事案はまだ救いか。

 

ちなみに故意免責については以下の判例がある。
事案の概要はこう。

 1 Dは、Eと同棲していた某女をめぐってEと対立していたところ、昭和五四年一〇月一〇日、甲府市内の道路上において、同人から逃れるため、同女を普通乗用自動車に乗せて発進しようとしていたが、同人は、運転席側のロックされたドアのノブをつかんで開けようとしたり、ドアを蹴るなどしながら、同車の発進を阻止しようとした。このため、Dは、同車を徐々に発進走行させたが、Eがなおもノブをつかみ、ウインドガラスをたたきながら「降りてこい。」などと言って横歩きで並進してついてきたので、同人を振り切って逃げるため、同人を路上に転倒させ負傷させることのあることを認識しながらあえてこれを認容し、同車を時速一五キロメートルから二〇キロメートル程度に急加速したところ、同人は路上に転倒して、頭蓋冠線状骨折等の傷害を負い、三日後に死亡した。
2 Dは、本件加害車両につき、自己を記名被保険者として、被上告人との間で、自家用自動車保険契約を締結していたところ、右保険契約に適用される自家用自動車保険普通保険約款第一章賠償責任条項には、被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で判決が確定したときは、損害賠償請求権者は、保険会社が被保険者に対しててん補責任を負う限度において、直接保険会社に対して所定の損害賠償額の支払を請求できる旨の条項(六条。以下「本件被害者請求条項」という。)及び保険会社は、保険契約者、記名被保険者又はこれらの者の法定代理人の故意によって生じた損害をてん補しない旨の条項(七条一項一号。以下「本件免責条項」という。)がある。
3 亡Eの相続人である上告人らは、Dを被告として本件交通事故による損害賠償を求める訴えを提起したところ、東京高等裁判所は、昭和五七年一〇月二七日、上告人らそれぞれにつき各二七二万四六一三円及びこれに対する昭和五五年五月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を命ずる判決を言い渡し、右判決は確定した。
二 原審は、右事実関係の下において、本件被害者請求条項に基づき、被上告人に対し、右確定判決によって認容された損害賠償額と同額の金員の支払を求める上告人らの請求に関し、(一) 本件免責条項にいう「故意」にはいわゆる未必の故意も含まれ、かつ、(二) 本件免責条項は、傷害の故意により被害者を死亡させた場合にも適用されると判断して、上告人らの請求を認容した一審判決を取り消し、上告人らの請求を棄却した。

要は傷害致死の事案で、刑事事件は傷害致死で確定。
既に被害者遺族は加害者本人に対する賠償額を決定する判決を得ており、その確定判決に基づき加害者の保険会社に支払いを求めたところ、東京高裁は故意免責の事案と判断し保険会社には支払いする義務がないとした。

 

しかし最高裁は否定。

 三 しかしながら、原審の右(二)の判断は肯認することができない。その理由は次のとおりである。
 傷害の故意に基づく行為により予期しなかった死の結果を生じた場合には、加害者は、右行為と被害者の死亡との間に相当因果関係が認められる限り、その死亡に伴う全損害につき損害賠償責任を負担することになるが、このことから直ちに、傷害の故意に基づく行為により予期しなかった死の結果を生じた場合に、本件免責条項により免責の効果が発生するものと解するのは相当でない。けだし、ここで問題となるのは、加害者の負担すべき損害賠償責任の範囲ではなく、本件免責条項によって保険者が例外的に保険金の支払を免れる範囲がどのようなものとして合意されているのかという保険契約当事者の意思解釈の問題であるからである。そして、本件免責条項にいう「故意によって生じた損害」の解釈に当たっては、右条項が保険者の免責という例外的な場合を定めたものであることを考慮に入れつつ、予期しなかった死亡損害の賠償責任の負担という結果についても保険契約者、記名被保険者等(原因行為者)の「故意」を理由とする免責を及ぼすのが一般保険契約当事者の通常の意思であるといえるか、また、そのように解するのでなければ、本件免責条項が設けられた趣旨を没却することになるかという見地から、当事者の合理的意思を定めるべきものである。
以上の見地に立って考えると、傷害と死亡とでは、通常、その被害の重大性において質的な違いがあり、損害賠償責任の範囲に大きな差異があるから、傷害の故意しかなかったのに予期しなかった死の結果を生じた場合についてまで保険契約者、記名被保険者等が自ら招致した保険事故として免責の効果が及ぶことはない、とするのが一般保険契約当事者の通常の意思に沿うものというべきである。また、このように解しても、一般に損害保険契約において本件免責条項のような免責約款が定められる趣旨、すなわち、故意によって保険事故を招致した場合に被保険者に保険金請求権を認めるのは保険契約当事者間の信義則あるいは公序良俗に反するものである、という趣旨を没却することになるとはいえない。これを要するに、本件免責条項は、傷害の故意に基づく行為により被害者を死亡させたことによる損害賠償責任を被保険者が負担した場合については適用されないものと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷 平成5年3月30日

結構ややこしいのよね。
故意免責の問題も(いずれ取り上げようと思うけど、マニアックすぎる)。

 

不幸中の幸いで軽症で済んだのはまだ救いとも言えますが、刑事責任と行政処分は重くなるのかと。
なお、刑事責任がどうであれ、行政処分とは基本的には連動しません。
なぜなら両者は目的が別で、刑事責任は事件に対する責任。
行政処分は要許可行為にあたる免許を取り上げることで、将来の事故を未然に防止するのよね。
道路で運転させる権利を取り上げることで、道路から危険因子を排除することが目的ですから。

 

アンガーマネジメントという言葉もありますが、アンガーをマネジメントできない危険因子は道路からご退場いただくのが免許取消処分の目的なのよ。

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