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逆走は危険運転致死になるか?

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凄まじい逆走ですが、

その結果がこれなんですかね…

【なにがあった?】乗用車2台が正面衝突し運転手1人死亡…一方の運転手は逆走のうえ酒気帯びか(浜松市)(Daiichi-TV(静岡第一テレビ)) - Yahoo!ニュース
17日朝、国道1号浜名バイパスで、逆走した車が別の車と正面衝突する事故があり、23歳の男性が死亡しました。逆走した車の運転手からはアルコールが検出されました。大勢の救急隊員が取り囲む2台の車。こ

被害者のご冥福を。

 

ところでこの件は過失運転致死と道路交通法違反(酒気帯び運転)で逮捕したようですが、これだけの行為が危険運転致死になるか?という問題が生じる。
危険運転致死になるかについては、容疑者が逆走していることを認識していたかどうかがポイント。

 

危険運転致死には「通行妨害目的」という類型がありますが、以下の判例がある。

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

◯広島高裁 平成20年5月27日

この事件はパトカーの追跡から逃れる目的で時速70~90キロで逆走し、対向順走車と衝突したもの。
あくまでも逃走目的で高速度で逆走したのであって、妨害目的ではないから危険運転は成立しないと主張。

 

しかし裁判所は通行妨害目的を認定。

以上認定したとおり,被告人は,被告人車を運転して,信号待ちのため交差点手前で停止中,警察官に職務質問されそうになったことから,酒気帯び運転の発覚を免れようとして被告人車を発進させ,逃走を開始したところ,警察車両が追跡してきたため,Eバイパスを逆行すれば,警察車両もそれ以上の追跡を諦めるであろうと考えて,その逆行を始めたものである。そして,その後の被告人車の走行状況にかんがみると,被告人は,何台もの対向車両とすれ違ったり,対向車両と衝突する危険を生じさせたことから,そのままEバイパス上り線を逆行し続ければ,さらに対向車両と衝突する危険が生じることを十分に認識しながら,警察車両の追跡から逃れるためには,その危険を生じさせてもやむを得ないと考え,敢えて逆行を継続したものと認められる。なお,実際に被告人車が対向車両と衝突してしまえば,それ以上逃走することができなくなるところ,被告人は,上述のとおり,本件事故に至るまでの間は,対向車両と衝突する危険が生じた際,いずれも対向車両に急ハンドルや急ブレーキ等の措置を取らせるなどして,被告人車との衝突を回避させたことから,被告人車がさらにEバイパス上り線の逆行を続け,対向車両に同様の措置を取らせて衝突を避けさせることにより,逃走できることを期待して,逆行を続けたものであることが認められる。
そうすると,被告人は,警察車両の追跡から逃れるため,逆行を継続することにより 対向車両が被告人車と衝突する危険を生じさせるとともに, 逃走を続けるために,対向車両に対し被告人車との衝突を避けるための措置を取らせることをも意図しながら,逆行を継続したものということができる。
所論は,危険運転致傷罪が成立するためには,相手の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することが必要であって,その未必的な認識では足りないとの解釈が立案担当者からも示されている(「刑法の一部を改正する法律の解説」法曹時報第54巻第4号71頁)と指摘した上,被告人の意思は,一貫して,警察車両から逃れることにあったのであり,被告人は,対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図していないから,被告人に人または車の通行を妨害する目的はなく,同罪は成立しない旨主張する。
たしかに,被告人は,警察車両から逃れることを意図して,Eバイパスを逆行したものである。
しかし,自動車専用道路であるバイパスを逆行すれば,直ちに対向車両の自由かつ安全な通行を妨げる結果を招くことは明らかであり,バイパスを逆行することと対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることとは,表裏一体の関係にあるというべきである。また,上記認定事実に照らせば,被告人が,警察車両の追跡から逃れるため,バイパスを逆行することを積極的に意図していたことは明らかである。そして,バイパスを逆行することを積極的に意図していた以上,被告人は,これと表裏一体の関係にある対向車両の自由かつ安全な通行を妨げることをも積極的に意図していたと認めるのが相当である。

広島高裁 平成20年5月27日

バイパスを逆走すれば他の正常な交通に対する通行妨害になるのは確実だから、バイパスの逆走は通行妨害目的が成立するとしている。

 

似たような趣旨としては下記判例もある。

◯東京高裁 平成25年2月22日

こちらは片側一車線の道路にて逃走目的で逆走。

これらの事実に照らすと,被告人が,車体の半分を反対車線に進出させた状態で走行し,C車両を追い抜こうとしたのは,パトカーの追跡をかわすことが主たる目的であったが,その際,被告人は,反対車線を走行してきている車両が間近に接近していることを認識していたのであるから,上記の状態で走行を続ければ,対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり,対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認めることができる。
ところで,刑法208条の2第2項前段にいう「人又は車の通行を妨害する目的」とは,人や車に衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど,人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することをいうものと解される。しかし,運転の主たる目的が上記のような通行の妨害になくとも,本件のように,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない。そうすると,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識していた場合も,同条項にいう「人又は車の通行を妨害する目的」が肯定されるものと解するのが相当である。
3 以上からすると,被告人には,対向車両の通行を妨害する目的があったということができるから,その目的を肯定して,被告人に刑法208条の2第2項前段の危険運転致死罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはない。

 

東京高裁 平成25年2月22日

ところがこの容疑者が逆走していることを認識してないまま逆走していたなら、話が変わる。
そこらへんの経緯を調べるために逮捕しているわけで、逮捕容疑と起訴容疑が一致するとは限らない。

 

危険運転致死の「通行禁止道路態様」については、施行令にこれがあるため、該当しないのではないかと。

三 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)の部分であって、道路交通法第十七条第四項の規定により通行しなければならないとされているもの以外のもの

※17条4項は「左側通行義務」(右側通行禁止)

 

逆走だと認識して逆走したなら、バイパスを逆走すれば通行妨害になることは確実なので通行妨害目的があると認定されるでしょうけど、被害者からすれば予期せぬ逆走車を発見した直後には命を失うわけで…
警察が「逆走した経緯を調べる」としているのも、これらを意識した捜査だろうと考えられます。

 

なお通行妨害目的の解釈としては、通行妨害になる未必的な認識があれば足りるとした事例があり、大分の件もそれを意識して通行妨害目的も公訴事実に含めたと思われる。

人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図して行う危険接近行為が極めて危険かつ悪質な運転行為であることはいうまでもないが,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行うのもまた,同様に極めて危険かつ悪質な運転行為といって妨げないと考えられることは,前記のとおりである。
ウ 以上の次第で,本件罪の通行妨害目的には,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する場合のほか,危険回避のためやむを得ないような状況等もないのに,人又は車の自由かつ安全な通行を妨げる可能性があることを認識しながら,あえて危険接近行為を行う場合も含むと解するのが相当である。

 

大阪高裁  平成28年12月13日

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