ちょっと前にこんなの取り上げましたが、
道路外に向けて右折進行した車と、対向直進車の事故。
この場合、25条の2第1項により、右折車に大きな注意義務があります。
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
自転車が歩道からノールック車道アタックしてくる場合も考え方は同様なんですが、自転車の場合は過失割合の相場が明確とも言えません。
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自転車がノールック車道アタック
今まで挙げた判例だとこんな感じ。
○東京地裁 平成20年6月5日(自転車 対 自転車)
50:50です。
○大阪地裁 平成30年11月6日(自転車 対 オートバイ)
自転車:オートバイ=35:65です。
なお、怪我をしたのは車道を正常に通行していたオートバイの方。
正直なところ、自転車同士(片方がノールック車道アタック)でも10:90くらいにしている判例もあれば、そうではない判例もあるのでケースバイケースとしか言えません。
25条の2第1項があるので、道路外から出入りして右左折進行する自転車に大きな注意義務があるわけですが、得意の「優者危険負担の原則」や、「車道通行ロードバイクは時速30キロ以上なら原付扱い」みたいな感じになるため、ノールック車道アタックしてきた自転車のほうが過失が小さい場合すらあり得るのですよ。
ワンルックして頂くだけでみんなハッピーなのに、ノールック車道アタックをキメキメする輩がいるので。
ノールックパスが絶賛されるのは、バスケやサッカーだけなんですよ。
公道では禁止プレイ。
ちなみに上の判例は2つとも、怪我をしたのは「車道を正常に通行していた方」です。
車道を通行していたのがクルマなら、怪我をするのはノールック車道アタックした自転車になりますが、2輪車が巻き添えになると被害者がどっちになるかはわかりません。
ちなみに警察庁が発表している事故統計では第一当事者、第二当事者という区分があり、第一当事者のほうが過失が重いと定義されていますが、何ら明確な基準はなく、「怪我をしたほうが第二」と言い切る警察すらいるので、ノールック車道アタック自転車とクルマが衝突した場合、第一当事者はクルマになります。
どう考えても道路交通法上で悪いのは「ノールック車道アタック」をキメる自転車ですが、民事の過失はクルマのほうが大きいこともあれば、第一第二当事者分類でも逆転することになる。
民事責任
民事責任は違法行為責任ではなく不法行為責任なのと、優者危険負担の原則が働くので「どっちが悪い」という尺度とは一致しませんが、
国によっては、純粋に道路交通法の義務のみで過失割合が決まるらしい。
とは言ってもシステムとしてどっちが優れているかは別問題でして、他のシステム(医療費など)がどれだけ充実しているか次第で被害者への補償が違うわけ。
道路交通法の義務のみで過失割合が決まるなら、信号無視して事故った歩行者は全過失を負うとか、直前横断して事故った歩行者は全過失を負うとかになるけど、民事責任は被害者保護の側面があるのでいわゆる「いい・悪い」と一致するわけでもない。
とりあえず言えるのは、ノールック車道アタックはやめてね。
ワンルックすれば全て解決するものを、なんで他人を巻き添えにするのやら。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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