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一時停止後、微発進と停止を繰り返し確認する義務。

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店舗から道路に進出した際に歩行者をはねたのかと思われますが、

事故現場はこちら。

ストリートビュー · Google マップ
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これって見方によっては、店舗の出入口は「歩道も路側帯もない」ように見えるじゃないですか。

そうなったときに、歩道や路側帯を横切る際の一時停止義務(17条2項)の適用がないのではないか?という疑問が生じる。

 

さて、どのように考えるのが正解なのでしょうか?

 

実はこれ、わりとシンプルな話でして、店舗の出入口に「とまれ」の任意表示がある上に、左右に壁があることから見通しが悪い。
路外から道路に進出する際には25条の2第1項により歩行者の正常な交通を妨害する際には合流が禁止されている趣旨からすると、

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

まず「とまれ」の表示で一時停止すべき注意義務があり、

歩行者や他の車両の正常な交通を妨害するおそれがあるときは右左折禁止なので、

左右の見通しが悪い以上、一時停止後に微発進と停止を繰り返しながら死角を消除して右左折する注意義務があることになる。
つまり、ここが歩道なのか路側帯なのかは何の関係もないのよね。

以前も書いたように道路交通法の義務と注意義務は別問題になりますが、

義務と注意義務の違いと、一時停止する必要があるか?
こちらで挙げた内容に質問を頂いたのですが、○「横断歩道又はその手前の直前で停止している車両等」とは進路前方に設けられた横断歩道上か自車から見てその手前で停止している車両等のことです。したがって停止車両等が自車線(複数の車線がある道路において...

店舗出入口にある「とまれ」は公安委員会の規制ではないので、停止しなくても道路交通法違反にはならない。
しかしとまれとある以上は一時停止すべき注意義務があるのは当然で、かつ25条の2の趣旨からすれば死角が消除されない限りは「右左折禁止」。
なので25条の2により、一時停止後に微発進と停止を繰り返しながら死角を消除して右左折する注意義務があることになる。

 

25条の2第1項の趣旨から、一時停止後に微発進と停止を繰り返しながら死角消除する注意義務を認定した判例はいくつかありまして、例えばこれ。

路外に出るために右折しようとした判例ですが、この位置で一時停止後に微発進と停止を繰り返しながら死角消除する注意義務違反を認定した判例があります。

大型貨物自動車の左側には2輪車等の通行可能な余地があって、この通行余地の見通しが困難であったから、一時停止及び微発進を繰り返すなどして通行余地を直進してくる車両の有無及びその安全を確認して右折進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、(中略)漠然時速約10キロで右折進行した過失

 

高松地裁 令和3年2月22日

広島高裁判決も同じ趣旨で、歩道を横切る際に左右の見通しが悪いなら一時停止のみならず小刻みに停止・発進を繰り返すなどして死角消除して進行する義務があるとする。

本件ガソリンスタンド敷地内からその北方に接する本件歩道を通過して本件車道へ向け進出するに当たり,本件ガソリンスタンドの出入口左方には壁や看板等が設置されていて左方の見通しが悪く,本件歩道を進行する自転車等の有無及びその安全を確認するのが困難であったから,本件歩道手前で一時停止した上,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約4.2kmで進行した過失により,折から本件歩道を左から右へ向け進行して来たA(当時41歳)運転のA自転車に気付かず,A自転車右側に自車右前部を衝突させてAを路上に転倒させ,よって,Aに入院加療150日間を要する脊髄損傷等の傷害を負わせたものである。

 

広島高裁 令和3年9月16日

 

歩道を通行する自転車と、路外に出るために左折するクルマ。
このような事故は悲しいところですが、県道を走っていた車がこちらの駐車場に入ろうと左折したところ走ってきた自転車と衝突したということです要は歩道通行自転車と、路外に出るために左折したクルマが歩道上で衝突した事故になります。一時停止歩道を横切る...

冒頭の件に戻りますが、要は左右の見通しが悪いなら25条の2第1項に基づいて、一時停止して微発進と停止を繰り返し安全確認してから右左折することになるため、

ここが歩道なのか路側帯なのかは関係ないのよね。
なお、民事の場合は「歩道の延長」と捉えることになるかと。
以前から書いてますが、民事は道路交通法の解釈を厳格にしているわけではなくて、ある程度「実態」に基づいて判断する。
普通に考えると歩道の一部だとみなすことになりますが、「違反割合」ではなく「過失割合」だから当然かと。
過失とは不注意のことですから…

 

ちなみに17条2項は25条の2第1項の特別規定とも言われてまして、25条の2第1項は条文上は一時停止義務を課してないけど、歩行者保護を強化するために17条2項では強制一時停止義務にしていると解釈されている。
一方、25条の2第1項は「正常な交通を妨害するおそれがあるときは合流や横断禁止」なわけで、正常な交通を妨害するおそれがないか確認させることを目的としている。
死角が強ければ、正常な交通を妨害するおそれがないか確認するために一時停止することになるのは当たり前なので、

ここが歩道なのか?は何の関係もないのよね。
25条の2第1項の趣旨から、一時停止後に微発進と停止を繰り返しながら死角消除する注意義務を認定した判例はいくつかありますが、それを怠れば事故になる。

 

ここが歩道なのか?というどうでもいいことにこだわると、大事なことを見逃す原因にすらなりますが、道路交通法の解釈に固執すると本来要求される注意義務がスポイルされてしまうのよね。

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