横断歩行者と車両が衝突した事故について、車両無過失を認定した新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日判決を取り上げてますが、
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この判例は何度も取り上げてますが、被告車両は法定速度以上だけど70キロよりは下という認定です。
「法定速度内で走行していた」なんて認定にはなってませんが、判決文読まずに解説しているとしか思えないのよね。

詳しくはこちら。

そもそも「賠償金をもっとよこせと欲張った」という恐ろしいタイトルにしてますが、これ、「欲張った」じゃないのよ。
要は示談が成立する前に、治療費等最低限の部分を保険会社が先払いしただけのこと。
保険会社は通常、治療費(病院代)、必要経費、慰謝料、物損に対する弁済費用などを示談交渉の結果として支払いますが、治療が継続中なら最終的な支払い額が確定しないため、通常は「症状固定」になってから示談がまとまる。
しかし被害者が重篤な負傷をした以上、治療費等がかなりかかるわけで、示談交渉がまとまる前に治療費等は先払いするのは普通。
それが保険会社が先に支払った約1434万。
治療が一段落して症状固定になり示談交渉になるわけですが、先払い分には通常「慰謝料」が含まれないし、残金の支払いのために示談交渉に移るのは当たり前の話でしかないのに、運転レベル向上委員会の人はあろうことか「もっと払えと欲張った」と表現。
欲張ったわけじゃなく、残金の精算を求めるのは当たり前…
これでよく訴えられないなとびっくりしますが…民事がどのように動くか理解していたら「欲張った」なんて感想にはなり得ない。
示談交渉でまとまらなかった事案は全て「欲張った」と考える人なのだろうか。
ところでこの判例は自賠3条但し書きを認定しクルマの無過失を認めてますが、治療費等の先払いをしていることをみても、保険会社は示談交渉で無過失を主張していなかったものと考えられる。
提訴されてから無過失の立証(自賠法3条但し書き)にすることにしたのだと思われますが(反訴請求)、自賠法では加害者側が無過失の立証をしない限り、人身損害の賠償責任があるとしているため、無過失を主張するならクルマ側が無過失の立証をすることになる。
そして対歩行者の場合、裁判所は自賠3条但し書きを適用したがらないのもよく知られた事実なので、無過失を確証していたとも考えにくい。
さて歩行者は小走りで横断したと考えられますが、具体的な速度が明らかではないため、
①時速18キロ(成人の通常走行速度)
②10.8キロ(ゆっくりジョギング)
③4.3キロ(歩行速度)
の3パターンについて検討しています。
加害車両の速度は法定速度を越えた60~70キロと認定されてますが、時速60キロの場合の回避可能性、時速70キロの場合の回避可能性を検討(つまり歩行者速度3パターン×車両の速度2パターンで検討)。
要はこの事故、中央分離帯上で横断待ちしていた被害者を「視認不可能」と判断されたことが大きなポイントになってまして、
中央分離帯上には被害者の背丈と同程度の樹木が等間隔にあり、そこに人がいても人と認識することが困難なことや、ガソリンスタンドの逆光がさらに視認可能性をなくしている。
「横断待ちしていた被害者」を視認不可能と判断された以上、あとは視認可能な地点での回避可能性が問題になった事案ですが、
この人が判例を扱うと内容がすり替えられてしまう…
ちゃんと調べないなら語らないほうがいい。
これは「法定速度内だった」のではなく、「速度超過があったけど、法定速度内でも回避できないと判断された事案」。
しかも車の直前5.8mで飛び出したと解説しているけど
運転レベル向上委員会
どのタイミングで横断開始したかは明らかではなく、だから歩行者の歩行速度を3パターンに分類して回避可能性を検討している。
なお「約5.8m」というのは衝突した位置の話であって、全然違う内容にすり替えられてますが…
被告の指示説明により、衝突位置は、中央分離帯から左に約5.8mの第一車線上であり(現場見取図のX、0.6+3.5+(3.5-1.8))、
新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日
※第一車線とあるのは、片側二車線+流出車線の計三車線の真ん中を意味する。
衝突した位置の話を、被害者が直前横断した際の距離にすり替えるのはさすがにいかがなものかと思いますが、要はこれいつ横断開始したかは定かじゃないけど、気がついたらクルマの前に歩行者がいた事案なのね。
被告は、原告は、突然、被告車両の真正面に現れ、ボンネットに乗り上げたと供述しており、発見したのは衝突の直前であることを述べる。一方、原告は、本件事故直前の状況については覚えていない旨を述べている。
そのため、事故直前の原告の正確な挙動は明らかではない新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日
そういう事情から、原告が横断開始した時点での両者の距離は不明。
だから衝突位置(中央分離帯から5.8m)について、歩行者の歩行速度を3パターンにし、歩行者が横断開始した時点(中央分離帯から車道に降りた時点)を3パターンに推測してそれぞれの回避可能性を検討している。
全然違う内容にすり替えたのは、この人が判決文を読まないまま解説している証なのよね。
読んでいたなら間違いようがない。
そもそも「クルマの直前5.8mで飛び出した」なら、クルマは5.8mの距離を時速60キロだと0.35秒で走りぬけてしまうのであって、クルマの正面に歩行者が回りこんで衝突するのは不可能。
ちょっと考えればわかるものすら疑問に思わないのもどうなんですかね。
中央分離帯上にいた被害者を視認不可能とし、再現実験から視認可能な位置を特定。
そして衝突位置が中央分離帯から約5.8mなので、通常の歩行速度4.3キロだったとしたら歩行者が横断開始した時点での車両の位置は…みたいに様々なパターンを検討し、法定速度内でも回避可能性がないと判断したのよね。
だから無過失の立証(自賠3条但し書き)を認めた。
そして被害者が症状固定になり、先払い分以上の精算を求めるのは当たり前な話ですが(どの事故でも同じこと)、それを「欲張った」と表現するあたりをみても、この人は民事がどのように動くのかわかってないのではなかろうか?
なお詳しく判決文を見たい人は、自力で探しましょう。
新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日判決です。
この人が語ると、判決文とは異なる内容にすり替えられてしまう…
事実の誤りや法令解釈の誤りが頻繁に見られますが、ちゃんと調べない上に訂正もされないからややこしい。
なお、以前も取り上げてますがこの判例は「横断待ちしていた中央分離帯上の被害者を視認できない」と判断された点が大きなポイントなのですが、特殊事例です。


2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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