この人は判決文をきちんと読んだ上で解説しているように見えないのですが、
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事故の態様が全く違います…
東京地裁 平成20年6月5日
この判例は度々取り上げてますが、

こうではなくて、
こうです。
この人の解説だと、車道通行していたロードバイクも信号無視したのかのようにすら見えますが、
交差点が長く、自転車横断帯~自転車横断帯が37.6mもある。
なのでロードバイク(原告)が交差点に進入した際に青信号だったとしても、交差点出口を通過する際には赤信号(交差する横断歩道等が青信号)になることすらありうる。
「原告も横断しようとしていた?」なんてわけがないでしょうに…
判決文を読んでいたらこのような解説にはなりませんが、読まないままインターネット上の情報から憶測しまくっただけなんですかね?
東京地裁 平成20年6月5日判決 賠償額9,266万円
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前から車道を斜め横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突、男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失)が残った。
自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等への加入義務化 警視庁
この判例はいろんなところで紹介されてますが、「対向車線を」といろんなところで紹介されているように、こうであって、
こうではない。
なお、車道通行のロードバイクは一般的な自転車(17キロ程度)よりは速かった可能性があるものの、時速30キロ以上出していた証拠はないとしています。
この判例については散々解説してきましたが、こうやってガセネタを流す人がいるので改めて争点を確認しますが、
6叉路交差点なので、自転車横断帯と自転車横断帯の距離(概ね交差点の長さ)は37.6mあります。
原告自転車(青)が事故現場に近い横断歩道等(原告からすると交差点出口)を通過したときの、車道の灯火は黄色ないし赤だったと推測されますが定かではありません(交差点進入時に赤灯火だった証拠はない)。
ではまず被告(歩道通行自転車)の主張。
<被告の主張>
道路交通法36条4項の規定の趣旨は、交差点又はその直近で道路を横断する自転車にも適用されると解すべきである。
また、原告らは、歩道上に設置された配電ボックスによって見通しが妨げられ、障害物の陰から被告運転の自転車が突然飛び出してきた旨主張するが、車道を走行している者からみれば、被告運転の自転車が横断を開始した地点から車道に進入する者の存在は十分視認することができたはずである。道路交通法36条4項によれば、障害物により歩道の状況の視認が難しいのであれば、むしろ、原告は、歩道から車道に進入する者の有無、動静により注意しなければならず、特に、車道信号A1の表示が赤信号、歩行者用信号Bの表示が青信号である状況の下では、歩行者等が青信号を信頼して横断を開始することが容易に推測できたのであるから、なおさらである。被告運転の自転車が横断を開始した地点は、車道と歩道の進出入のため縁石が低くなっており、しかも、その周辺は人通りの多い場所であり、歩道沿いには駐車場もあることからすると、同地点から二輪車等の車両又は歩行者が車道に進入してくることは、予測不可能ではない。
東京地裁 平成20年6月5日
原告が交差点に進入した際には信号無視がなかったにしても、交差点出口の横断歩道等を通過する際には「横断歩道等が青信号」になっていたと考えられる。
そうすると横断歩行者や横断自転車が予見可能になるのだから、自転車横断帯から少し外れた位置から横断する被告を予見可能だったと主張。
ましてや、歩道の切り下げがあるのだから切り下げ部分から車両が進出してくることが予見可能だったとしている。
原告としては、ワケわからん位置からノールック斜め逆走横断する自転車を予見する注意義務はないと主張している。
そりゃそうですよね。
しかも配電盤により死角になっていた被告(歩道通行自転車)なんだし、見えない位置&意味不明な位置からノールック斜め逆走横断する自転車を予見することは不可能と主張するのは当然。
まあ、これらの折り合いがつかなかったから示談交渉が決裂し提訴に至ったわけで。
では被告(歩道通行自転車)の過失について裁判所の判断。
自転車は、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、当該自転車横断帯を利用しなければならないところ(道路交通法63条の7第1項)、被告は、進路前方に自転車横断帯があったにもかかわらず、これを利用することなく、本件道路を横断しようとしたのであって、被告が当該自転車横断帯を利用しなかったことを正当化することができるような合理的な理由は特に認められない。その上で、被告が本件道路を横断しようとした地点と直近の自転車横断帯又は本件横断歩道との距離に照らし、被告運転の自転車が自転車横断帯又は横断歩道上を通行していたのと同視し得るとまで評価することはできない。
そして、被告は、自転車横断帯を利用することなく本件道路を横断しようとするのならば、自車を歩道から車道に進入させるのに先立ち、少なくとも右方から走行してくる車両の有無、動静を十分に注視、確認した上で、車道に進入させるべきであったところ、対面する歩行者用信号の表示は赤信号であり、歩行者用信号Bの表示が青信号だったことから、右方から車両が走行してくることはないものと軽信して、上記のような注視、確認をすることなく、自車を車道に進入させて本件道路を横断しようとしたことから、原告運転の自転車と衝突するに至った。(中略)
以上によれば、被告は、車道に自車を進入させるに際し、上記の注視、確認義務を怠ったものといわざるを得ない。
東京地裁 平成20年6月5日
これはその通り。
では原告の過失をどう捉えるか?
道路交通法36条4項は、「車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」と規定し、また同法38条1項は、「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。」と規定している。
自転車は、車両であるから、「道路を横断する歩行者」と同視することはできず、また、被告は、本件横断歩道から約9.35m離れた地点から車道を横断しようとしたのであるから、「横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者等」と同視することもできないのは、原告らが主張する通りである。
しかしながら、被告が横断しようとした地点は、本件横断歩道からさほど離れていたわけではなく、また、歩道との段差がなく、歩道からの車両の進入が予定されていた箇所であったことに加え、原告運転の自転車が本件横断歩道を通過する際、車道信号A1の表示は赤信号であり、歩行者信号Bの表示は青信号であったのであるから、本件横断歩道上のみならず、被告運転の自転車が車道に進入してきた地点からも、本件道路を横断すべく車道に進入してくる歩行者や自転車があることは想定される状況にあったというべきである。そして被告にとってと同様に、原告にとっても、配電ボックス等の存在により、必ずしも見通しがよくなく、上記の箇所から車道への進入者等の存在は十分確認できない状況にあった。
したがって、原告は、自転車を運転して本件横断歩道を通過させるに際し、被告運転の自転車が車道に進入してきた地点から横断しようとする者がいることを予想して、減速して走行するなど、衝突することを回避する措置を講ずるべきだった義務があったところ、原告がこのような回避措置を講じたことは認められないから、本件事故の発生については原告にも一定の落ち度を認めるのが相当である。
東京地裁 平成20年6月5日
要は原告が交差点に進入した時点では信号無視がなかったにしても、
交差点出口の横断歩道等を通過する際には、横断歩道等が「青信号」だったと推認される。
そうすると「青信号で横断する自転車は予見可能」になり、「多少外れた位置から横断する自転車もいるから予見可能」になり、「歩道の切り下げがあるのだから車両の進出が予見可能」だとする。
その結果50:50としてますが、以前何回も取り上げたように50:50はやり過ぎなのよ。
30:70とかならまだわからんでもないけど、裁判内容としては「ハズレの回」なのよね…
予見可能だったと判断したにしても公平さを欠いた判決と見るほうが適切ですが、
全然違う内容にしてガセネタを流すのはどうなんですかね。
本当に判決文を読んで解説したのかすら疑わしい。
ちなみに原告自転車が「交差点出口の横断歩道等の直前で停止する義務があったか?(対面赤信号により停止義務があったか?)」も争点になってますが、そこは裁判所が否定。
なぜこの人は、調べないまま解説するのだろうか?
凄く不思議なんですが、これもそう。

一審判決を見ないまま控訴審判決から推測を重ねて解説してますが、全然違う内容にすり替えられている。
なぜこの人はろくに調べないまま憶測しまくって解説するのか知りませんが(一審判決は裁判所ホームページにあり、控訴審判決文には一審の事件番号が記されている)、

過去には自転車事故について、散乱した前照灯を「イヤホン」呼ばわりしてましたが、この人が推測で語るとこういう間違いばかり起きるのであって、調べる気がないなら語らないほうがいいのではないでしょうか。
一般的に自転車に乗るときにイヤホンを使っているのは「悪」と認識されてますが、ライトをイヤホン呼ばわりして被害者のイメージを悪くするとか「やってはいけないこと」なのよ。
この人のテキトーな解説が、真実とは無関係のデマを創作してしまう。
きちんと調べる気がないなら、語らないほうがマシ。
なお、「双方爆走」と解説してますが、歩道通行の自転車は15-20キロ程度、車道通行のロードバイクは一般的な自転車(17キロ程度)よりは速かった可能性があるものの、時速30キロ以上出していた証拠はないとしている。
それを「爆走」と評価するのか、そもそも判決文を読んでないから憶測しまくっているのか…
判決文には認定された双方の速度が書いてあるのに、おかしな解説するから視聴者もおかしな妄想をしだすわけで、取り上げるなら何が事実認定されたのかくらいちゃんと説明しなよ…
判決文を読んでないから判決年月日や事件番号を紹介してないのだろうけど、全然違う事故態様にすり替えてガセネタを流すのはどうなんですかね。
そしてこうやってガセネタを流す人がいるので、判決年月日を記し第三者が「本当なのか?」を検証できるようにしておくのが通常ですが、判決年月日を隠されると検証困難になる。
そこまで狙っていたのかはしらないけど、この人の「ちゃんと調べないスタンス」を如実に表した動画なのよね。
とりあえずきちんと知りたい方は判決文を探して読みましょう。
こうやってガセネタ流す人がいることを理解してインターネットと向き合わないと、何が本当なのかわからないままガセネタを信じることになるので。
どこかの知事問題にしても、どこまでが真実でどこまでがガセネタなのかさっぱりわからなくなってますが、そこにはテキトーな発信をする人が介在しているのよ。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
この動画主って変な解説が多いですね。管理人さんがツッコミ入れるのもわかります。以前運転レベル向上委員会に間違いを指摘したらブロックされてしまいました。
コメントありがとうございます。
あそこの人は間違いを訂正しませんから…せめてちゃんと調べなよと。
判決は被害者は通過した交差点の信号の状態を知っていたみたいになってますが、通過してしまった信号なんて普通は気にしてないですよ。
運転レベル向上(口上?)委員会って、コメが欲しいんですかね?
下手すれば名誉き損とか誹謗中傷で訴えられたりしないんですかね?
コメントありがとうございます。
いずれ誹謗中傷だとして訴える人もいるかもしれませんね。
推測しまくるリスクを理解してないのでしょう。