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別個の事故が起きた場合、共同不法行為責任はどうなるか?

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読者様からマニアックな質問を頂いたのですが、

読者様
読者様
ある事故が起きて被害者が負傷し、同じ日にその事故とは関係がない別の事故が起きて結果的に被害者が死亡したような場合、過失割合はどうなるのでしょうか?

これは難しい問題なので個別に考えるしかないのですが、2つの事例をみていきます。

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事故で負傷後に医師がミスをして死亡

事案の概要はこう。

 

・被害者(6歳)は自転車に乗り一時停止をせずに交差点に進入した結果、減速せずに交差点に進入したクルマにはねられた。
・救急搬送された病院では意識清明で頭部に軽い点状出血があるものの、レントゲンでは頭蓋骨骨折もなく、CTは撮影せずにそのまま帰宅させた。
・帰宅後に嘔吐したものの眠気を訴えたためそのまま寝させた。いびきをかいたりよだれを垂らしたりかなり汗をかいていたものの、普段からいびきやよだれがあることからそのままにした。
・同日深夜に体温が39℃に上昇し痙攣。いびきをかかなくなり救急車を要請。
・硬膜外血腫により死亡した。

金額
遺失利益 2378万8076円
慰謝料 1600万円
葬儀費用 100万円
4078万8076円
第一事故の加害者側(C1株式会社)から葬儀費用の既払い 50万

要はこれ、第一事故の加害者と医師のミスが順次起きて死亡したもの。
しかし問題なのは、第一事故の加害者と医師の間で過失割合を認定できない。
なお交通事故と医療事故の過失割合は以下の通り。

 

○交通事故

被害者 加害者
30 70

○医療事故

保護者 医師
10(経過観察と保護義務の懈怠) 90

原判決は被害者が死亡したことについて、交通事故と医療事故の各寄与度をそれぞれ5割と推認し、医師が負う賠償責任は約4078万の5割(2039万)から被害者過失1割を相殺し、弁護士費用を加算した約2015万と認定。

 

しかし最高裁はこの判断を認めませんでした。

 原審の確定した事実関係によれば,本件交通事故により,Eは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,事故後搬入された被上告人病院において,Eに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもってEを救命できたということができるから,本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが,Eの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって,【要旨1】本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから,被害者との関係においては,各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し,各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。けだし,共同不法行為によって被害者の被った損害は,各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして,各不法行為者はその全額を負担すべきものであり,各不法行為者が賠償すべき損害額を案分,限定することは連帯関係を免除することとなり,共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し,これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり,損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。
したがって原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。
4 本件は,本件交通事故と本件医療事故という加害者及び侵害行為を異にする二つの不法行為が順次競合した共同不法行為であり,各不法行為については加害者及び被害者の過失の内容も別異の性質を有するものである。ところで,過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから,【要旨2】本件のような共同不法行為においても,過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり,他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしん酌して過失相殺をすることは許されない。

本件において被上告人の負担すべき損害額は,Eの死亡による上告人らの損害の全額(弁護士費用を除く。)である4078万8076円につき被害者側の過失を1割として過失相殺による減額をした3670万9268円から上告補助参加人C1株式会社から葬儀費用として支払を受けた50万円を控除し,これに弁護士費用相当額180万円を加算した3800万9268円となる。

最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日

駐車違反と右側通行、対向車の著しい速度超過の競合

次の事案はこう。

 

・普通貨物車(上告人車)を路側帯から北行車線にはみ出すように駐車したが、非常点滅灯をつけなかった。
・上告人車の後方からきた貨物車が、上告人車を避けるため中央線をはみ出して通行したところ、時速80キロ(指定最高速度は40キロ)で進行してきたクルマ(F車)と衝突。
各過失割合は以下の通り。

上告人車 はみ出し通行車 対向車
過失割合 1 4 1
過失 駐車禁止 はみ出し通行 速度超過、安全運転義務

 (1) 【要旨】複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。これに反し,各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺をすることは,被害者が共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとすることによって被害者保護を図ろうとする民法719条の趣旨に反することになる。
(2) 以上説示したところによれば,被上告会社及び上告人は,Fの損害581万1400円につきFの絶対的過失割合である6分の1による過失相殺をした後の484万2833円(円未満切捨て。以下同じ。)の限度で不真正連帯責任を負担する。

最高裁判所第二小法廷 平成15年7月11日

これらから言えるのは、結局は不法行為責任者間で絶対的過失割合を認定できるかどうかの話になる。
絶対的過失割合を認定できないなら平成13年判決が適用され、絶対的過失割合を認定できるなら平成15年判決に従い連帯で支払うことになる。

 

こういう話ってちょっと事実関係が変われば話が変わるのでして、例えば第一事故で「足を骨折」し、同日に第二事故で「即死」という場合、第一事故は死亡に至る原因ではないので話が変わる。
平成13年最高裁判決は交通事故自体が死亡の原因でもあり、本来は適切に処置されたら死亡には至らなかったと考えられるけど、交通事故自体が硬膜外血腫を発生させたのだから死亡と因果関係がある。

 

思うに、事故後の賠償責任はかなり複雑で、ちょっとの違いで判断が変わるもの。
そこはプロの弁護士に一任すべき話で、素人が立ち入ると重大な間違いに繋がる。

 

一般人ができるのは事故を起こさないための注意だけなのだから、目を向けるべきは「事故を起こさないための注意」なのよね。

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