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酒田市事故に思う危険運転致傷の成否。

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ちょっと前に取り上げた酒田市の「横断歩道手前に停止車両があるのに追い抜きして起こした事故」の話。

横断歩道で追い抜きした事故は、過失運転致傷から危険運転致傷に切り替えて捜査。
こちらの事故。横断歩道手前に停止している車両がいるにもかかわらず対向車線にはみ出してそれなりの速度で追い抜きして起こした事故ですが、警察は過失運転致傷から危険運転致傷に切り替えて捜査していると。なぜこれが危険運転致傷の疑いになるかというと、...

続報が出ており、いまだ意識不明らしい。
回復することを願うしかないですが…

【最新】酒田市の交通事故 下校中はねられた女子中学生は未だ意識不明 "停車した車" を追い抜き若い命を危険にさらした「危険運転」とは(山形) | TBS NEWS DIG (1ページ)
先月28日、山形県酒田市で、中学3年生の女子生徒が横断歩道を渡っている途中に車にはねられ意識不明の重体となる事故がありました。   事故から10日以上が経過しましたが、はねられた女子生徒は、9月8日… (1ページ)

ところで報道は相変わらず、危険運転致傷に切り替えたが詳細は不明という扱い。
危険運転致傷罪は自動車運転処罰法2条各号に掲げるどれかに該当しないと適用されませんが、仮にアルコールや病気があったとしても、進路を変えて追い抜きする態様に1号「正常な運転が困難な状態」というのは厳しいし、通行妨害目的態様くらいしか当てはまりそうなものはない。

危険運転致傷に切り替えて送検したのは、警察の「やってますアピール」なのか?
運転レベル向上委員会って陰謀論が本当に好きなんだなと思ってしまいますが、酒田市の「停止車両追い抜きして横断歩行者をはねた事故」について、過失運転致傷から危険運転致傷に切り替えて送検したのは「警察のやってますアピール」だとする。実務を理解して...
(危険運転致死傷)
第二条次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

通行妨害目的とは積極的な妨害意思が必要と立法者は説明してますが、積極的意思がなくても「妨害になることの確定的認識があれば足りる」とした東京高裁H25.2.22判決と「未必的な認識で足りる」とした大阪高裁H28.12.13判決、そしてこれらに関する論文を3つ紹介しました。

危険運転致傷に切り替えて送検したのは、警察の「やってますアピール」なのか?
運転レベル向上委員会って陰謀論が本当に好きなんだなと思ってしまいますが、酒田市の「停止車両追い抜きして横断歩行者をはねた事故」について、過失運転致傷から危険運転致傷に切り替えて送検したのは「警察のやってますアピール」だとする。実務を理解して...

https://ls.lawlibrary.jp/commentary/pdf/z18817009-00-071201535_tkc.pdf

https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/22-4/004fang.pdf

https://kwansei.repo.nii.ac.jp/record/29145/files/13.pdf

最後に挙げた「法と政治 71 巻 2 号」がよくまとまっていると思うんだけど、著者は未必的な認識の場合を絶対的否定要素ではなく、相対的否定要素とみなしている。

 

A 絶対的肯定要素:通行妨害の積極的意図
B 相対的否定要素:通行妨害の未必的認識
C 絶対的否定要素:やむを得ない状況

 

通行妨害の積極的意図があるなら成立するが、やむを得ない状況だった場合は否定される。
通行妨害の未必的認識の場合は、未必的な認識だからという理由で一律否定することは妥当ではないが、未必的な認識だから必ず成立するとした場合には多くの事例が危険運転致死傷罪になり、悪質なものに限定した趣旨と合わない。

 

酒田市の事例については、警察がどのように判断したのか謎。
例えば、先行停止車両が「横断歩行者優先中」だと認識していた上に、横断開始した歩行者がいることを認識しながらギリギリ衝突せずに通過できると考えたなら、妨害になることの確定的認識があったことになる。

 

先行停止車両が「横断歩行者優先中の可能性がある」と認識していたが、強引に突破する車両をみて横断を控えるだろうと考えたなら、妨害するおそれがあることを未必的に認識していたとも言えるし、軽信した過失とも言えなくはない。

 

ところで大阪高裁の事案については裁判所ホームページにありますが、中身をみれば通行妨害目的態様を適用したのは納得できる。
未必的な認識で足りる事案があるとしても、未必的な認識の全てが通行妨害目的と認定するのはムリがあるのだから、どこかで線引きする必要があるのよね。

 

けど、通行妨害目的は積極的な妨害意思がなくても成立するというのは少なくとも平成25年東京高裁の時点で出ていて、その東京高裁判決の枠組みを越えた平成28年大阪高裁判決もあり、令和になってからも名古屋高裁金沢支部が未必的認識で足りるとしてますが、

 

10年以上前から「積極的な妨害意思がなくても成立する」という状況なのに、今さら「積極的な妨害意思が必要」だと力説するのはわからない。
大分地裁判決で「積極的な妨害意思が必要」としたのは誤りだと思っていて、未必的な認識であっても成立するが、あの事案は故意に右折車両に近接行為をしたわけではないという面から同号該当性を否定すべきだったのではなかろうか。

 

通行妨害目的態様は通行妨害目的のほか、「著しく近接」と「危険な速度」を要件にするのだから。
自ら向かっていくのを近接行為というのはわかるけど、まっすぐ走っていて自車の進路を横切る車両に対し近接行為というのは違和感がある。

 

けど、その理屈だと横断歩道を使って横切る歩行者が相手というのも…

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