ちょっと前に「事故を推測で語ってはいけない理由」について解説しましたが、

こちら。
推定速度は67キロです、としている一方、途中からは「速度超過してなければ」という形で67キロ(法定速度超過)が事実である前提で話を進めている。
そもそもこの人が時速67キロと「推定」した理由は、ここから被害者が横断したの「だろう」(衝突場所の推測)、ここまで被害者が飛ばされたの「だろう」(飛翔距離の推測)から割り出したもの。
推測した衝突場所に根拠があるわけでもなければ、推測した飛翔位置に根拠があるわけでもないのに、推定と推定から推定速度を割り出し、それが事実である前提になっているのよね。
衝突場所と飛翔位置が異なれば、飛翔距離も変われば推定速度も変わりますが、要は何の根拠もなく「容疑者は速度超過していた」という前提にしてしまう。
推測の怖いところってこういうところで、報道からは容疑者の速度は全くわからないのでして。
ちなみにフロントガラスの割れからある程度の速度を推測する方法もあるといえばありますが、科学的なコンセンサスを得ているわけではなく諸事情が変わると変化するため、あまり信用できるものでもない。
推測位置と推定位置から推定速度を算出するというのは、もはや何の根拠にもならないのよ。
この人がやっているのは「分析」ではなく「小説の創作」に過ぎない。
次に回避可能性があったかですが、横断自転車の速度と見通しがわからないと全くわからない。
例えば札幌地裁 令和5年4月18日判決は、第2車線を通行していた被告人車と、右から横断した自転車の衝突事故ですが、

この関係なら、被告人からすれば右から横断する自転車を視認可能…というわけではない。
この判例は

対向車線を通行する車両10台とすれ違いした直後に、対向車線を通行する車両の死角にいた自転車を視認できなかった。
視認可能になった時点では既に回避可能性がなく無罪。
今回の報道については、被害者の速度もわからなければ、札幌地裁 令和5年4月18日判決のように被害者を視認できなくする事情があったのかもわからない。
衝突場所も飛翔距離もわからないのだから「推定速度」にしても何の根拠もないところ、根拠もなく「速度超過していた」前提にし、被害者の横断速度を根拠もなく推測し、速度超過してなければ回避できたという話にしてしまう。
これが根拠がない推測なのよ。
YouTuberが「事故を推測で解説してはいけない4つの理由」を挙げている。
【元海上自衛隊幹部が苦言】T-4墜落著書「海上自衛隊潜水艦最強ファイル」ニコ生:元海上自衛隊ユーチューバー。政治・軍事・国際・経済・憲法など話題のニュースをわかりやすくお届けします!サブチャンネル:
そして「推測」はこういう誹謗中傷につながる。
署名活動を行うなかでもう一つ、失意の遺族にさらなる追い打ちをかけているのが、ネット上にあふれる心ない言説だ。「ある程度覚悟はしてましたが、どんなに丁寧に説明しても『親が悪い』『チャイルドシートをつけていなかったのでは』など、被害者の落ち度を探すコメントが寄せられます。気にしない方がいいと言われますが、『そもそも旅行に1歳児を連れていくな』と言われると、もうどうしたらいいのか……」。世間的な関心度の高い交通事故では、遺族への誹謗(ひぼう)中傷も深刻な社会問題となっている。
「最後の抱っこは忘れられない」悪質“ながら運転”に奪われた我が子…遺族を苦しめる誹謗中傷と厳罰化の壁2024年9月、高知・香南市の東部自動車道を走行中、反対車線からはみ出してきた車に正面衝突され、1歳の男の子が亡くなった事故。今年8月、過失運転致死傷罪で起訴された男は、自動運転技術を利用し、走行中にシートベルトを外して靴を履き替えるなどの...
○○「だったのでは?」という推測に関係者は苦しむわけで。
そうするとこの事故、結局は「詳しくわからないけど気をつけよう」としか言いようがない。
逮捕され容疑を認める供述をしていることも、過失があったかなかったかを決定付けるものではない。
推測の怖いところって、推測と推測を掛け合わせて出した何の根拠もない数字が、いつの間にか根拠があるような錯覚に陥り、しまいにはそれが事実であるかのように語りだし、事実として世間に流布されるところ。
よくよく考えれば何の根拠もない「小説の創作」に過ぎない話なのに、いつの間にか事実になってしまうのよね。
それが果たして正義と言えるのか疑問ですが、こういうのって反面教師にするしかないのよね。
「分析」と「小説の創作」では全く違いますが、推測しまくるスタイルの危険性って誹謗中傷につながることなのよね。
そもそもこの人は逮捕要件を理解してないから「逮捕=悪確定」という認識でしかないわけですが、何も詳しいことがわからない事故について、ここまでベラベラ語れるのが凄い。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。





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