運転レベル向上委員会が、「公道なら標識の効力があるけど私道ならなく、速度標識や駐停車禁止の効力がない」みたいな解説をしてますが、
私道であっても交通規制は可能。
運転レベル向上委員会は道路交通法に詳しくないからわからないのかもしれないけど、交通規制の対象は「道路」であり、
第四条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者若しくは遠隔操作型小型車(遠隔操作により道路を通行しているものに限る。)(次条から第十三条の二までにおいて「歩行者等」という。)又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。
道路交通法上の道路とは、道路法に基づいた国道、都道府県道、市町村道以外に一般交通の用に供するその他の場所を含むのだから、私道であっても公安委員会が交通規制(標識等の設置)することは可能。
具体的な例を挙げるなら、箱根ターンパイクがある。
箱根ターンパイクはNEXCO中日本のグループ会社が保有する私道ですが、速度標識があり違反は検挙される。
その他、林道も道路法に基づいた道路ではなく私道扱いですが(ただし私道の管理者が自治体の場合が多い)、林道にも交通法8条により車両通行を禁止することは可能。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kisei/kisei20190219-2.pdf
ただし私道に標識等を設置するには、私道管理者と協議することが必要になる。
そもそも「除外するときは条文に書く決まりです」と主張しても運転レベル向上委員会には無意味な話で、「私道は除外」という条文にはない除外規定を創作したり、「34条1項にかかわらず(35条1項)」と条文に規定して「34条1項を除外する」としていても、読めずに34条1項を適用してしまうのだから、
まずは条文をきちんと読めるようになってから語るほうがいいと思う。
なお、速度規制は公安委員会の意思決定が必要。
ところで、運転レベル向上委員会の人は危険運転致死傷罪も勉強不足と言わざるを得ないんだけど、
「進行制御困難な高速度」と「限界旋回速度」は異なる概念(東京高裁 令和4年4月18日、同10月7日上告棄却)。
原判決は、被告人車両の速度が本件右カーブの限界旋回速度よりも下回っていたことを指摘するが、限界旋回速度と「進行を制御することが困難な高速度」とは異なる概念であり、限界旋回速度よりも低い速度であっても、道路の状況やわずかな操作ミスによって自車を進路から逸脱させて事故を発生させることは十分あり得るから、限界旋回速度を下回っているからといって、直ちに「進行を制御することが困難な高速度」に当たらないとはいえない。
被告人車両の速度は、最高速度を時速40km以上も上回っており、事故現場の道路状況(片側1車線の一般道で、最高速度が時速50kmであり、右カーブの最もきつい曲線部の曲線半径は124.75m)に照らすと、この速度で走行するに当たっては、進路に沿うのみでも相当難しいハンドル操作が求められ、わずかでも誤りがあれば、路外又は対向車線に逸脱させるおそれがあったといえる。そして、実際に、被告人車両は、本件右カーブの曲線の最もきつい箇所を通過した後、約100m走行する間に、自車の走行車線を維持することができず、センターラインを越えて対向車線に進出し、また、その時点までに、遠心力の影響により車体後部がふらつき、被告人もハンドルを左右に切って車体の方向を保とうとしたものの、制御不能な状態となり、横滑りを起こしているのであって、これにより、車体後部を右に振りながら斜め左方向に滑走して、本件事故に至ったことが認められる。
そうすると、この速度が「進行を制御することが困難な高速度」に該当することは明らかである。「進行を制御することが困難な高速度」とは、法的評価を要する規範的構成要件要素であるから、運転者において、このような評価を基礎付ける事実、すなわち、道路の状況及び「進行を制御することが困難な高速度」に該当する速度で走行していることの認識があれば、進行を制御することが困難であるとの認識がなくても、同号の罪の故意犯としての非難が可能である(その評価を誤ったとしても、故意は阻却されないというべきである。)。また、「進行を制御することが困難な高速度」に該当する速度で走行している認識があるというために、その速度について具体的な数値の認識まで必要とするものではないことは当然であり、自車の走行状況を概括的に認識していることをもって足りる。
東京高裁 令和4年4月18日
従来、カーブでの進行制御困難高速度危険運転致死傷罪(処罰法2条2号)は限界旋回速度を越えていたかを論点にするものが多かった。
しかしそもそも、限界旋回速度以下でも同罪の成立を認めた判例は多々あり、しかも条文上も限界旋回速度が基準になるとは読み取れない。
要は検察官が同罪の立証をする上で、限界旋回速度を越えていたかそれに近いなら「進行制御困難高速度」を立証しやすかったというだけのことだと考えられる。
東京高裁 令和4年4月18日判決は「進行制御困難高速度」と「限界旋回速度」はそもそも違う概念なんだと明確にした。

同判例は大分時速194キロ事故でも援用されてますが、この判決文を読んだのか疑問。
この判決はわりと重要でして、同罪の今後に影響すると考える法学者もいるわけですが、
道路交通法の解説書はまだそれに追い付いてないのよね。
道路交通法の解説書は処罰法の専門書ではないから仕方ないですが、処罰法を解説する上では欠かせない。
そしてもう1つ疑問なのは、「認知症か」というタイトルで配信したメディア記事をミスリードの可能性があるとして非難している点(当該動画の1つ前の動画)。
いやいや、おかしなタイトルで「釣る」のは運転レベル向上委員会のお家芸としか思えないのですが…

「中国人だと逮捕されない?」として解説内容も神奈川県警の陰謀論を語ってますが、この事件は当初から報道されていたように、容疑者も救急搬送されている。
救急搬送するのを阻止して現行犯逮捕することは何人であろうとしてないのだから、中国人であることや神奈川県警の忖度である可能性は全くない。
しかし「中国人だから逮捕されない」かのようなタイトルで「釣った」のである。
自分がやっている行動について他人を非難するのは支離滅裂ですが、

自らは事実誤認や判例改竄などフェイクニュースを量産する一方、他人を非難するのは自らの問題点を全く理解してないと言わざるを得ない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



コメント
「箱根ターン『パイク』」ですよね?
typoの指摘はしょうもないかもですが、固有名詞でしたのでつい…
コメントありがとうございます。
一瞬何の話かわからなかったのですが、記事はスマホで打つためよく見えないのでこうなります。
ご指摘ありがとうございました。