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夜間通行の注意義務と、歩道通行自転車の徐行義務の話。

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こちらの事故。

93歳男性が女子大学生の自転車にはねられ意識不明 坂を下った先のバス停付近「自転車通行可」の歩道 その通行ルールとは?  | TBS NEWS DIG (1ページ)
11月19日夜、熊本市北区の歩道で93歳の男性が自転車にはねられました。男性は意識不明の重体です。警察によりますと、19日午後5時45分ごろ、熊本市北区楡木(にれのき)の歩道で、バスを待っていたとみられる熊本… (1ページ)

夜間に歩道をスピードを出して下っていたところ、気づいたときには目の前に歩行者がいて衝突したという事故。
なおながらスマホではないと自供している。

 

これについて歩道の徐行義務(63条の4第2項)を強調する記事が目立ちますが、確かに歩道通行自転車には徐行義務があり、徐行していたなら避け得たものと思われる。

 

しかし本質はそこなのだろうか?

 

クルマの事故判例(業務上過失致死傷、現在の過失運転致死傷)ですが、興味深い判例が2つある。

自動車の運転者は、前照灯の照射範囲を考え、適宜減速して進行すべき注意義務がある。

東京高裁S42.4.3

自車の前照灯を下向きにして進行する場合、前方30mを超える距離にある障害物を確認できないことを前提として、自車の速度を調節すべき注意義務を負っていたものと解するのが相当である。(中略)スチールラジアルタイヤを装着すれば、運転者が危険を感じてから停止するまで約29mを要するのであるから、運転者が前方注視を厳にし、障害物を約30m前方に発見して直ちに制動の措置を講ずれば、その直前において停止し、これとの衝突を回避することが不可能であるとはいえない。しかしながら、運転者は絶えず前方注視義務を十分に果すことが理想であっても、長い運転時間中に一瞬前方注視を怠ることもありえないとは言えず、あるいは前方注視義務を十分に果していても急制動の措置を講ずることに一瞬の遅れを生ずることもないわけではなく、さらに運転者がその注意義務を果そうとしても外部的事情により義務の履行が困難となることがありうることを考えると、運転者としては、車両の性能と義務の履行につき限界すれすれの条件を設定して行動すべきではなく、若干の余裕を見て不測の事態にも対処できるような状況の下で運転をすべき業務上の注意義務があるといわなければならない

東京高裁S51.7.16

両判例の趣旨は、夜間に走行する際にはライトの照射範囲で制動できる速度にしなさいというもの。
理屈の上では、ロービームは40m先を照らす。
しかし時速60キロの停止距離(空走距離+停止距離)は約44mとされており、時速60キロで通行する者が40m先に障害物を発見した場合、既に回避可能性がない。

 

それはおかしいよね?と指摘したのが東京高裁で、しかもその速度とは限界スレスレならいいのではなく、若干の余裕をもった速度だとする。

 

さて、自転車のライトを考えると、ほとんどの都道府県規則では「前方10mを照射する性能」があれば問題ないとする(神奈川県は数年前まで「前方5m」でしたが改正された)。
ママチャリなんかを見ると、その程度の照射範囲しかない。

 

報道をみて思ったのは、歩車道の区別がない道路(その場合、自転車には徐行義務はない)でも同じように歩行者に衝突したのではないか?という疑問なのよ。
車道通行でも理屈は変わらない。

 

そりゃ今回の事故は現場が歩道である以上、歩道の徐行義務を強調することになる。
しかし本質は本当にそこなのか?

 

見える範囲で制動できる速度にするのは、当たり前な原則と言えると思う。
スポーツサイクリストでも、ショボいライトしかない場合はスピードを抑えて慎重になると思うし、強力なライトがある場合とではスピードが違うのは当たり前なのでして。

 

センターラインがない生活道路の法定速度が30キロになる件にしても、そもそもなぜそのような生活道路に速度規制をしてなかったのか理由を理解していないと思う。

生活道路に速度規制をしてなかったのは、シンプルにいえば「する必要がなかった」から。
生活道路は頻繁に「左右の見通しがきかない交差点」が登場し、左右の見通しがきかない交差点では徐行義務を負うのだから(法42条1号)、速度規制をするまでもなくスピード出せないのよね。
「生活道路に速度標識がなければ時速60キロまで出せる」というのは単に22条の話でしかなく、道路交通は22条だけで成り立っているわけじゃないのだから。

 

生活道路の法定速度引き下げの話は、徐行義務を忘れた議論になっていて本質を見失っている。

 

見える範囲で制動できる速度にするのは歩道に限らずあらゆる道路に共通する話。
気がついたら目の前にいたと供述してますが、歩道じゃなくても事故が起きていたのではないか?と思ってしまうのでして。

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