さてこちらの続き。

サイクリングロードは道路交通法上、「歩道と車道の区別がない道路」になり、しかも狭いのだから、

「歩行者の横を通過するときは」徐行義務がある。
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
狭いので安全側方間隔は保てないケースが多いので、実質的には徐行義務を負うことになる。
これが大事なのは以前実例を挙げてまして。
徐行義務が大事な理由

これですよね…

報道では「遊歩道」となっていた気がしますが、公園内のサイクリングコースで裁判上も「歩道と車道の区別がない道路」としている。
犬のリードを見落として引っ掛けた事故です。
本件遊歩道は、公園敷地内の、歩車道の区分がなく、自転車・歩行者の通行区分もない見通しが良好な道路で、交通規制もない。本件遊歩道の路面は平坦なアスファルト舗装で、本件当時は乾燥していた。本件遊歩道は、本件現場の先で、左にカーブしており、カーブ部分の南側には、扇状の階段(以下「本件階段」という。)がある。
本件事故当日、原告は、父母とともに、本件現場付近に車で訪れ、(中略)。各人が一匹ずつリードでつないだ犬を連れていたが、原告が連れていた本件犬が自力で階段を下りなかったため、原告は、本件犬を抱えて本件階段を下りた。原告が、本件階段下の草地で本件犬を下ろしたところ、本件犬は本件階段付近の草を探っていた。本件リードは、リール付きでリードの出し入れをして伸縮できるものであった。なお、原告の父Bは、先に階段を下り、遊歩道を渡って北側の草むらで、自身が連れてきた犬を遊ばせていた。
被告は、ロードバイクである被告車を運転して、本件遊歩道のやや左側を、西から東に向かって、時速約20キロで走行していた。被告は、別紙図面3の①地点で、進行方向の(ア)地点に原告が佇立していること、被告からみて原告の左側の草むらに人(B)と同人が連れた犬がいることを認識したが、この時、原告がリードを把持して本件犬を連れていることは認識していなかった。被告は原告の右側のスペースが広く空いているように見えたため、原告の右側を通過しようと考え、また、進行先で遊歩道が左にカーブしていることから、被告車のペダルを漕ぐのをやめて速度を落として進行し、原告の右側を走行しようとした。被告が、②地点を通過しようとした時、原告が把持していた本件リードと、被告車のチェーン部分等が接触して絡まり、被告車はその場において停止する力を受けた一方、被告の身体は、慣性によって被告車から離れて、前方に進んで芝生の上に倒れ込み、被告車も倒れた。他方、原告は、右腕が引っ張られる形で転倒した。(中略)
実況見分が行われ、本件現場において、自転車走行時及び停止時の本件リードの視認可能性を確認するために、被告車と同等の大きさの自転車を時速20キロないし25キロの速度で走行させて本件リードの視認状況が確認された。
警察官は、本件リードの存在を認識しない前提で、3度にわたり、通常の状態で前方を注視しながら自転車を走行させる実験を実施したが、本件リードを張った状態及び緩ませた状態のいずれにおいても、本件リードを発見することは困難であった。一方、警察官が、本件リードの存在に注意しながら時速約20キロで自転車を走行させた時には、本件リードを約9m手前で視認可能であった。
被告は、被告車を運転して本件遊歩道を走行するにあたり、本件現場付近には歩行者が存在したのであるから、周囲の状況を確認して安全に走行すべき義務があるにもかかわらず、これを怠った過失がある。他方、原告にも、他の自転車等の交通当事者が通行することが合理的に想定される本件現場付近で本件犬の散歩をするにあたり、本件リードを適切に操作し、本件犬との距離を適切に保つなどして、人や自転車等の他の交通当事者の通行を妨害しないようにすべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った過失がある。そして、本件事故が公園内であって、散歩や遊戯によって歩行者が不規則・予想外な行動をとる可能性が相応にあるような場所であり、自転車で通行する被告に対して比較的慎重に運転すべきことが要求される場所での事故であることからすると、本件リードの視認可能性が極めて低く、原告の本件リードの操作等が適切とは言い難い面があったとの事情等を考慮したとしても、本件事故における原告の過失相殺率は、30%とするのが相当である。
※二審は20:80で和解。
犬が舗装路から外れた草地にいたこともあって犬のリードを見落として引っ掛けた事故ですが、警察の実験でも犬のリードは視認困難。
時速20キロから減速中なので強い非難の対象とは思わないけど、より慎重にもっと減速していたら…ということで実質的には18条2項相当の注意義務違反を認定したことになる。
この事件、支払いは自転車側の保険会社になるので、過失割合が何%だろうと自転車からすると変わらない。
ただまあ、この再現実験が事故から半年後に行われたことから推測すると、おそらく被害者が「過失傷害罪」(親告罪)で刑事告訴したんじゃないかな。
この実験結果からすると不起訴になるとは思うけど、刑事事件化するとややこしいし、何より自転車対歩行者の事故は自転車もケガしたりフレームが壊れたりする(この事故は自転車も吹っ飛んでますが、草地に着地した)。
自分を守れるのは18条2項になるわけよ。
ちなみにこういうリスクがあるから、個人的にはサイクリングロードをオススメしていない。
ロードバイクらしく走れる場所じゃないのよね。
道路交通法を厳格に解釈する無意味さ
ついでなのでこちらに絡めておきます。

道路交通法テロリストの方々は、歩行者を追い越すときに右側通行していい根拠がないと語るんだけど、

このようなサイクリングロードにも左側通行義務(17条4項)はある。
しかし現実的に、サイクリングロードを通行している歩行者を追い越すときに右側通行になることは全然あるし、まさか道路交通法を厳格に解釈して歩行者の横スレスレになってでも左側通行義務を果たすバカはいない。
条文上はないにしても、

こんなことをするくらいなら、対向車の存在を確認して安全側方間隔+減速にしたほうが全ての人にとって幸せなのよね。

まあ、狭いサイクリングロードで左側通行義務を完全遵守はムリだし、できる限り安全側方間隔をとり減速するのがベストかと。
けど、道路交通法テロリストの方々は無駄に条文に固執して本質を見失う。
サイクリングロードにおける徐行を必ずしも徐行を時速10キロ以下と解釈する必要はないかもしれないけど、一応は犬のリードを見落とした事故があったことは頭に入れたほうがいい。
どこかピントがズレている
こちらの件ですが、

「歩道ではないから徐行義務はない」を強調するのはピントがズレている。
ただまあ、全く関係ない「道路管理者の瑕疵」についての判例を取り上げていることからしても、自分で調べて理解してから解説したわけではないんでしょうね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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