こちらについて質問を頂いたのですが、
これはなかなか複雑な問題です。
18条1項の「左側端に寄って」
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び一般原動機付自転車(原動機付自転車のうち第二条第一項第十号イに該当するものをいう。以下同じ。)にあつては道路の左側に寄つて、特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
自転車に関わる部分だけを抽出します。
第十八条 車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)にあつては道路の左側端に寄つて、当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
道路とは17条4項で歩道等と車道が分かれているときは車道だとなっていることに注意。
この規定には罰則がありませんが、なぜ罰則がないのでしょうか?
理由はこちら。
第1項の規定の違反行為については、罰則が設けられていない。これは、この規定による通行区分は、道路一般についての車両の通行区分の基本的な原則を定めたものであり、また、道路の状況によっては、道路の左側端又は左側といってもそれらの部分がはっきりしない場合もあるので、罰則をもって強制することは必ずしも適当ではないと考えられるからである。(従前の通行区分の基本的原則を定めた旧第19条の規定についても、ほぼ同様の理由により、同じく罰則が設けられていなかった。)。
道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房
明確に「ここまで」と言えない場合があるから罰則がないのです。
なので道路幅、道路の状況などから総合判断するしかなく、一律で「ここまで」とは言えない。
実はこれ、警視庁は目安の数字を出しているのですが、あまり一般化できるものではないしそもそも最近もこの基準を採用しているのかやや怪しいのでやめておきます()。
その上でこの条文の立法趣旨は、左側通行の原則の下では遅い車両を左側にし、追い越し追い抜きする車両は右側から通行させることを原則とするワケ。
ところで、キープレフトの原則の本来の趣旨は、通常走行の場合はできるだけ道路の左側端を通行させ、追い越しの場合は道路の中央寄りを通行させることにより種々の速度で通行する車両のうち、低速のものを道路の左側端寄りに、高速のものを道路の中央寄りに分ち、もって交通の安全と円滑を図ることにあるとされている(なお、法27条2項参照)。右のような趣旨ならひに我が国の道路および交通の現状にかんがみると、18条1項の規定をあまり厳格に解釈することは妥当ではなかろう。
判例タイムズ284号(昭和48年1月25日) 大阪高裁判事 青木暢茂
なので自分のさらに左側から自転車が追い越し追い抜きできない程度の範囲であれば「左側端に寄って」と言える範囲。
車道の定義は歩道の縁石までになりますが、
コンクリートブロックは通行に適さないので当然除外。
やたら左側端に寄りすぎても危険ですが、例えば上の状況で白線上を自転車が通行していたら、さらに左側から自転車が追い越し追い抜きできないわけ。
そういう範囲なら「左側端に寄って」の範疇になりますが、道路状況によって差があるので一般化することは困難です。
そして勘違いしやすいポイント。
時速15キロの自転車と時速35キロの自転車では左側に寄りすぎた場合のリスクが違うし、三輪自転車なんかは左側端に寄りすぎると不安定。
なので自転車といっても一般化することは困難です。
徐行が要求される左折前の「左側端に寄って」と、時速40キロで通行する際の「左側端に寄って」は必ずしも同じとは限らないわけで、結局は状況次第です。
そしてこの規定には「除外事由」があることを理解してない人が多い。
第十八条 車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)にあつては道路の左側端に寄つて、当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
左側端にガラス片が散らばっていたり、左側端が穴だらけだったり、左側端にウ○コが散らばっていても「左側端寄り通行義務だろ!」という理不尽な話ではなくて、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」は左側端寄り通行を解除してよい。
結局、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」に該当することってまあまあありまして、水溜まりがあったり、ガラス片が散らばっていたり、やたら道路がガタガタになっていれば左側端寄りである必要はない。
除外事由がないと、ウ○コが散らばっていても自転車は突撃しないといけなくなりますが、そんな理不尽な法律ではないのです。
なので個別の状況次第としか言いようがない。
自転車目線ではガラスの破片が散らばっているのが視認出来ても、後続車目線だとわからないみたいなこともあります。
わざとブロックするようなのは感心しませんが
わざと後続車をブロックするように車線の真ん中寄りを走るみたいなことをしなければ、左側端寄り通行義務違反になることはないかと。
左側端ギリギリを走れという話でもないし、車道外側線はそもそも道路交通法上は何の関係もないし、左側端にウ○コがあるのにアタックしろという理不尽な法律でもない。
普通に走れば普通に問題ないと思いますが、立法趣旨からすれば「さらに左側から自転車が追い越し追い抜き」できない程度の範囲と言えるかと。
そもそも、報道されていた「できる限り」の意味を取り違える人が多いことに問題がある気がします。
追い抜きに関する規定は、「自動車が自転車の右側を通過する場合、十分な間隔がない時、自動車は間隔に応じた安全な速度で進行する」よう義務づける。同じ状況で自転車には「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務を課す。
「十分な間隔」や「安全な速度」の具体的数値は法令では規定せず、今後検討して目安を定めて示す。間隔は1~1・5メートルが基本になるという。速度については、自転車は通常時速20キロくらいで走ることが多く、追い抜く車はそれを5~10キロ上回る速度が目安になるという。
自転車追い抜き時、車に罰則付き義務 ながら運転禁止 道交法改正へ:朝日新聞デジタル警察庁は21日、道路交通法の改正原案をまとめた。車が自転車を追い抜く際、「間隔に応じた安全な速度」で進行する義務を車の運転者に罰則付きで課す新たな規定を盛り込む。自転車の交通違反に、青切符を受けて反…
常識レベルで普通に左側端に寄って通行していたら、新ルールとやらは普通に左側端寄り通行している自転車には何の関係もないのだとわかる話。
そして理解力がない人がイチャモン付けてくるのは今も昔も同じこと。
まあ現実的には、先にイキたい車両がいるならイカせるように譲ることはありますが。
バス停のところなどで。
先にイカせてからじっくり楽しむのが…なんか違う話みたいだな。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
右側から抜くが原則何でしょうけど、複数車線で第二車線を走行の車を(おそらく自転車追い越しの為に第二車線に移ったと思うのですが)、第一車線に車線変更して追い抜くスポーツカー(違うのもいますが、概ねスピード出すことしか頭にないタイプ)に何度か遭遇してコワイ思いをしますね。
ちなみに、ブロックは違反ですが明らかに狭く(反対車線が渋滞してるやら、中央分離帯があるやらなど)、追い越して欲しくない時に、若干左端から離れてブロック気味に走行するのはまずいですかね(空気読まない車がいますので)。なるべくスプリント気味で、追い越しできるところ(渋滞、中央分離帯が途切れたり、バス停等の退避ゾーンがある所)まで、急いで通り抜けるようにはしています(空気読む車だと追い越し時にサンキューハザード出してくれはしますが)。
コメントありがとうございます。
>追い越して欲しくない時に、若干左端から離れてブロック気味に走行するのはまずいですかね
別に構わないと思いますが、新ルール次第では違反になりうるので露骨にやるのはネット上に晒されたりするかもしれませんね。