今更感が強い記事とも言えるのですが。
年に一回くらいですかね。
クレーム頂く内容があります。
ケミカルでコーティングが剥がれる危険性がある。
これについては前半はごもっともです。
シマノは確かに、
チェーンを適切なチェーンクリーナーで定期的に洗浄してください。錆び落としなどのアルカリ性、あるいは酸性の洗浄液は決して使用しないでください。これらを使用するとチェーンが破損し、重傷を負うおそれがあります。
(中略)
ギアは定期的に中性洗剤で洗浄してください。またチェーンを中性洗剤で洗浄し注油することも、ギアおよびチェーンの寿命を延ばす効果があります。
https://si.shimano.com/api/publish/storage/pdf/ja/dm/CN0001/DM-CN0001-07-JPN.pdf
このように書いています。
この説明書は11速チェーン(詳しくは見てください)の説明書となっています。
ただし、ちょっと思うところもあります。
Contents
自分なりの考え方
これについては、私なりの考えはこうです。
記事中でも引用していますが、プロショップさんの見解が最もシックリ来るといいますか。
大雑把にまとめるとこうです。
・強い洗浄成分で、チェーン内部のグリスまで溶かしてしまう
・洗浄成分を水で流さないまま注油して、残った洗浄成分がオイルを分解する
・チェーン内部まできちんと注油出来ていない
・その結果、問題が生じる恐れ
私なりにいろいろ試して、ディグリーザーを使ってチェーン洗浄したあと、チェーン洗浄機に水を入れてぐるぐる回しています。
https://roadbike-navi.xyz/archives/15370/
水で流す⇒きちんと乾かす⇒注油して数時間は放置する、こういう工程をしっかりしていれば、問題ないだろう(というよりも現状ではベストウェイ)と考えてのことです。
当サイトでは、なるべくメーカーの指示通りに書くことをモットーにしてますが、要はディグリーザーだろうとなんだろうと、きちんと使えない奴が使えば問題が起こりうる。
それが問題の本質だと思ってます。
ただこれ、酸やアルカリの洗浄液が、シルテックを剥がすということについては、強い違和感を持っています。
シルテックが剥がれる?
シマノの説明では、チェーンのシルテック加工とはフッ素によるコーティングだと書いてあります。
要はテフロン加工と同じでしょう。
で、テフロン加工自体は、酸やアルカリなどに本来は強い・・・はず。
で、酸やアルカリを使うなという表現。
シルテック加工されていないチェーンには書いてあるのか?というところを見ていきます。
まずは、10速デュラ(7901)~10速ティアグラ(4601)までの説明書。
チェーンを適切なチェーンクリーナーで定期的に洗浄してください。錆び落とし等のアルカリ性、あるいは酸性の洗浄液は決して使用しないでください。これらを使用するとチェーンが破損し、重傷を負う恐れがあります。
(中略)
ギアは定期的に中性洗剤で洗浄してください。またチェーンを中性洗剤で洗浄し注油することも、ギアおよびチェーンの寿命を延ばす効果があります。
https://si.shimano.com/api/publish/storage/pdf/ja/si/09R0A/SI-09R0A-002-JPN.pdf
10速デュラのチェーンってシルテック加工以前だったと思うのですが。
少なくともティアグラ4601のチェーンについては、シルテックではないですね。
続いてはCN-HG7700(9速デュラ)やCN-HG50(6~8速用)の説明書。
チェーンの洗浄には中性の洗浄液を使用してください。サビ落とし等のアルカリ性あるいは酸性の洗浄液を使用するとチェーンにダメージを与え、チェーン切れを起こす場合があります。
https://si.shimano.com/api/publish/storage/pdf/ja/si/CN00A/SI-CN00A-000-00-JPN.pdf
このあたりはシルテックは関係ないですよね。
これらからすると、シルテック加工されたから中性洗剤にしろ!!と指示されたわけではない。
つまりは汁テク以前から酸やアルカリの洗浄液を使うなと書いてあるので、汁テクを駆使したチェーンだからというわけでもないんですよ。
つまり、酸やアルカリがシルテック加工を剥がす説は、一気に信憑性がなくなる。
シルテック=テフロン加工、ということからも、テフロン加工は酸やアルカリに強いよね?という事実があって、合わせ技で一本取ったものと思われ。
※【ノー汁テクチェーンでも酸やアルカリ不可表記】+【テフロンって酸やアルカリに強いよね?】の合わせ技
そうなると、最初に書いたこと。
こっちのほうが説得力が増す。
つまりは、洗浄成分を水で流さないために、注油しても分解されてしまい、必要なオイルがチェーン内部に無いということ。
こっちのほうが合理的だと思うので、チェーンについては中性洗剤にこだわらずに書いています。
流す
これは何度も書いていることなんですが、私自身も、昔はディグリーザーでチェーンを洗浄し、全力で拭いて、乾かして、あとは注油してました。
それからいろいろと試して、今はディグリーザーで洗浄後に、チェーン洗浄機に水を入れて流すスタイルに。
このようにしているのは、そっちのほうがオイルのもちが確実にいいと体感できたからです。
もう1つ言うと、シマノが禁止していることって【サビ落としの強い洗浄液】の話なんじゃないかと思うんです。
日本語として読むと、【適切なクリーナーを使おうぜ!】ということと、【錆び落とし等のアルカリ性、あるいは酸性の洗浄液は決して使用しないで!!】という話。
サビ落としの強い洗浄液って、例えばサンポールとか?
サンポールでサビ落としという話は時々聞きますが、あれは強酸性の洗浄液。
そんなもんをチェーンに使うとどうなるのかは・・・ちょっと分かりません。
一応、中性洗剤で洗うことが推奨されていることは間違いないです。
ただ意味としては、ちゃんと洗浄と注油まで出来てない奴がチェーンをぶっ壊して困るんだよね、程度の話なんじゃないのかなと考えてます。
今現在、多くの人がディグリーザーやらクリーナーやら使ってチェーン洗浄してますが、そういう人たちの恐らく99%以上は、チェーンがそのせいで切れて爆死した人なんていないと思われ。
ちゃんと適切に使って、ちゃんと注油できていればいいんじゃないかと思ってます。
そりゃ、ディグリーザーとか灯油を使って洗浄して、拭き取りもせずにいきなり注油したら意味が無いことは誰でもわかる。
ところがドッコイ。
それを平気でしてしまうようなアホが、世の中にはゼロとは限らないんですよね・・・
そういう意味なんじゃないかと。
どんな世界でも、アホな行動を取ってしまう人はいる。
ニュースなんか見ていても、アホだなぁ・・・と、むしろ驚きのニュースなんていくらでもある。
なぜそんなプレイをしてしまうんだ??みたいな。
とりあえず言える事は、使うケミカルの性質をきちんと確認すること。
水で流さなくてもいいと書いてあるものもありますし、水で流すことを推奨しているものもある。
あくまでもキレイにする⇒きちんと内部まで注油する、これが大切なので、それを達成するにはどうしたらいいかというだけの話なんじゃないですかね。
コメント
こんにちは、初めまして横山と申します。
アルカリ性のチェーンに対する攻撃性のお話ですが、一般的に水素脆化と言われる水素原子が金属に吸蔵されることで、金属素材の靭性(じんせい:粘り強さ)が低下し、もろくなる現象は酸性の場合の話です。メッキなどの「酸洗い」と呼ばれる工程で問題にされます。アルカリの問題は油分を分解するので、ご推察の通りだと思います
コメントありがとうございます。
先日、和泉チエンの担当者さんからも言われた件がこちらになります。
https://roadbike-navi.xyz/archives/25877/
この場合、アルカリが直接金属を犯したと考えるべきなのか、残留アルカリがオイルを分解してしまった結果と見るべきなのか、どうなんでしょうか?
金属の中には酸だけではなく、アルカリにも溶ける両性金属と呼ばれるものがあります。アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛がこれに該当するのですが、安物のチェーンはSS材などが使われているはずです。このSS材にはかなりの不純物が混ざっており(鉄屑が原料)、この不純物の中にアルミニウム、亜鉛、スズ、鉛が混入している場合、アルカリに反応しているのではないかと思います。しかし、これはうちの製品の素材は悪いと宣言しているようなものですよね。実際には残留アルカリのオイルの分解と、酸性での水素脆化ではないかと思います。サンポールでチェーンのサビ落とす人も居たりしますから。
コメントありがとうございます。
チェーン会社によってもいろいろ差は出ると思いますが、やはり残留アルカリ⇒オイルを分解⇒油分が足りなくてクラックや錆・・・という感じなんでしょうかね。
サンポールで錆び取りも聞きますが、その手間は時間の無駄というか、チェーンを交換したほうがいいと思うんですよね。
こんな記事を見つけました。https://ameblo.jp/fortunebike/entry-11930002150.html
やはり問題はご推察の通り残留アルカリ⇒オイルを分解⇒油分が足りなくてクラックや錆がメインでしょう。しかし、水酸化ナトリウムを使った洗浄剤の場合、水分が飛んでいくと残留物のPH値が13を超えてしまい、アルカリ脆化する可能性があります。例の割れたチェーンって下手したらパイプクリーナー使ったかもしれません。あれは水酸化ナトリウムベースなので危ないです。
コメントありがとうございます。
やはりそうですよね。
水酸化トリウムですか。
成分表示もみていないといけないわけですが、難しいのは水で洗ったとしても残留成分があるかどうかは確かめづらいということになるかと。
他のアルカリ基剤であればPH11前後になるので、残留してもアルカリ脆化のリスクは少ないです。
オイルの分解に関しては、ひたすら濯ぐしかないですね。酸で中和する方法もありますが、酸性方向に傾き過ぎればそれはそれで、やるとしたらクエン酸水溶液ですすいで、中和かな。リトマス試験紙でPH確認して、PH7になったら残りは水ですすぐ。
SDSが発行されていれば、内容物がだいたい把握できるのですが、日本ではコンシューマ向け商品にはSDSの発行義務がないのでねー
ちなみに業務用 マジックリンのSDSです
https://pro.kao.com/content/dam/sites/kao/pro-kao-com/jp/ja/products/sds/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3%20%20%E6%A5%AD%E5%8B%99%E7%94%A8_sds.pdf
ちなみにですが、最近の食器洗剤や洗濯洗剤もアルカリ性です。食器洗剤には水切れや油の再付着防止のためにシリコンが含まれているものもあるので注意してください。
コメントありがとうございます。
酸で中和というのも理屈的にはそうなるんでしょうけど、さらにリトマス試験紙で検査してとなると、そもそもアルカリ洗剤を避けたほうが早い気がします。
食器用洗剤もなんですね。
そうなると中性と謳ってある洗剤を選ぶのがベストなんでしょうけど、私自身はディグリーザー使ってます。
残留アルカリのオイル分解についても、和泉チエン様が言うにはしっかり水荒らししていたとユーザーが報告しているケースらしいので、結局のところしっかりというのがどれくらいなのか?というところではリトマス試験紙でチェックするしかないとも言えるのですが、そこまでするならもうちょっと気を遣わない洗剤を選んだほうがいいんでしょうね。
大変勉強になりました。
ありがとうございます。
こちらこそ、長々とすいませんでした。最後にディグリーザーにもアルカリのものはありますし、水道水も弱アルカリに振られていることが多いので、ありまり気にせず。水酸化トリウムが使われているものは避けて、よく水で濯げば良いのではないでしょうか
いえいえ、いろいろありがとうございます。
大変勉強になりました。
また何かありましたらよろしくお願いいたします。