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判例。。。その判例に価値を感じます?

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何度か「民事の判例は意味合いが変わるから刑事の判例で」とお伝えしたんだけどなあ。

判例

まず絶対に出すだろうなと思っていたけど、神戸地裁の判例。
こちらは民事です。

 

「たぶんこの現場、自転車横断帯ある」と勝手な憶測を加えていらっしゃるようですが、事実認定にないことを勝手に加えるのは、判例を読む上で絶対にしてはいけないこと。
この時点で終わってます。

 

道路交通法の義務としては、38条には「横断歩道を横断する自転車」が含まれていませんが、民事責任はかなり広い範囲の注意義務を分担するため、横断歩道を横断する自転車に衝突した場合でも「道路交通法38条の」と書かれることはたまにあります。
道路交通法38条の概念を流用みたいなイメージ。
だからこういう判例が普通にあるのね。

 

判例、ちょっと見直し。
先日も書いた件。 ご指摘頂いたので見直しをしてますが、確かに終盤力尽きて流し読みした判例については、読み方間違えていたものがありました。 本当にすみません。 こちらで挙げた、東京地裁の判例についても、ちょっと意味合いが違うため番外編に移動し...

 

以前このような判例を紹介していますが、

 

自転車に対し、27条【追いつかれた車両の譲る義務】を認めた判例。
堅苦しい話が続いていますが、一つの参考になるかと思いまして。 自転車の場合、道路交通法27条の【追いつかれた車両の義務】は適用外です。 これは刑事事件として取り締ま利される対象ではないというだけで、民事では認めた判例もあります。 事例 判例...

 

なぜ自転車には適用されない27条を認めているかというと、双方ともに27条を主張しているから。
以前も書いたと思いますが、仮に自転車側が「27条は自転車には適用されない」とだけ反論すると、あんまり意味がありません。
27条は自転車に適用されないことを判示された上で、事故回避義務(注意義務)として同様のことを指摘されるのがオチ。
そういう意味ではこれも同じです。

 

そういやこの判例について。
だいぶ前に、車道を進行していたロードバイクと、歩道から逆走斜め横断開始した自転車の衝突事故の判例を挙げたと思います。 なんとなく言いたい意味はわかります。 36条4項を否定しながら36条4項 36条4項は、おっしゃるように、交差点付近を横断...

 

36条4項は交差点の直近を横断する歩行者に対する注意義務を課してますが、判決文にもあるように、事実上全く同じ注意義務を自転車に対して認定している。
こういうのも、裁判官によってはダイレクトに「道路交通法36条4項により」とか書いても何ら不思議ではない。

 

他にもこちらで紹介した平成27年7月29日 大阪地裁。

 

横断歩道の自転車通行と、38条の関係性。
こちらにまとめ直しました。 以後、追加は下記にしていきます。 先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いたように、横断歩道=歩行者のためのもの、自転車横断帯=自転車のものなので、基本的には横断歩道を通行する自転車に対しては適用外です...

 

見たところ、双方の主張をみても38条がどうのこうのとあるようには見えませんが、横断歩道を横断する自転車に対し38条1項後段の義務を怠ったみたいに判示されてます。

 

民事の場合、純粋な道路交通法の概念とはズレが出ること自体は珍しくもない話は過去散々書いてきたと思う。
犯罪の成否を争っているわけじゃないので、法解釈が広くなるのよ。
横断歩道を横断する自転車に対して衝突した場合、道路交通法としては安全運転義務違反というならわかるけど、平気で「38条1項後段の義務により一時停止すべきだった」とか判示されるので。
事故った以上は民事責任を負うから、安全運転義務違反だろうと、横断歩行者妨害だろうと、どちらにせよ過失はあるからあんまり関係ない。

 

だから民事はやめてねと書いたまで。
道路交通法は刑法なので。
反則制度によって「犯罪感」が薄れているように思うけど、刑法の一部ですから。
民事は法律解釈上、無意味な判例も多い。

 

さて話は戻り神戸地裁の判例。

この人、なんで判決年月日を書かないのか知らんけど、第三者が検証できるように裁判所と判決年月日を書くのは大人のマナーですよ。
「判例がある」というのはある種のパワーワードになりかねないので、第三者が判例全文を見て検証できるようにするのが当たり前。

 


※イラストと事故は関係ありません。

 

この判例は信号機の色に争いはありますが、横断歩道を横断した自転車の事故です。

また、車両は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者又は自転車があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない(同法38条1項)。そして、同条2項との対比において、進行方向の信号の色が青色であることは右注意義務に影響を及ぼさないことは明らかである

 

すなわち、信号機により交通整理の行われている交差点で、歩行者又は自転車が赤信号で横断を開始し、車両が青信号にしたがって交差点に進入したために交通事故が発生した場合でも、車両の直前に歩行者又は自転車が急に飛び出してきたなどの特段の事情のない限り、歩行者であれば、歩行者の過失の割合を70パーセント、車両の運転者の過失の割合を30パーセントとする評価を基本として、当該事故の具体的事情に応じて過失相殺の割合を認定するのが相当であり、車両の運転者に民事上の過失がまったくないとは到底いえないと解するのが相当である。

 

神戸地裁 平成9年10月28日

判示の理由が雑としか思えないですけど。

 

①「2項との対比」で断じている

 

②「歩行者であれば」としているが、本件事故は横断歩道を横断する自転車の事故。
歩行者が信号無視した場合の基本的な過失割合を引き出して「歩行者のときでも赤信号無視で無過失にならないだろ」という理由付けから38条の義務について判示している

 

③「民事上の過失」が全くないとはいえないとの内容

 

①同条2項との対比において、進行方向の信号の色が青色であることは右注意義務に影響を及ぼさないことは明らかである

 

→法律解釈上、1項の「横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合」には横断歩道が赤信号の状態で車両が横断歩道を通過することが明らかな場合」を含むわけで、信号の色が注意義務に影響しないというのはさすがに無能。

②急に飛び出してきたなどの特段の事情のない限り、歩行者であれば、歩行者の過失の割合を70パーセント、車両の運転者の過失の割合を30パーセントとする評価を基本として、当該事故の具体的事情に応じて過失相殺の割合を認定するのが相当であり、車両の運転者に民事上の過失がまったくないとは到底いえないと解するのが相当である。

 

→38条の義務以外にも一般的注意義務はあるわけで、同種事故の歩行者の過失割合の基準は、38条が赤信号の横断歩道に適用される根拠にはならない。

この判例では、「進行方向の信号の色が青色であることは右注意義務に影響を及ぼさないことは明らか」とし、右注意義務とは38条1項を指しているのは明らかなこと。

 

かなり大胆かつ斬新な説示をしていますが、この説を採用するならば、進行方向が青、直交する横断歩道が赤信号の場合でも「横断しようとする歩行者がいないことが明らか」と言えるまでは常に減速徐行していただくことになります。
しかも判例のケースは「急」と言える距離。

本件交差点内に進入して前方やや左約10.3メートルの地点に本件交差点を北へ横断しようとする原告の自転車を認め、直ちに急制動の措置を講じたが及ばず、被告車両の前面と原告及びその自転車とが衝突した。なお、右衝突地点は、原告が横断を開始してから約1.5メートル北側の地点であった。

※結局、車が赤信号突入と認定されましたが。

車道の青信号は、38条の注意義務に影響を及ぼさないらしいので。
赤信号の横断歩道前に横断待ちの人がいたら、一時停止せざるを得なくなりますね。

それこそ一時停止して「あなたは信号を守りますか?守りませんか?」と聞くくらいの慎重さが求められると言っても過言ではないし、赤信号で横断待ちの歩行者を妨げたと言われてもおかしくはない。
それが本当に正しいことですかね。

 

この判例を引用するということは、そういう意味です。
なにせ、信号機の色は38条1項の注意義務に影響しないそうですから。
だから民事の判例はやめとけと繰り返し言ったまで。

 

過失運転致死傷が無罪になったとしても、民事上の過失まで消えるわけではないことは誰でも知っていることで、判決にある理由付けをみれはわかるように「道路交通法38条の概念を流用」しているだけのこと。
赤信号無視した歩行者の場合でも過失があるだろ!という根拠を出しているけど、過失の根拠は38条だけじゃないし、優者危険負担の原則など考慮すれば赤信号無視の歩行者と事故が起きたとしても、民事上は車にも過失がつくのが慣例。
それの根拠が38条ではないし。
「民事上の過失」と書いていることからみても、法律解釈としては意味がない判示かと。

 

道路交通法の解釈としては、「横断歩道が赤信号の場合を除外」してますし「横断歩道を横断する自転車」も除外してますから、いろんな意味でツッコミどころ満載の判例です。

 

もう、この時点でおかしいですよね笑。

車両は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者又は自転車があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない(同法38条1項)

自転車横断帯が抜けているか、自転車が余計かになりますが、事実認定は「横断歩道」ですから、自転車が含まれてる時点でお察しの判例です。

 

こんなもんを引っ張り出してくるのは、さすがに無いわ笑。
「民事上の過失」というところで、もう少し意味を考えて欲しいけど、わからないの?

 

例えばさ、福岡高裁平成30年1月18日判決。

しかし道路交通法は歩行者と軽車両である自転車を明確に区別しており、自転車を押して歩いている者は、歩行者とみなして歩行者と同様の保護を与えている。(同法2条3項)のに対し、自転車の運転者に対しては歩行者に準ずるような特別な扱いはしておらず、同法が自転車に乗って横断歩道を通行することを禁止しているとまでは解せないものの、横断歩道を自転車に乗って横断する場合と自転車を押して徒歩で横断する場合とでは道路交通法上の要保護性には明らかな差があるというべきである。
また、道路交通法38条1項は、自転車については、自転車横断帯(自転車の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号の2)を横断している場合に自転車を優先することを規定したものであって、横断歩道(歩行者の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号)を横断している場合にまで自転車に優先することを規定しているとまでは解されずむしろ、本件の場合、Aは、優先道路である本件道路進行車両の進行妨害禁止義務を負う(同法36条2項)ことからすると、過失相殺の判断にあたっては、原判決判示のとおり、自転車が横断歩道上を通行する際は、車両等が他の歩行者と同様に注意を向けてくれるものと期待されることが通常であることの限度で考慮するのが相当である。

 

平成30年1月18日 福岡高裁

最後に「自転車が横断歩道上を通行する際は、車両等が他の歩行者と同様に注意を向けてくれるものと期待されることが通常であることの限度で考慮するのが相当」とあるけど、道路交通法上の優先義務の対象ではなくても、道路交通法の優先規定のみでは民事賠償責任を完全否定はできないのね。
理由は、38条の義務がなくても事故回避義務はあるから。
判例によっては、イチイチ「道路交通法38条が横断歩道を横断する自転車に適用されないこと」を明確にせずに、過失の根拠としてそのまま流用する。

 

道路交通法の義務と、民事賠償責任はまた別。
だから民事の場合、道路交通法を厳格に解釈していないものもあるから、引用するときは要注意なんだよなあ。
法律解釈を誤っている判例が、この人にとっては根拠とみなすらしい。

 

次いで名古屋地裁の判例。

こちらも民事です。
まずさ、「残存歩行者」とウソをつくのはやめましょう。
残存歩行者というのは、青信号で適法に横断開始したけど渡り切れなかったケース(札幌高裁)。
この件は赤信号になってから横断開始したとなっているので、不法横断歩行者。
なんでこの人、ちょいちょいウソを書くのか意味がわからない。

1  証拠によれば、次の事実が認められる。

 

(一) 被告車が走行した東西道路は、片側二車線で、交差点の手前において、右折通行帯が加わり片側三車線となっており、最高速度は毎時40キロメートルに規制されていた。

 

(二) 被告は、東西道路西進車線の歩道寄りの第一通行帯を、先行する路線バスに続いて走行し、本件交差点手前において同バスが対面信号の赤色の表示に従って停止したため、被告も同バスの後の別紙図面〈1〉の地点に被告車を停止させた。

 

(三) その後、東西道路の対面信号の表示が青色に変わり、路線バスは発進して同交差点を左折して行き、被告も被告車を発進させて第一通行帯から本件交差点に進入したが、東西道路西進車線の第二通行帯は、前方約500メートルの第一通行帯上で行われていた道路工事を避けて第二通行帯に移動する車両のために渋滞していて、最後部の車両が別紙図面のとおり本件交差点内に居残っているような状況であったので、被告は、暫時第一通行帯を走行した上で第二通行帯に進入する積もりで、発進後そのまま直進した。

 

(四) 被告は、被告車を時速約40キロメートルまで加速した後、同図面〈2〉の地点を通過した地点付近でアクセルペダルから足を離し、惰性で被告車を走行させたが、同図面〈3〉の地点まで進行した時、被告車の前部左角付近を被害者に衝突させた。

 

(五) 被告は、本件交差点に進入した後、前方を見ながら被告車を運転していたが、前方右側に対する見通しは前記渋滞車両のために良好とはいえず、被害者と衝突するまで、同人の存在に気付かなかった。

 

しかし、被告が前記走行中の被告車から横断歩道の状況に十全の注意を払っていれば、別紙図面〈P〉の地点で同図面〈P〉’の地点の被害者を発見することが可能であった。

 

(六) 被害者は、本件交差点西側の東西道路横断歩道を、対面の歩行者用信号が赤色を表示していたにもかかわらず、友人と手をつなぎながら南から北に向かって横断し始め、中央付近まで進行した時、東西道路東進車線上の車両が発進し始め、被害者らは前進することができなくなったが、その時、横断歩道北側の歩道上で東西道路を南方へ横断すべく信号待ちをしていた婦人が、被害者らに対し停止するように呼びかけたところ、被害者は、突然友人とつないでいた手を振りほどき反転して南方に向かって小走りに進み始め、西進車線上に進出して被告車と衝突した。

 

2  右のとおり、本件事故は、被害者が、横断歩道用の対面信号が赤色を表示していたにもかかわらず、これを無視して横断歩道上を歩行したために惹起されたものであり、しかも、被害者の前記行動に照らせば、被害者は、横断歩道を南方に引き返すに際し、西進車線を走行する車両の動向にほとんど注意を払っていなかったものと推認され、被害者には、本件事故の発生につき軽微とはいえない過失があったものといわなければならない。

 

しかし、被告も、対面信号が青色を表示していたからといって、そのことの故に横断歩道上の歩行者に対する注意義務を免除されるものではなく横断歩道に接近する場合には、横断歩道を通過する際に進路の前方を横断しようとする歩行者等がないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、かつ、横断歩道を横断しようとする歩行者等があるときは、横断歩道の直前で一時停止し、歩行者等の進行を妨げないようにしなければならないのであり(道路交通法38条1項参照)、被告車から前方右側に対する見通しは前記渋滞車両のために不良であり、横断歩道上の歩行者の状況は明らかでなかったのであるから、被告は、横断歩道の直前で停止することができる速度で進行しなければならず、かつ、前記〈P〉地点で被害者を発見し、横断歩道の直前で一時停止しなければならなかったものというべきである。

 

名古屋地裁 平成9年12月24日

こういうのもさ、結局のところ双方の主張の詳細がわからないので、あんまり意味がないのよ。
双方の主張で書いてあるのはたったこれだけ。

二  争点

1  被告の過失の存否及び程度

 

原告らは、被告には前方不注視、制限速度違反等の過失があった旨主張し、被告は、これを争う。

横断歩道が赤信号、「横断歩道上の歩行者に対する注意義務を免除されるものではなく」という意味などを考えれば、単に一般的注意義務に関する話について38条と書いただけなんだろうなと予想できるけど、どちらにせよ詳細が不明だから普通は「法律解釈議論」にこの判例は出さないよね笑。
車道の信号が青、横断歩道が赤であっても、38条に基づく高度な注意義務がないだけで、一般的注意義務まで消すことはない。
一般的注意義務というのは、前をちゃんと見て運転するとか、歩道の様子に違和感を感じたら警戒するとか。
交差点なら36条4項も関係する。
38条の義務がないことは、事故を起こしていい理由にはならないから。

 

事故現場を見る限り、現在の状況は中央分離帯があり、交通島みたいな感じに南北の横断歩道が分離されているように見えるけど、当時の状況と同じなのかはわからないのでやめときます。

 

民事ってさ、事故が起きた以上は原則として、賠償責任が完全になくなるわけではないので、こういうよくわからない判示になることは普通にある。

 

だから判示の意味があるのかないのかを精査した上で、道路交通法の解釈を厳格に示したのかを判断する必要があるけど、あなたの根拠はこの判例2つなの?

以前も書いたけど、この判例(民事)。

38条1項と2項の違反と判決には書いてあるけど、2項の違反は道路交通法上は成立しない。
けど2項の概念からすると、意味はなんとなくわかる。
こういうことが普通にあるのが民事ね。

 

この判例を「赤信号の横断歩道に38条の義務がある根拠」というならかなり無理があるとしか思わないけど、トンデモ判決の一部なのでは?
無理があるというか、注意義務(事故回避義務)と38条を混同している無意味な判例。
「進行方向の信号の色が青色であることは右注意義務に影響を及ぼさないことは明らか」だそうですが、青信号で直進する車は、今後大変ですな。
横断歩道が赤信号だろうと、赤信号無視して横断する歩行者を予見して減速徐行する義務があるという判例ですから。

 

無罪になること(刑事責任)と、民事責任は意味が違うので。
だから民事はやめとけと書いたけど、判例出したくてたまらない気持ちだったのでしょうね笑。

常識的に

まずは神戸地裁の判例。
「進行方向の信号の色が青色であることは右注意義務に影響を及ぼさないことは明らか」と説示してますが、この大胆かつ斬新な解釈は本当に正しいですか?
右注意義務=道路交通法38条1項なのは言うまでもなく。

 

判示の理由も、
・2項との対比
・歩行者事故の場合、過失割合の基本線で車にも過失がつくから

 

こんな理由ですよ?
この説示が正しいようなら、普通に走っている車はほぼ違反ですから、信号にとらわれることなくきちんと減速徐行義務を果たすように啓蒙しないとまずいですよ。
「横断しようとする歩行者がないことが明らか」と言えるまではしっかり義務を果たさないと。
信号の色は関係ありませんから。

 

次に名古屋地裁の判例。
信号が赤になってから横断開始して、しかも突如逆向きに駆け出したようですが、道路交通法38条の違反が成立するとでも?
義務があるなら義務違反(切符)が成立しますよね。
前方注視義務と事故回避義務があるというなら当然だけど、これのどこに38条の優先義務が発生し、38条違反が成立するの?

 

だから民事の判例は、道路交通法解釈に馴染まないものがそこそこあるの。
道路交通法の義務の話から、民事責任に話をズラしてきたけどさ、さすがに無いわ。
どちらの事故を避けるにも、車道が青、横断歩道が赤であっても横断歩道に接近する場合には常に減速徐行義務が課されてない限り無理。
その辺の交差点を直進するパトカー見てみなよ。
減速徐行してるか?

 

名古屋地裁の判例にしても単なる前方不注視ならまだわかるけど、これを38条の義務違反というならば、やはり今後は車道が青、横断歩道が赤であっても、「横断しようとする歩行者がいないことが明らか」と言えるまでは、どんな交差点であろうと減速徐行せざるを得なくなりますな。

 

バッカじゃねーのと思ったけど、議論が成立しない理由がよくわかりました。

 

なお横断歩道を横断する自転車について38条の優先権がないことは、東京高裁平成22年5月25日(過失運転致死傷)や東京高裁昭和56年5月10日(業務上過失致死傷)で明らかにされてます。

 

でさ、先日も執務資料の記述についてツッコミされましたよね。

 

まだわかんないの?
この人はまだわかんないのか? とっくの昔に説明済みだわ。 前の記事に書いた内容をそのまま引用しますね。 例えばさ、「歩行者等に向けられた信号機の信号が赤色を表示しており、その赤色の現示時間中に車両等が横断歩道等を通過し終わることが明らかな場...

 

当該車両等の進路前方の横断歩道等及びその周辺が十分見渡せる場合で、横断しようとする歩行者等がいないことが一見明瞭な場合、歩行者等に向けられた信号機又は警察官等の手信号等が赤色の灯火であって、そのため当該横断歩道等を横断しようとする歩行者等がいないことが明らかに認められ、しかも当該車両等がその間に横断歩道等を通過することができることが明らかな場合等を除くという意味である。したがって、右のような場合には、車両等には、本項前段の義務は生じないことになる。

 

執務資料道路交通法解説(2018)、p368、野下文生、東京法令出版

<信号機が赤であって、「そのため」横断歩道を横断しようとする歩行者がいないことが明らかに認められ>となってますが、「そのため」ですわ。

 

なのでここで説明されている「横断歩道を横断しようとする歩行者がいないことが明らかに認められ」は実際にいるかどうかの話を指してない。

 

A 「信号機が赤であって」

 

B 「横断歩道を横断しようとする歩行者がいないことが明らかに認められ」

 

AとBが別要件でそれぞれ必要なら、横断歩道が赤信号でも結局は「横断しようとする歩行者がいないことが明らか」になるまでは減速徐行するしかなくなるだろ。
いないことが明らかになるまで減速徐行義務が解除されなくなるのだから。
別々に捉えたら何が起きるか、考えないのかな?

 

民事の判例って、結果論で語っているだけみたいなのは結構ある。
最終的に事故った以上は、その前段階に注意義務違反があったはずだ!みたいな思考があるとしか思えないけど、刑事のように厳格に立証されるわけじゃない。

なお、古い書籍はこうなってます。

「その進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合」とは、横断歩道およびその周辺が十分見渡すことができる場合であって、横断歩道付近に横断しようとする歩行者が見あたらないとき、あるいは信号機により交通整理が行われている場合において歩行者に向けられた信号が赤であって、その現示時間中に車両等が横断歩道を通過することが明らかな場合のことをいう(小池康雄「改正道路交通法の逐条解説」警察研究43巻6号65頁、和田保「横断歩行者に対する保護」判タ284号195頁)。

 

詳解道路交通法、p98

判例タイムズ284号は私も持ってますが、裁判官が道路交通法の解説をしている書籍。

 

民事の判例を持ち出すとはさすがにビックリしました。
判例の中身を見れば全く意味がない判示なのは理解できると思うけど。

 

民事の判例を2つ挙げておきます。
一つ目は、赤信号で自転車横断帯を横断した自転車と、左折車が衝突した事故(平成25年6月28日名古屋地裁)。
自転車側の主張には「たとえ歩行者用信号機が赤色灯火であったとしても、車両は横断歩道等の手前で一時停止できる速度で徐行する義務がある(道路交通法38条)」とあります。
なお、自転車の主張は「青点滅進入」。

 

これについて裁判所は全く相手にせず、シンプルにこれだけ。

原告は歩行者用信号機が赤色灯火で横断を開始しており、原因の過半は原告の過失にあるというべきである。ただし、被告にも軽度の左方不注視の過失が認められるので、過失割合は、原告70対被告30とするのが相当である。

 

平成25年6月28日 名古屋地裁

38条について主張する部分は全く判示していませんが、被告の過失は「軽度」の左方不注視だそうな。

 

2つ目の同種判例は平成28年3月24日神戸地裁にありますが、歩行者が横断歩道を青点滅(歩行者は、道路の横断を始めてはならず)で横断し、右折車と衝突した事故。
歩行者側は車に対し38条1項の義務違反と主張していますが、なぜか裁判所はこの件についての判示をしていません。

原告は、道路の横断を始めてはならないとされる青色点滅(道路交通法施行令2条1項、4項)で横断を開始しており、過失がある。そして、本件事故の態様、当事者の過失の内容、本件事故は日没後すなわち夜間に発生していること、原告が横断していた東西道路の幅員は12.9mであること、被告は右折に際し、横断歩道上の歩行者の有無の確認を行っていないことなどの事情を併せ考えると、原告に35%の過失相殺を認めるのが相当である。

 

平成28年3月24日 神戸地裁

歩行者側の「38条1項の過失が」という主張についてはなぜかスルーしている二件です。
違反なら違反と、ビシッと判示すればいいような気もするけど、何も判示してないなら何も言えませんな。

 

管理人
管理人
まあ、赤信号無視なら原則として38条の義務がないというのが常識ですが。

民事の判例持ち出すと、意味不明な判例も普通にあるわけで、話が変わるのね。
道路交通法の義務があるのか?という議論から、民事の責任を負うのかについての話になってしまい、「進行方向の信号の色が青色であることは右注意義務に影響を及ぼさないことは明らか」とか斬新な考え方を披露している判例とか持ち出すわけ。

 

斬新過ぎて話にならないでしょ。
道路交通法38条1項の注意義務は信号機の色に関係ないんだとか斬新過ぎて、じゃあみんな横断歩道の手前は減速徐行せざるを得なくなるけど?と意味がわからない結果に陥る。

 

意味がある判例と意味がない判例は分けて引用するのは議論の大前提。
ガッカリしました。
アホ過ぎ。
まあ、信号がない横断歩道ですら歩行者を守れていないのに、赤信号無視の横断歩行者まで優先しろということ自体、何のために信号機があるのかさっぱりわからん。

急と急じゃない境目、どこなのよ。
判例によるとこの人自身が語っていた、「横断歩道近くでの赤信号無視飛び出しなら義務はない説」すら否定しちゃっているけど、どーするのかね。
この人が挙げた判例については、「至近距離での飛び出し」。
これを予見し青信号でも横断歩道が見えたら減速徐行しろというトンデモ判決にしか見えませんけど。
道路交通法上、そんな義務はありません。
だから民事はやめとけと書いたまで。
けど、この人が珍論を掲げる理由は、挙げた判例で理解できました笑。

 

この人が挙げた判例は法律解釈を間違っている判例で基本的に無意味なわけで、横断歩道が赤信号であれば38条の義務はありません。
事故回避義務は別です。
優先規定(38条)と事故回避義務は別問題。

一応、まともに根拠を示している判例を再度挙げておきますね。

検察官は、その趣旨は必ずしも判然としないものの、論告において、被告人又は被告人車両には、道路交通法38条1項が適用されることを前提として、先に述べた以上に特に高度の注意義務が課されるかのような主張をしているため、この点について念のため付言しておく。
道路交通法38条1項は、「当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合」を除外しているところ、この「歩行者等が無いことが明らかな場合」には、歩行者等に向けられた信号機の信号が赤色を表示しており、その赤色の現示時間中に車両等が横断歩道等を通過し終わることが明らかな場合が含まれると解される。本件における被告人車両は、この除外事由に該当するといえるから、道路交通法38条1項が適用はない。仮に、検察官の主張するように、被告人車両について道路交通法38条1項が適用されるとしたならば、信号機により交通整理が行われている交差点において、自車の対面信号機が青色を表示しており、横断歩道等の歩行者等に向けられた信号機の信号が赤色を表示している場合であっても、特にその道路幅が広ければ広いほど、自動車の運転者は、常に横断歩道等の直前で停止できるような速度、すなわち、横断歩道等に接近しながら徐々に速度を落とし、横断歩道等の至近のところでは徐行に近い状態の速度で進行しなければならないことになるが、このことが結論において不合理であることは明らかである

 

徳島地裁 令和2年1月22日

<追記>
またテキトーなことを語っていますが、この人は法律解釈を理解する気があるとは思えない。

 

ちゃんと読みましょうね。
頭悪すぎ。 「事故当時」あったのかどうかだろ。 事故当時も同じだったのですか? うちが取り上げている他の判例でもそうだけど、古い判例ほど当時の状況と同じかどうかの整合性が確認できないから、ほとんどの判例ではあえて現在の状況を出さないのね。 ...

 





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