電動キックボードについて反対の声が「今さら」たくさん挙がってますよね。
警察庁の有識者会議が中間報告を発表したのは約1年前。
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有識者会議の内容とほぼ同じ
あらためて一年前に公表された有識者会議の内容を見ると、改正道路交通法で可決された内容は速度が15キロ→20キロになった以外は有識者会議で発表された内容そのまんまです。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/mobility/interim-houkoku.pdf
64ページ以下
3.2.1 電動キックボードや一部の搭乗型移動支援ロボット等(小型低速車)
(自転車乗用者の乗車用ヘルメットを含む。)
電動キックボードは、一般的な二輪の原動機付自転車等と同じく、原動機を用いて運転するものであり、ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する自転車とは、その性質を異にするものである。
しかしながら、最高速度が一般的な自転車利用者の速度と同程度(時速15km)に抑えられており、かつ、その車体の大きさも普通自転車と同等なものも実用化されている。そこで、こうした電動キックボードについては、そもそもの自転車の交通ルールについても周知徹底を図りつつ、基本的には、通行方法等について、自転車と類似の交通ルールとするのが適当である。
また、搭乗型移動支援ロボット等の新たなモビリティであって、最高速度や、その車体の大きさが一定以下のものも含め「小型低速車」として位置付け、電動キックボードと同一の交通ルールを適用することとするのが適当である。
もっとも、これらの小型低速車は、人の力を用いずとも一定の速度を出すことができることを踏まえると、下記の点については、自転車と道路交通法上の取扱いを異にするべきである。
自転車と類似の交通ルールを適用することや、法区分は自転車と差をつけて新設するとしていました。
その結果、改正道路交通法では「特定小型原動機付自転車」を創設。
① 運転することができる者
自転車については、その運転することができる者について、特段の制限は設けられていない。
一方、小型低速車は、原動機が作動すれば、本人の意思にかかわらず容易に一定の速度に達し得ることを踏まえると、危険性が必ずしも自転車と同程度であるとは言えず、自転車と同様に、運転することができる者について制限を加えないこととすることは不適当である。
この点、小型低速車の多くは、現行の道路交通法においては原動機付自転車に該当することとなり、運転するためには原付免許又はその上位免許を受けている必要がある。
警察庁においては、運転者の適格性の担保の在り方について検討するため、原付免許等を有している者と有していない者との間で、交通の安全の観点から、電動キックボードの運転行動を比較する実験が行われ、両者の間で、一部の項目については大きな差が見られたものの、これらはもっぱら交通ルールに関する知識の差が要因となっているものと考えられ、全体的に見れば大きな差はないという結論が出された。
これを踏まえると、最高速度が一般的な自転車利用者の速度と同程度に抑えられている小型低速車を運転するに当たっては、下記のように一定の安全教育を受けることで十分であり、何らかの運転免許を受けている必要まではないのではないかと考えられる。
一方、一部の委員からは、児童や幼児等が運転するのは危険ではないかとの意見が出され、また、電動キックボードに係る海外の法制度を見ても、多くの国において、一定の年齢制限を設けていることが見受けられる。
そこで、小型低速車を運転することができる者の範囲について、運転者に、運転免許を受けていることは求めないこととするものの、一定の年齢に達していることを求めるべきである。この点、現行の原付免許等は、16歳に達していなければ受けることができないこととされており、小型低速車を運転する者についても同様に、16歳程度に達していなければならないこととすることが適当である。
また、一部の委員からは、運転免許を受けていることは求めないこととしても、販売やシェアリング事業を行う事業者による利用者への交通安全教育が行われるべきではないかとの意見が出された。この点、警察庁が行った実験においても、二段階右折の方法等については運転免許を受けていない者の理解が乏しいことが明らかになったことから、事業者による交通安全教育を行うことを少なくとも努力義務としつつ、その具体的な内容について、引き続き検討する。
自転車と危険度が同じとは言えないけど、免許までは不要ということ、16歳以上がいいのではないか?という意見。
さらに事業者による交通安全教育についても有識者会議では提言されていますが、改正道路交通法では免許不要、16歳以上、事業者による交通安全教育について努力義務を課す規定が組み込まれてます。
② 通行することができる場所
小型低速車に該当する車両は、現行法では車道しか通行することができないとされているものの、その最高速度や、車体の大きさを踏まえると、現行法において軽車両が通行することができる路側帯のほか、3.1.2で述べたとおり、普通自転車専用通行帯及び自転車道についても、普通自転車と同様に通行しても差し支えないと考えられる。
一方で、歩道の通行については、本有識者検討会においても賛否両論であったが、「歩道は、歩行者の通行の安全を確保するための空間であり、車両は高速で通行してはならない」という点では一致していた。また、電動キックボードに係る海外の法制度を見ても、多くの国において歩道における通行は禁止されている。
これらを踏まえ、原則として、小型低速車は、歩道を通行することは不適当であると考える。
一方、3.1.2でも述べたとおり、電動のモビリティは最高速度を制限することが容易であることから、小型低速車について、3.2.2で検討する歩道通行車と同様の車体の大きさであれば、歩道通行車と同様の最高速度に制限し、その旨を表示した上で、歩道を通行することを認める方向で検討することとし、速度制限の方法や表示の在り方について、歩道の安全性を損なわないよう、引き続き検討する。この点、地面を蹴ることにより所定以上の速度を出すことができてしまうこととなるのであれば、ペダル付原動機付自転車と同様の状況が懸念されることに留意する。
有識者会議では、自転車の走行位置で問題がないことから、自転車レーンや自転車道を通行可能にすべきとされています。
歩道通行は好ましくないとされてますが、いわゆる「モビチェン」と同様に速度制限や歩道通行モードにした場合には、歩道通行を認める方向となっています。
改正道路交通法では、特定電動キックボードについては自転車レーンや自転車道を通行可能にしてますし、歩道通行モード(時速6キロモード)にしたことが外見上明らかなら、「自転車通行可の歩道限定」で歩道通行を容認している。
全部、有識者会議の内容と同じです。
③ 乗車用ヘルメット(自転車を含む。)
自転車や、原動機付自転車、普通自動二輪車、大型自動二輪車の乗用者が頭部を受傷する交通事故において、乗車用ヘルメットが致死率を大幅に減少させることができることは、統計上明らかであり、現行法上、原動機付自転車や自動二輪車の乗用者は、乗車用ヘルメットを着用することが義務付けられている。
一方で、自転車については、13歳未満の児童等を保護する責任を有する者の努力義務が定められているにとどまり、乗用者が一般に着用することが義務付けられていないことを踏まえると、小型低速車が自転車と同等の速度で、同様の場所を通行することとなるのであれば、その乗用者について、法的に着用することを義務付ける必要はないのではという意見も、事業者や一部の委員から出されたところであった。
この点、そもそも、自転車の乗用者についても、乗車用ヘルメットの着用が定着しておらず、また、交通事故情勢を踏まえると、自転車の乗用者について、更に乗車用ヘルメットの着用を促すことが必要ではないかと考えられる*1。
そこで、全ての年齢層の自転車の乗用者について、乗車用ヘルメットの着用を努力義務とするなどし、更なる着用促進を図っていくことが適当ではないかと考える。その際、小型低速車を自転車と同等の速度で、同様の場所を通行するものとするのであれば、小型低速車についても、自転車と同様にヘルメットの着用促進を図っていくことが適当である。
もっとも、今までは原動機付自転車等として、乗車用ヘルメットの着用が法的な義務であった小型低速車について、その義務を緩和することによる安全性への影響を検証するとともに、社会的な受容性も見極めることが必要であることから、今月から実施される予定である電動キックボードに係る新事業特例制度を活用した公道実証実験の実施結果を精査した上で検討する必要がある。
また、安全性という観点では、夜間の走行に際し、反射板やブレーキランプ機能を備えた尾灯を備えさせることで、交通事故に遭う危険性を下げるべきであるという意見も提示された。
このほか、小型低速車についても、原動機付自転車等と同様に車体の安全性を十分に確保する必要が認められ、本来認められている速度より速い速度で走行できるように改造されるといったことを防ぐためにも、検査や型式認定等、車体の安全性を判断する仕組みが必要であるとの意見が出された。これらについては、国土交通省と警察庁が連携して対処していく必要がある。
なお、小型低速車の基準となる速度について、一部の委員からは時速15kmから上げてもよいのではないかという意見が出されたが、運転免許を不要とするとともに、乗車用ヘルメットの着用を義務付けないことを踏まえると、適当ではないと考えられる。
ヘルメットについては、実証実験の結果を精査して検討すること、自転車については全年齢に努力義務を課すこととしています。
これらについては、改正道路交通法により努力義務になりましたので有識者会議の内容そのまんま。
唯一違う点は、時速15キロから上げることは「適当ではない」としていた点を20キロに改めたくらいですかね。
ただし、道路交通法の中で「時速20キロ」と規定しているようには見えず、施行令と施行規則でカバーするのだと思います。
ここが本決まりなのかはいろいろ見てもよくわかりません。
1年前から
見てわかるように一年前から有識者会議で提言された内容がほぼそのまんま改正道路交通法に組み込まれただけのこと。
けどわかってない人になると、「有識者会議の内容と違う!」とか騒ぎ出したり、デマレベルの妄言を吐き非難するわけで、ちょっと理解しがたい。
一歩間違うと人権侵害レベルのことを平然と語り出す人とかもいるけど、正直理解に苦しむ。
正当な批判ができない人の典型例。
いやー、本当に不思議だなと思うのは、一年前から提言された内容について、今さら反対すること。
反対の意思を示している人の中には一年前から声を挙げていた人もいるわけで。
今さら感が半端ない。
ついでにですが、シンガポールでは電動キックボードの歩道通行が突如禁止になりました。
車道は元々通行禁止で、いわゆる自転車道的な場所以外は通行できないことになりました。
2019年の話です。
その後、車両登録や免許制に切り替えしてます。
シンガポールの場合、歩道通行モードは「時速15キロ」で始めたことから事故多発。
日本は当たり前のように海外の事情を調査した上で「歩道は時速6キロ以下」、「自転車通行可の歩道のみ」に限定した改正道路交通法を可決。
「車道通行禁止&自転車専用道路は時速25キロ&歩道15キロ」のシンガポールさんと、「原則車道、歩道は時速6キロ以下、自転車通行可の歩道のみ可、自転車レーンや自転車道は通行可」の日本を同一視するのも、雑な検討じゃないかと思う。
まあ、反対したい人はこういう条件について見向きもしないで反対なわけですが、結果だけで評価するのか、中身を見て評価するのかでは全く意味が違う。
あとは歩道通行モードに切り替えない無法者の出現などは課題になるとは思うけど、「ランプの色で歩道通行モードが外見上明らか」、「ナンバープレートは必須」にすることに決まってます。
自賠責保険も必須になるので、無保険運行するとタイーホコースですし。
雑な比較検討してない?大丈夫?と心配になります。
見てりゃわかると思いますが、私自身は乗る気ゼロ、だけど法律を守る前提(=取り締まり強化)であればさほど不満はなく、反対のための反対みたいな無意味な批判をすることはありません。
最初からいろいろ調べて追ってきた立場からすると、各国で懸念された問題点をそれなりに広い挙げた結果の改正道路交通法だと思ってみているので。
実証実験したりについてもやや不十分感はあるけど、いきなり法律改正しなかったことは評価してます。
免許制だけは維持して欲しかったけど。
海外での事故多発についてもさ、そもそも存在しなかったに等しい電動キックボードが登場すれば、数字上上がるのは当たり前。
そんなん言ってたら自転車事故なんて毎年それなりの数が起きているけど、自転車廃止にするのか?
自転車は危ないし、車も危ないから滅亡させましょう!というならまだわからなくもないけど。
この問題、なんかおかしな方向に批判が進んでいる気がする。
中にはデマレベルの妄言を吐き非難する人もいるけど、時速15キロで歩道走らせて失敗したシンガポールと、時速6キロの日本を同一視して批判するのはさすがにマヌケなんじゃないかと思う。
まあ最終的には、ルールを守らない人が増えたときにどうなるかの話になるけど、これについては警察がガシガシ取り締まりするしかない。
けどホント不思議なんだよなあ。
一年前からほぼ同じ内容が公表されていたけど、ホンキで反対なら早く動かないと。
国会で可決された後に騒ぎ出すのは、お話にならない。
そういう意味で、だいぶ前から情報を記事にしていたんだけどね。
反対する人の意見は尊重されるべきだし、どういった状況なのかを知らないと反対の声すらあげられない。
だからお隣韓国の話とかも取り上げたりしたけど、
改正道路交通法が可決された後にこれを見て騒ぎ出すのは、さすがに遅い。
マイナス面も含めて正しく知った上で、判断して欲しかったけど。
今になってから「韓国ガー!」とか騒ぎ出したりするのは、無関心の結果なのでは?
最終的には民主主義ですから、白黒ハッキリすることになるわけですが、無関心による「結果」ですね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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