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自転車による優先道路進行妨害。

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以前、横断歩道を横断した自転車を「優先道路進行妨害(36条2項)」とした判例は紹介していますが、他に似たような判例を。

 

横断歩道を横断する自転車と進行妨害。
だいぶ前に書いたこちらの判例についてですが、ちょっとまとめ直しました。この中で、横断歩道を横断した自転車が優先道路の進行妨害をした(36条2項)と判示されているのがあります。なぜ進行妨害?判例は福岡高裁平成30年1月18日。一審の福岡地裁の...

 

自転車による優先道路進行妨害

判例は平成28年8月10日、名古屋地裁。
交差点の状況はこんな感じで、東西道路は優先道路。
南北道路は双方ともに一方通行で一時停止規制があります。

自転車は路側帯を通行し交差点手前で一時停止し降車。
そのまま南北道路の歩道に入ろうとしており、左右を確認して優先道路の車両がまだ遠いと判断して進行したものの、事故に至った判例です。

双方の主張です。
原告が自転車、被告が車です。

<自転車の主張>
○車の前方注視義務違反
○一時停止し降りたことから歩行者とみなし、車が38条1項後段の一時停止義務違反
○南北道路の左側端を通行し対面道路の歩道に入ろうとしたのだから、横断歩道上と同視すべき
<車の主張>
○車が優先道路で自転車側には一時停止規制もあり、自転車が優先道路の進行妨害をした(36条2項)
○自転車を発見した時点では跨がっていたのだから、歩行者が道路を横断しようとする場合を前提にする道路交通法38条の適用はない
○横断歩道から約6.3m離れた位置なので、横断歩道上を横断したとみなすべきではない

以下が裁判所の判示。

被告は、被告車両を運転して交差点を進行するに当たり、交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行すべきであり(道路交通法36条2項)、このことは本件道路が優先道路であっても変わらないところ、被告においては前方注視を怠り本件事故を惹起した過失が認められる。
他方、車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下「横断歩道等」という。)に接近する場合において、当該横断歩道等を通過する際に、当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない(道路交通法38条1項)とされているものの、原告自身が述べるところによっても、原告は本件道路を横断歩道を利用して横断する予定はなく、南北道路東端の路側帯から、同じく南北道路東端の歩道へまっすぐ横断する予定であったのであり、その進路では、横断歩道から離れる形になる上、本件事故直前、横断歩道に向かう本件道路の歩道上にすら移動していなかったのだから、本件道路を横断歩道等により横断しようとする者には当たらない。
したがって、原告が主張するように、本件事故に際し、被告について、本件交差点東端横断歩道の直前で停止できるような速度で走行すべき義務までは認められない。本件事故は本件道路東端横断歩道より手前の地点において原告が横断した直後に生じており、原告の予定する進路は横断歩道からは離れていくものであったことなどからすると、原告について、横断歩道と同視できる位置を横断していたともいえない。

 

他方、道路交通法において歩行者とは、文字通り道路を歩いて通行する者をいい、二輪の自転車を押して歩いている者については歩行者とみなす(同法2条3項)とされているが、原告は、本件事故に際し、本件道路の横断を開始した時点で、原告車両に乗車していたことは明らかであり、歩行者に当たらない。したがって、原告は、自転車運転者として交差点通行時の注意義務を負うことになる。
そして、原告は、優先道路である本件道路を横断するに当たり、優先道路である本件道路を通行する車両の進行妨害をしてはならない(同法36条2項)のであるから、横断を開始するに当たっては、左右の安全を確認し、本件道路を通行する車両の進行を妨げないことを確認した上で横断を開始すべき注意義務を負っているところ、これを怠った過失があると認められる。

 

平成28年8月10日 名古屋地裁

仮に自転車が横断歩道を横断しようとする位置にいた場合、38条1項前段の減速義務違反にするのかは謎です。
この判例では自転車の過失を高齢者であることを考慮して4割としてますが、福岡高裁判決は横断歩道を横断していたけど優先道路の進行妨害(36条2項)で30%。
横断歩道上なのか否かにより多少変わる可能性はあるのですが、一方ではこちらの判例。

 

横断歩道を横断する自転車と進行妨害。
だいぶ前に書いたこちらの判例についてですが、ちょっとまとめ直しました。この中で、横断歩道を横断した自転車が優先道路の進行妨害をした(36条2項)と判示されているのがあります。なぜ進行妨害?判例は福岡高裁平成30年1月18日。一審の福岡地裁の...

 

優先道路の判例ではないものの、自転車が横断歩道を横断していたことを自転車に有利にとらえることを否定してます。
なので、状況次第、裁判官次第なのかも。

 

ちなみに控訴したことになっていますが、控訴審の判決文が見つからないのと、判決文では自転車の過失が40%と書いてありますが判決要旨には50%とも書いてあるため、確定判決がどうだったのかは果てしなく謎です。

38条1項の解釈

道路交通法38条は横断歩道を横断する歩行者と、自転車横断帯を横断する自転車に向けた規定。
なので横断歩道を横断する自転車に対しては38条の義務がないと解釈されます。
ただし、こちらでも挙げたように、横断歩道を横断しようとする自転車に対して38条1項前段も後段も義務違反を認めた判例はあります。

 

横断歩道の自転車通行と、38条の関係性。
こちらにまとめ直しました。以後、追加は下記にしていきます。先日このような記事を書いたのですが、記事でも書いたように、横断歩道=歩行者のためのもの、自転車横断帯=自転車のものなので、基本的には横断歩道を通行する自転車に対しては適用外です。ただ...

 

これ、最近でも横断歩道を横断しようとする自転車に対しては38条1項後段の義務ありみたいに書いてある判例は普通にあります。
平成20年以前も以降も。
ただし全て地裁判例。

 

なんでそうなるかについては、過去散々書いてきたので割愛しますが、車と自転車が横断歩道上で衝突した場合、車が無過失になることは滅多にありません(事例はありますが)。
車両である以上、事故回避義務があるわけで事故が起きれば車の運転者は自ら無過失を立証しない限りは賠償責任を負う法律です(自賠法3条但書き)。

 

事故回避義務を怠ったことを38条と表現していると思わしき判例もあるし、そもそも当事者間で38条の義務があることに争いがない判例もある。
単にそれだけ。

 

結局のところ、優先道路を進行しようと、優先権があろうと、車やオートバイは事故れば過失がつく。
前方左右を注視して、嫌な予感がしたら減速して様子をみたり、時には一時停止して先に行かすことも事故回避の1手段です。

 

例えばこの人が語っていた内容もそうだけど、

 

言ったけど言ってない。
正直、本当に意味がわかりません。200mから義務ありとは言ってないと言い出すけどさ、例えば200m先に老人が信号無視して横断歩道を歩いています。70条、38条両方の義務はある。「例えば」という具体例として「200m先に見える状況」を挙げて「...

 

横断歩道が赤信号なら38条の義務はないにせよ、事故回避義務はあるわけ。
38条の義務があるということは、横断歩道に向けて減速する義務なんだということすら理解していない無能ですが、一般ドライバーからすれば38条の義務なのかそれ以外の義務なのかなんて関係ない話。

 

歩行者が理由は不明ながらも車道に進出したら、事故を回避する義務はあるのだから。

 

優先権と事故回避義務の区別もつかない上、判決文を全て読んだとは思えない人が裁判官を非難するとかさ、個人的には「ねーわ」と思うの。
事故詳細が報道されてないにも関わらず、ヤフコメとかで自転車叩きするバカと同類。

 

探せば全て読めるのに、探しもせずにわかった気になるというのは違うと思う。
あっ、ちなみにですが普段からよくメールでやり取りする方から判決文について質問を頂いたときには、普通にいろいろ回答してます。






コメント

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