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歩行者の車列間横断(直前横断)と過失。

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ちょっと前に、「歩行者横断禁止」の道路で歩行者が横断し事故になった場合の過失割合をいくつか挙げましたが、

 

「歩行者横断禁止」と過失割合。
ついでなので、「歩行者横断禁止」にも関わらず横断して事故になった場合の、民事の過失割合を判例から。 過失割合には相場がありますが、具体的事情を込みに考えると相場通りになるわけではありません。 民事の過失割合には、道路交通法違反以外の要素も含...

 

過失割合の幅はかなり広く、「歩行者横断禁止」自体が大要素と見ているわけでもありません。
逆に、「歩行者横断禁止」ではない道路において車列間横断した場合はどうなるのでしょう。

車列間横断+直前横断

前回同様、「車列間横断」とはこのように停止車両の間から横断した場合とします。

判例は最高裁  昭和45年1月22日。
渋滞停止している車列間を横断し、対向車と接触した判例です。

 

対向車線に飛び出したときには、加害車両と被害者の距離は約2mしかない状況。
被害者は5歳。

 

一審は加害車両にも過失を認めていますが、二審(大阪高裁  昭和43年7月5日)は自賠法3条但書を適用し加害車両を無過失とし、最高裁も是認しています。

原審の確定するところによれば、上告人A1が、昭和40年4月3日午後4時20分頃被上告人B運転の三輪貨物自動車と接触して受傷した事故現場は、東西に走るa国道とb道路(南北路、幅員約七・五米の歩車道の区別のないコンクリート舗装道路)とが交差する大阪市c区de交差点から右南北路上南方約50mの地点にあつて、本件事故現場附近からは、ほぼ南西方向に一本の地道が三差状に出て、その三差路の幅員は、右南北路と接する部分では約9.3mあるが、南西方向に伸びるに従い急に狭くなり約4mとなる。本件事故現場附近は田畑が多く、ことに、西側の見通しは良好であり、信号や横断歩道の設備はない。右南北路は、自動車の往来が頻繁で、右e交差点の信号が南北赤になるときは、北行車はたちまち停滞して、その列は、右三差路すなわち本件事故現場附近をはるかに超えて、全長約100mに達する程の停滞状況を示し、他方南行車の方は、e交差点で通行止めとなるので、a国道から廻つてくる自動車が南進してくるだけの状態となる。上告人A2は、その友人訴外Dを見送るため、右三差路を経、右南北路を通つてe交差点のバス停留所まで行くべく、その長男上告人A1を伴つて自宅を出、Dと話をかわしながら、三差路を通り、南北路に達したが、そのときの南北路の交通状況は、丁度e交差点の信号が南北赤であつたから、北行車が、前記のように100m位列をなして停滞し、三差路前も、人が車の間を通つて横断できる程度に少しの間隔をおいたほかは、自動車が頭尾を接して停車していた。上告人A2は、右南北路の西側端を通ることは停滞車のため困難であるとみて、なんとなくその場で直ちに横断してその東側端を歩こうと考え(上告人A2は近辺の交通状況を知悉していた。)、前記停滞車の間隙を抜けて南北路を横切り、その東側端に渡ろうとし、よつて、上告人A1が先頭にたち、少し間隔をおいて上告人A2が続き、その後にDがほぼ一列になつて続いたのであるが、上告人A2は、その際、特に南行車通過に伴う危険に備え、上告人A1の手をつなぎ、または、注意を与える等の措置をとることなく、慢然上告人A1の独り歩きに任せていたため、かかる場合の事故防止能力を欠く上告人A1は、そのまま独りで停滞車の間を通り抜けて南北路中心線附近まで飛び出した。折しも、被上告人Bは、本件事故車を運転してa国道を東進し、e交差点を右折して右南北路に乗り入れ、その中心線から約50センチ東寄りのところを時速約25キロで南進し、右三差路附近にさしかかつたが、前記のように、同所には横断道路の設定はなく、また、叙上のとおり、西側に停滞する車両列のため三差路をなすことすら見極め難い事情にあつたため、そのまま進行したところ、本件事故現場約2m手前で上告人A1が北行停滞車の間隙からやにわに飛び出してきたのに気付き、突嗟にブレーキを踏んだが間に合わず、上告人A1は、自己の右側顔面を被上告人B運転の三輪貨物自動車後部荷台右側面の二つの蝶つがい附近にひつかけるように接触して転倒した。被上告人Bとしては、北行停滞車が列をなしていたため、上告人A1がその間隙から飛び出してくることを予知することはできない状況であつたというのであり、以上の事実は、原判決挙示の証拠関係に照らし是認することができる。そして、右事実によれば、被上告人Bとしては、本件事故現場附近を本件事故車を運転して時速約25キロで南進通過中、停滞していた対向北行車列のかげから、突如として上告人A1が自ら飛びかかつてきたような状態となつたのであつて、これに気付いたときは、急停車の措置をとつても、もはや上告人A1との接触を避けることができず、自車の右側面が上告人A1の顔面に接触してしまつたことが認められ、この間、被上告人Bの運転には別段非難すべき点はなく右述のような道路交通状況のもとで、被上告人Bに対し、自車の進路直前に突如飛び出してくるものを予見し、これに対処することまで要求することは難きを強いるものといわねばならない。)、結局本件事故につき、被上告人Bには過失はなかつたというべきで、かえつて、上告人A2は、学令にも達しない僅か5才10か月の幼児である上告人A1を帯同して、右南北路の如き自動車交通頻繁な、しかも、横断歩道の設けられていない個所を横断しようとしたのであるから、わが子の手をつなぎ.または、注意を与える等の措置をとつた上、左右の安全をみずから確認して相応の指示誘導をし、もつて、交通事故を未然に防止すべき歩行者、子の監護者としての注意義務があつたにもかかわらず、右義務を怠り、慢然上告人A1を先頭にたたせ、独りで横断するに任せたため、本件事故にあつたというべきであつて、上告人A2は、本件事故につき過失があつたことは明らかである、とした原審の判断は正当として首肯するに足りる。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でなく、原判決に所論の違法は認められない。
論旨は、原審の認定しない事実関係を前提とし、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用することができない。

 

最高裁判所第一小法廷  昭和45年1月22日

なお、二審が認定した一部。

一審被告としては本件事故現場附近を本件三輪自動車を運転して時速約25キロで南進通過中、停滞していた対向北進車の列のかげから突如として一審原告被害者が自ら飛びかかってきたような状態となったのであって、これに気付いた時は急停車の措置をとってももはや被害者との接触を避けることができなかったため、自車の右側面が被害者の顔面に接触してしまったことが認められ、この間一審被告の運転には別段非難すべき点はなく(前判示のような道路交通状況のもとで一審被告に対し自車の進路直前に突如飛び出してくる者を予見しこれに対処することまで要求することは難きを強いるものといわねばならない)、結局本件事故につき一審被告には過失はなかったというべきである。(≪証拠省略≫によれば一審被告は被害者の後にいた一審原告や友人にも気付かなかったことが認められるけれども右事実は前記被害者の事故原因に対する判断を左右するものではない。)かえって、一審原告は学令にも達しない僅か5才10ヵ月の幼児である長男を帯同して本件南北道路の如き自動車交通頻繁な、しかも横断歩道の設けられていない個所を横断しようとしたのであるから、わが子の手をつなぎ、または注意を与える等の措置をとった上左右の安全を自ら確認して相応の指示誘導をなし、もって交通事故を未然に防止すべき歩行者、子の監護者としての注意義務があったにもかかわらず(道路交通法第13条、第14条の趣旨参照)、右義務を怠り慢然被害者を先頭に立たせ、独りで横断させるに任せたために本件事故にあったというべきであるから、一審原告は右事故につき過失があったこと明らかである。

 

大阪高裁  昭和43年7月5日

この判例、加害者側は自賠法3条但書の主張をしていないにも関わらず、加害者の無過失を認定しています。
これについて、「主張してないことを判断したから訴訟手続きが違法」だと上告していますが、以下の通り。

そこで考えるに、自己のため自動車を連行の用に供する者が、その連行によつて他人の生命または身体を害し、よつて損害を生じた場合でも、右運行供用者において、法3条但書所定の免責要件事実を主張立証したときは、損害賠償の責を免れるのであるが、しかし、右要件事実のうちある要件事実の存否が、当該事故発生と関係のない場合においても、なおかつ、該要件事実を主張立証しなければ免責されないとまで解する必要はなく、このような場合、連行供用者は、右要件事実の存否は当該事故と関係がない旨を主張立証すれば足り、つねに右但書所定の要件事実のすべてを主張立証する必要はないと解するのが相当である。

 

最高裁判所第一小法廷  昭和45年1月22日

「歩行者横断禁止」よりも

前回記事でも、「歩行者横断禁止」の規制自体を大要素と見ているわけではないと書きましたが、予見不可能な場面、回避可能性がないのであれば運転者の無過失を認定することはあります。

 

有名人の方の事故については、加害者側に何らかの過失があったのかなかったのかは報道されていないので評価できませんが、結局のところ車列間横断(直前直後横断)をする以上、歩行者に注意義務があるのは当然のこと。

運転者側としては、その状況における注意義務を果たしていたか、回避可能性があったかの問題になります。

 

法は不可能を強いるわけではないですが、「歩行者横断禁止」自体を大要素ではなくて、車列間横断をする以上は運転者にとって死角から突如現れる形になるため、歩行者が左右を確認してから横断するしかありません。

 

まあ、一応はこういう判例もあるということで。
実際の過失割合がどうなるかについては、その事故の状況次第ですが、「歩行者横断禁止」だから横断するな!ではちょっと無理がある。
問題になるのは直前直後横断、車列間横断のほうかと。

 

「歩行者横断禁止」でも、見通しが良ければ回避可能性が高まりますが、車列間横断では完全な死角から歩行者が突如出てきたような形にしかならないわけで、仮に徐行していたとしても回避できない場合すらありますから。





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