前回の続きです。
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後続2輪車の注意義務
前回挙げた判例のおさらいから。
まず事故態様。
大型車は道路外に左折するために、車道左側端から1.5mの位置で停止してました。
対向右折車を先に行かせてから左折しようとしたようです。
後続直進オートバイは車道左側端から1mの位置を時速45キロ(制限速度40キロ)で進行。
この際、オートバイは運転免許条件のメガネを掛けておらず、先行左折車を100m手前で現認していた。
大型車が左折を開始した時点でのオートバイとの間隔は約30m。
オートバイは時速45キロ程度のまま減速なし。
判決としては、道路外に左折するクルマは後続2輪車を先に行かせる義務を怠ったとして有罪。
左側端に寄れない大型車の場合、停止状態から左折するにあたり再度左後方を確認する義務があるとなります。
ところで、後続2輪車は道路外に左折するために停止しているクルマを100m手前で視認していたにもかかわらず、無減速で進行したわけです。
これについても、注意義務違反だとしています。
もつとも、被害者Aの過失は前記制限速度違反の点にとどまらない。A車が事故現場の約100m手前に到達したとき、被告人車はすでに左折の合図をして停止していたのであるから、同人としては被告人車が左折するかもしれないことを予想し、その動静に注意しつつ進行すべきであつたのに、同人は右の合図を見落し、被告人車が停止している理由を考えることもなく、漫然時速約45キロメートルのまま進行したことが認められる。
また、A車が被告人車に接近しても被告人車が停止を続けていた以上、前記のとおりA車は被告人車の左側を通過することが許されたというべきであるが、かような場合でも、視野を妨げられた被告人車の前方に横断歩行者又は他の車両のありうることが十分予想されるのであるから、A車は相当に減速し、安全な速度で被告人車の左側を通過すべきであつた。したがつて、被害者にも相当大きな注意義務違反があつたというべきである。
東京高裁 昭和50年10月8日
2輪車がすり抜けすること自体は違反ではないけど、たまたま死角に横断歩行者がいたら事故るわけだし、死角進行時に注意義務があることは当然。
100m手前から視認していたことや、先行車に接近してもまだ停止状態なら「何かあるよね?」と疑って減速して様子見する義務があるとしています。
ところで元ネタ。
自転車がこの状況で停止したのは、シンプルに
「左折車の挙動を信用できないから」
と言えます。
左折直前に追い抜きしてきて、「やっぱり自転車が優先だから開けておいたよ?」と言われてもどこのバカが信用するのやら。
何のために左折車が停止したのかすらわからないし、仕方なく停止して様子見するしかない。
思うこととしては、これ。
・間違って追い抜きしてしまい動画の状況になったなら、窓を開けるなりして自転車に声かけでもすりゃいいのに。
円満解決できるはずなんだけどな。
被せないで
2輪車に対し「被せ左折」するとこうなるわけですが、被せ左折自体が違反なので
「左折直前に追い抜きしない」
これしか言えない。
仮に距離感をミスったなら、左折前に進路を開けておくのは当然だけど、そのまま進行する自転車はまずいない。
自転車乗りの立場から判例を見た場合、むしろ参考になる点はこっちかなと。
視野を妨げられた被告人車の前方に横断歩行者又は他の車両のありうることが十分予想されるのであるから、A車は相当に減速し、安全な速度で被告人車の左側を通過すべきであつた
すり抜け自体は違反とは言えないけど、先行車がなぜか停止している状態は「何かある」と考えたほうがよい。
なのですり抜け自体オススメしていません。
それとは別に「被せ左折」はそろそろ何とかならんのだろうか。
被せた結果双方が一時停止するなら、得意の「円滑」もないだろうし。
ヘルメット被る努力義務の前に、左折前に被せない義務を何とかして欲しい。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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