こういうトラブルは絶えない…
幼気な好中年がライド中イジメにあった出来事
軽自動車に幅寄せされて
急ブレーキかけて「危ねっ」って言ったら
ドライバーが降りて来て「なんだこのやろー!自転車が車道走るな!」って輩全開でぶち切れられた(意味が分からない)
話をしても通じないので警察官を呼んだらめっちゃ怒られてた pic.twitter.com/v38R39zyDX— T.T (@TTokita3) March 31, 2023
ちょっといつもとは切り口を変えてみます。
追いつかれた車両の義務違反?
こういうトラブルが起きたときに、「自転車は追いつかれた車両の義務違反」という人がいます。
追いつかれた車両の義務って、軽車両は対象外なんですよ。
第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
要は「第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度」の優劣、もしくは「同じ最高速度」で比較する規定。
対応する政令とは道路交通法施行令11条ですが、こちら。
第十一条 法第二十二条第一項の政令で定める最高速度(以下この条、次条及び第二十七条において「最高速度」という。)のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道(第二十七条の二に規定する本線車道を除く。次条第三項及び第二十七条において同じ。)並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあつては六十キロメートル毎時、原動機付自転車にあつては三十キロメートル毎時とする。
軽車両の最高速度が政令で規定されていない以上、優劣も同じもない。
自動車 | 原付 | 軽車両 |
60キロ | 30キロ | 規定なし |
じゃあチャリカスがこんな感じで道路左側のど真ん中を通行していたらどうするんだ!となるでしょうけど、
18条1項では、軽車両は「左側端に寄って」通行する義務があるので、結局は左側端に寄る義務は免れない。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
なお、以下の文章は意味が同じです。
18条1項 | 27条2項 |
軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、(中略)ただし、道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。 | できる限り道路の左側端に寄つて |

なので軽車両については、18条1項を遵守している限りは進路避譲義務を果たしているのと同じ。
なお、これらの規定にある「道路」とは、17条4項カッコ書きにより「歩道等と車道が区分されているときは車道」と読み替えます。
一応、警察庁にも確認済み。

ところで、昭和35~39年までは軽車両も進路避譲義務の対象でした。
なぜ昭和39年改正で軽車両を除外したかがポイントになります。
軽車両が除外された理由
昭和35~39年って、今と違って自転車の並走は禁止されていませんでした。
昭和39年には、以下の改正がありました。
○自転車の並走を原則禁止にした
昭和39年以前は自転車の並走が禁止されていないので、並走右自転車に「進路避譲義務」を課さないと通行妨害になってしまう。
ところが昭和39年改正で「自転車は原則として並走禁止」にした関係上、自転車に27条の進路避譲義務を課す必要がなくなった。
18条1項を遵守している限り、
となるので。
なので、27条は自転車には関係しないことになります。

追いつかれた車両の義務って
そもそも追いつかれた車両の義務って、法解釈についても統一見解があるわけでもなく、歴史から見るにさほど意味がある規定だとは思いませんが、

左側端寄り通行をしている分には、自転車としてはそれ以上譲る余地がない。
イエローのセンターラインのときには「右側部分はみ出し追い越し禁止」も付くので、自転車を追い越しするために右側にはみ出すことも禁止されていますが、

実態に合わない部分は改正すべき話でしかないと考えています。
とりあえず言いたいのは、「自転車の追いつかれた車両の義務違反」だと言われても、自転車はそれ以上譲るものがないのです。
なお左側端に寄るとは、走行に適さない路肩の危険部分(エプロンや側溝など)を避けた上で左側端に寄るという意味で、ギリギリまで寄るという意味ではありません。
自転車は左側端に寄る、追い越しする車両は十分な側方間隔を開けて追い越しする(推奨1.5m)。
法律通りにすれば何もトラブルになる要素がないと思いませんか?
被告人に注意義務懈怠の事実があるか否かについて考えるに、一般に先行する自転車等を追い抜く場合(追越を含む。以下同じ。)、自転車の構造上の不安定をも考慮に入れ、これと接触のないよう安全な速度と方法によって追い抜くべき注意義務のあることはもとよりであるが、右の安全な速度と方法の内容は、道路の巾員、先行車及び追抜車の速度、先行車の避譲の有無及び程度、対向車及び駐停車両の存否等具体的状況によって決すべく、一義的に確定すべきでないところ、前記認定の被告人車の場合のように左側端から1mないし1.2m程度右側のところを進行中、道路左側端から0.8m程度右側を進行中の先行自転車を発見し、これを時速45キロ程度で追い抜くに際しては、先行車の右側方をあまりに至近距離で追い抜けば、自転車の僅かな動揺により或いは追抜車両の接近や風圧等が先行自転車の運転者に与える心理的動揺により、先行自転車が追抜車両の進路を侵す結果に至る危険が予見されるから、右結果を回避するため、先行車と充分な間隔を保持して追い抜くべき注意義務が課せられることが当然であって、本件においても右の注意義務を遵守し、被害車両と充分な間隔(その内容は当審の差戻判決に表示されたように約1m以上の側方間隔を指称すると解すべきである。)を保持して追い抜くかぎり本件衝突の結果は回避しえたと認められる以上、被告人が右注意義務を負うことになんら疑問はない。
仙台高裁秋田支部 昭和46年6月1日

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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