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運転行為と暴行の未必の故意。

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運転行為が暴行に当たるケースが時々ありますが、有名な判例でいえば幅寄せを暴行と認めた東京高裁 昭和50年4月15日判決があります。

本件のように、大型自動車を運転して、傾斜やカーブも少なくなく、多数の車両が2車線上を同一方向に毎時5,60キロメートルの速さで、相い続いて走行している高速道路上で、しかも進路変更禁止区間内において、いわゆる幅寄せという目的をもつて、他の車両を追い越しながら、故意に自車をその車両に著しく接近させれば、その結果として、自己の運転方法の確実さを失うことによるとか、相手車両の運転者をしてその運転方法に支障をもたらすことなどにより、それが相手方に対する交通上の危険につながることは明白で、右のような状況下における幅寄せの所為は、刑法上、相手車両の車内にいる者に対する不法な有形力の行使として、暴行罪に当たると解するのが相当である。即ち被告人としては、相手車両との接触・衝突までを意欲・認容していなかつたとしても、前記状況下において意識して幅寄せをなし、相手に対しいやがらせをするということについての意欲・認容があつたと認定できることが前記のとおりである以上、被告人には暴行の故意があつたといわざるを得ないのである。したがつて、この点に関する原判決の認定に誤りはない。

 

東京高裁 昭和50年4月15日

幅寄せではありませんが、暴走族の暴走行為の取締りから逃れようとして警察官と歩道の隙間を時速70キロで通過しようとして衝突したことについて暴行の未必の故意を認めた判例があります。

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未必の故意

判例は福岡高裁 昭和56年7月13日。
要はあくまでも目的は「取締りから逃れるための逃走」であって、警察官に対し有形力を行使する気がなかったのだという主張なわけです。
一審の判断は「警察官の至近距離に自車を高速度で接近させたという行為だけで、これを暴行であると断じ、本件を傷害致死と認定」。
二審は接近行為そのものを暴行と解釈することは否定的ですが、未必的な故意があったと認定。

被告人は、本件交差点に進入した際、進路前方約27mの横断歩道上にA他一名の警察官を認めたのに、その停止命令に従わず自車をそのまま同人らのいる方向に走らせているが、これは同人らと左側歩道との間に未だ約3mの間隙があったので、そこを通り抜けて逃走しようとしたものであり、同人らをめがけて直進したわけではないこと、したがって被告人に未必的にせよA巡査を殺害する故意があったとまでは考えられないことは、原判示のとおりと認められるが、その反面原判決が、被告人が顔を伏せ良く前を見ないで進行したことについては、もっぱら恐怖心に基くものではなかったかということが疑われるとして、結局被告人が未必的にも自車が警察官に衝突することを認容していたとは認められないとした点には、疑問があると思われる(原判決のように、被告人がA巡査らと歩道との間隙約3mを通り抜けて逃走しようとして自車を同人の至近距離に接近させたにすぎず、しかもその際自車が同人に衝突することを全然認容していなかったものとすると、時速70キロの高速度で接近させたとしても、これをもって直ちに暴行罪所定の暴行に当ると解するのは相当でない)。何故なら、本件交差点は照明設備のため夜間でも相当明るかったうえ、A巡査らは夜光塗料をぬったチョッキを着用し、警棒を携行していたから、同人らの行動・位置などは夜目にもかなりはっきりと見ることが出来たこと、同人らは横断歩道上の一定位置にじっとしていたわけではなく、被告人から見て右から左へと移動しながら暴走族車の取締りに当っていたものであること、被告人は右状況を目撃しながら敢えて交差点内に進入し、同人らの停止命令を無視して同人らの前方を突破しようとしていること、特に同人らとの距離が未だ約27mもある段階で、すでに東側歩道に3、4m位にまで近づいて来ている同人らを認めていながら、その直前をそれまでの時速約60キロメートルをさらに約70キロメートルに加速して通り抜けようとさえしていること、しかもその際ことさら顔を伏せ前方をよく見ないで運転し、東側歩道端から1.5mないし2m位の部分をほぼ一直線に進行して、A巡査に殆ど正面衝突し、同人を即死させていること等の事情は証拠上疑いがなく、以上の状況に徴すれば、被告人としても、自車を時速70キロメートルもの高速度でA巡査らの至近距離に接近、通過させることが危険であり、これに対する同人らの対応の仕方如何によっては自車を同人らに衝突させる事態を招来することぐらいは、認識していなかったとは考えられないからである。これに被告人が、頭をハンドルにつけ前かがみの姿勢で前をよく見ないで運転したことについては、捜査段階の間を通じほぼ一貫して、警察官に衝突するかもしれないと思い身を守るためにしたとの旨述べており、この供述は前記の状況に照らし十分信用できると思われること、原審第一回公判では自車を警察官に衝突させるかもしれないと認識していたことを認めていること(被告人作成の認否書参照、なお当審公判でも自己の右行為が危険なことはわかっていた旨述べている。)を合わせ考えると、すくなくとも被告人は、自車をA巡査の至近距離に接近させる際、これを同人に衝突させ、負傷させるかも知れないことを認識しながら、それもやむを得ないと認容していたものと認めるのが相当である。したがって、これを否定しながら単に時速70キロメートルの高速度で自車をA巡査に接近させた行為だけで暴行と認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるといわなければならない。以上の理由で、原判決は他の論旨について判断するまでもなく、破棄を免れない。

 

福岡高裁 昭和56年7月13日

たった3mの隙間を時速70キロもの高速度で逃走しようとしたことについて、暴行の未必の故意を認めた判例です。

ところで

判例って結局のところ、前提となる「状況」次第で判断が分かれるのは当たり前。
歩道を通行する自転車が歩行者と壁の隙間3mあるところを時速10キロで通ろうとして、それを以て「暴行の未必的な故意があった」なんて言う人はいないでしょうし。

 

運転行為について暴行や傷害を認めた判例っていくつかはあります。
二重追い越しについて傷害罪とした判例もあります。

 

二重追い越しして対向車に衝突し、傷害罪を適用した事例。
交通事故に故意犯を適用するにはまあまあハードルが高いのですが、二重追い越しして対向車に衝突した事故について、傷害罪を適用した事例があるようです。 追い越しし対向車に衝突して傷害罪 判例は岐阜地裁 昭和46年3月16日。 判決文は見当たりませ...

 

最近だと危険運転致死傷罪の故意がどうとかいろいろ争いがありますが、結局のところ、過失なのか故意なのかって判断が難しい。
暴行にしても、一般的にいう暴行の概念を運転行為に当てはめた場合、交通事故のほとんどが暴行だとされるおそれすらあるのでなかなか難しい。

 

まあ、こういう判例もあるということで。

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