先日、昔に書いた記事にちょっとしたクレームを頂いたのですが、なるほどなあと思う点がありまして。
反則金制度創設は強化?軽減?
簡単に赤切符と青切符の違いをまとめておきます。
青切符 | 赤切符 | |
意味 | 反則金(行政罰) | 刑罰 |
流れ | 反則金を支払えば刑事責任を負わない | 検察に出頭して取り調べし、起訴、不起訴が決まる |
罰則 | 定められた反則金の支払い | 起訴されて有罪になれば懲役刑もありうる(前科) |
備考 | 反則金を支払わずに争うことは可能 | 99%は不起訴、そもそも「指導警告」止まりも多い |
さて。
信号無視について考えます。
理屈の上では、信号無視の刑罰は「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金」、信号無視の反則金は「普通車なら9000円」。
反則金のほうが上限が軽いとも言えます。
今回頂いたご意見なんですが、その方の意見としては、
私の意見としては、
要は評価軸が違うから、この方の意見は「自転車は刑罰が重く不公平」だし、私の意見は「自転車は刑罰がないに等しい(軽すぎる)から不公平」になるわけです。
同じく「青切符を導入すべき」なのに、評価軸が異なるから違う意見になり、違う意見だけど結論は同じ。
ちょっとだけ補足しますが、例えば普通車が信号無視した場合の反則金は9000円です。
仮に反則金を払わず裁判で争った場合、有罪になると理屈の上では「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金」、しかし現実的には「9000円の罰金」です。
量刑判断する上では、反則金よりも高い罰金を課すには根拠が必要になるわけで、事実上は反則金の額と罰金の額は同じ。
なので「前科がつく」という点を除けば、反則金の額と罰金の額に差があるとは思いません。
また、2年前に警察庁の有識者会議が提言したところによると、自転車に反則金制度を導入する理由はこれ。
警察庁の調査によると、検挙された自転車による道路交通法違反のうち、起訴されたものは1~2%にすぎず、現状、自転車の違反に対する責任追及は不十分であると考えられる。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/mobility/interim-houkoku.pdf
自転車に反則金制度を導入する理由は、起訴率が著しく低く責任追及が不十分、つまりは「赤切符の実情からすると軽すぎる」という点から反則金制度の導入を検討したわけなので、「クルマに比べて自転車の赤切符は重い」というのは実情とかけ離れた話でしかない。
どちらにせよ、違う評価軸から違う意見になり、結論は同じになるという話なんですが、この方を否定するつもりはありませんが、私からすると「現実的にどうか?」のほうが大事です。
反則金の導入は違反を減らすのか?
反則金を導入することが違反に対する抑止力になるのか、という問題がありますが、たぶんあまり変わらないと思う。
理由はいろいろあるのですが、そもそも取締りするマンパワーが足りてないので、ごく一部に反則金を課す制度にしかならないこと。
これはクルマの違反行為についても同じことが言えますが、歩道を横切る前の一時停止義務違反(17条2項)なんて数分歩けば簡単に見つかります。
けど、警察官がいないので取締りされない。
自転車の信号無視や逆走なんてちょっと見渡せば見つかりますが、同じく警察官がいないので取締りされない。
世の中、そんなもんです。
それが抑止力になるかは疑問。
次に、反則金制度を導入したとしても、反則金を払わずに争う意思を示した場合、きちんと検察に出頭していれば前科がなければやはり不起訴が濃厚。
反則金制度の導入が抑止力になるかは疑問ですが、個人的にはそもそも自転車のルール自体が分かりにくく、しかもYouTubeなども怪しい説明が溢れているのが現状。
ルールを分かりやすく整理することと、ルールを勉強する機会を作るほうが先なのかもしれません。
例えば、クルマのドライバーですら自転車が左折レーンから直進することは知らないケースが多いわけで、
このようにルールに従って直進すると、残念ながら爆死する。
こっわ!ドライバー冷や汗なんてもんじゃ無かったろうなこれ
後に重機積んでたらもっとやばかったとおもう。
ロード乗りの方、そこ直進されたらトラックはきついよ
トラック側は直進左折可能帯です pic.twitter.com/1O7lVU631j— ぐ り@ZND Beans (@hiroguriko) June 8, 2020
ドライバーが知らないルールは、ママチャリに乗る人ならもっと理解してない可能性が高いわけで。
青切符の導入による効果で逆走が減る…という未来を描けるのかは疑問ですが、青切符導入自体は歓迎するとしても、そこがメインであってはいけない気がします。
そもそも、不合理で分かりにくいルールを整理して欲しいのよ。
見えない「自転車専用信号」について発狂して青切符とか言われても困るし、
通行義務があるのかないのかよくわからない「自転車道」について、通行区分違反だと発狂して青切符とか言われても困るし、
そもそもの「バグ」が多すぎるわけで、青切符導入するのと同時進行でもいいから、直していかないと。
ダブル左折レーンや「左折レーンの左折先出し信号」にしても、
直進したい自転車が待機する場所がないから仕方なく停止線を越える自転車が出てくることを理解しないまま「信号無視だ!青切符!」とか言われても違う気がする。
いいよね。
マスコミは「自転車が停止線を越えてます!信号無視です!チャリカスですね!」と報道すれば済むのでしょうけど、報道された交差点の様子をみたら「そりゃ停止線を越えざるを得ない状況があるからでしょ」と思うし。
こういうバグを直せば違反は勝手に減りますが、青切符導入したから魔法のように違反が減るなんてファンタジーの世界はあり得ないと思う。
まあ、そういうバグとは無関係な違反が横行しているのは事実なので、多少逆走が減るだけで幸せなんですけどね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
駐車監視員みたいなので自転車指導員とか雇って青切符切ってもらえばいいんじゃないでしょうか。逃げられるかもしれませんが、ぼーっと走っている人が少しはルールを意識するようになるかと
コメントありがとうございます。
駐禁は特例がありますが、それ以外の違反については警察官じゃないと取締りができませんからね…もう少し柔軟な対応でも良さそうな気がしますが。
反則行為が事実であれば普通の勤め人や学生なら会社や学校を休んでまで
出頭したくないですから反則金を支払わざるを得ず十分に抑止効果はある
と考えます。
もちろん現場の警察官が反則切符切らなければ始まりませんがこれは車や
バイクも同じですね、今後自転車無法状態が変わるのは間違いありません。
(白バイ・パトカー・スクーター・自転車で警らの皆様頑張れ)
なお、現在不起訴率が高いのは処理しきれないからで、今後反則金制度に
よって件数が減れば起訴されることも増え私のように罰金刑で前科が付く
ことになるでしょう、普通の人なら嫌ですよね。
コメントありがとうございます。
出頭したくないのが抑止力になるなら、赤切符のままでも変わらないのではないでしょうか。
不起訴率が高いのは処理しきれないから…も一つの理由にはなりますが、それが全てではありません。
返信ありがとうございます。
現状では赤切符を切ること自体が現場の負担なので一斉取り締まり以外では
ほぼ警告で済ませているようです。また都心部繁華街以外の一斉取り締まり
も見たことがありませんし、それでほとんど不起訴なら言わずもがな。
今回の反則金制度が実現すれば現場で青切符が切りやすくなり検挙数も大幅
に増えることが予想されますから、赤切符のみの現状と同じとはとても思え
ませんし、そのための有識者検討会開催でしょう。
ただ今のところはお互いの推測にすぎませんからこれ以上のやり取りは控え
たいと思います。
今後もいろいろと役立つ情報の発信をお願いいたします。
コメントありがとうございます。
クルマが青切符で否認して検察に送致されてもほとんどが不起訴なので…不起訴になる理由は他の犯罪との均衡の問題だと思ったほうがいいと思いますよ。