ちょっと話が長くなりますが、以下の質問を頂きました。
先日以下の橋の上の道路について、警察に「ポールで道路を区切っているが、道路を通行できる幅が狭く、自転車で通行すると側方離隔が取れない状態で追い抜かされるので、橋の両端のポールを一部撤去して、ポール外側に自転車レーンを確保してくれないか?」と問い合わせました。
警察の説明では「併設されている歩道が自転車通行可能としているため、自転車レーンの設置はできない。車道に十分な幅がないのであれば、危険なので自転車は十分な幅がある歩道を走行することが基本。」との説明でした。
要望しているのは自転車道ではなく、自転車レーンであることを説明しても、その違いは理解した上での説明とのことでした。
この橋の先の道では歩道の自転車通行可で自転車レーンがあるので同じようにしてほしいだけと説明しても、神奈川区警察管轄の外なのでなぜ自転車レーンが設置できるのかの説明はできないが、設置できないはずとの説明でした。
歩道の幅も、橋の両端の坂になっている場所(自転車のスピードが出る場所)では幅が狭く、ここを通る自転車はほぼ 100% 徐行をしていないので、むしろ危険と説明しましたが、それであれば警察官の巡回を強化して自転車の注意をするとの的が外れた説明でした。自分が普段使っている自転車は厳密には普通自転車ではないので、歩道を通行できないと説明したところ、ポールの位置をずらして車道の幅を広げる要望を道路局にはするが、実施されるかは先方の判断との説明でした。
このような警察の説明は、果たしてあっているのでしょうか?このポールの間隔はそれなりにあるので、別に自転車が走ることもできるのですが、ポールゾーンが終わるところにたいてい違法駐車があり、車道に合流する形で車道に戻る必要があるので、なかなかトリッキーな動きをしなければならず、スピードを出して接近する自動車にクラクションを鳴らされることもあります。
これは、戻る際に注意すればよいのですが、そもそもなぜこのポールがあるのかという疑問があります。
路駐対策との説明でしたが、両端の一部のポールを外して自転車レーンの設置をしても、路駐対策にはなるはずですが、そもそも自転車レーンの設置は不可との説明なので不可とのことでした。反対車線の最新の google map は三角コーンが立っている状態ですが、少し前の street viewにあるように、基本はポールが立っています。この先の道は、戸部警察署の管轄ですが、自転車通行可能の歩道に沿って自転車レーンが設置されています。
これ自体は特に普通にある光景ですが、神奈川警察の説明ではありえないとのことでした。よろしくお願いします。
要は「普通自転車専用通行帯」と「歩道の自転車通行可」を同じ道路で併用出来るか?という話ですかね。
限定的には可能
普通自転車専用通行帯はこれ。
車道に設けた車両通行帯です。
歩道の自転車通行可はこれ。
さて。
何年も前には「普通自転車専用通行帯」と「歩道の自転車通行可」の両立はダメでした。
根拠は道路交通法110条1項。
第百十条 国家公安委員会は、全国的な幹線道路(高速自動車国道及び政令で定める基準に従い国家公安委員会が指定する自動車専用道路を除く。)における交通の規制の斉一を図るため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、公安委員会に対し、この法律の規定により公安委員会の権限に属する事務のうち、車両等の最高速度その他政令で定める事項に係るものの処理について指示することができる。
施行令
第四十二条
3 法第百十条第一項の政令で定める事項は、信号機の設置及び管理による交通整理並びに法第二条第一項第七号、第四条第三項、第八条第一項、第十七条第四項、第二十条第一項ただし書及び第二項、第二十条の二第一項、第二十一条第二項第三号、第二十三条、第二十五条の二第二項、第二十六条の二第三項、第三十条、第三十四条第一項、第二項、第四項及び第五項、第三十五条第一項、第三十五条の二、第三十六条第二項、第四十四条第一項、第四十五条第一項、第七十五条の六第一項並びに第七十五条の八の二第二項の道路標識等による交通の規制に関することとする。
普通自転車専用通行帯は道路交通法20条2項に基づく規制になりますが、国会公安委員会の指示事項に基づいて設置する必要がある。
具体的には「交通規制基準」というもので示されます。
で。
普通自転車専用通行帯についての交通規制基準については、何年か前はこうでした。
自転車道及び自転車専用通行帯を適用する区間では、既設の歩道の普通自転車歩道通行可の規制を解除するものとする。
なので自転車レーンを車道に設けた場合には、歩道の自転車通行可は解除しなければならなかったのですが、最近はだいぶ緩和されてこうなってます。
普通自転車歩道通行可規制の併用は交通実態、沿道状況、自転車利用者等の意見を踏まえ、必要と認められる場合に限って実施すること。
なので現在は全く不可能というわけではありません。
国道16号相模原に自転車道が設置された頃は併用不可だったはずで、あれは自転車レーン+歩道の自転車通行可の併用ができなかった背景があります。
なので、読者様が警察に言われた内容。
現在は「必要と認められる場合に限って」、道路管理者と協議の上なら可能ですが、あくまでもニュアンス的には例外的措置なのかと思われます。
そもそも、警察庁が「併用不可」にしていた理由。
自転車レーンを作ったからには「車道通行原則(17条1項)」に従うべきだし、歩道は歩行者のためにあるのだから「歩道の自転車通行可」は許されないという考え方だったものと思います。
しかし現実的には路上駐停車の問題や、左折車の問題などもあるし、子供や高齢者など標識の有無に関係なく歩道を通行できる自転車に誤解を与えないようにという配慮なども含め、現在の交通規制基準では併用は禁止とはしていません。
なぜ?
なんでこんな構造なのかについて、いろいろツッコミしたいところです。
なんでわざわざ一車線分相当をポール立ててクローズドにしているのかはわかりませんが、これだけスペースがあるなら自転車レーンにしても何ら問題無さそうな。
たぶん、回答した警察の知識がちょっと古いとかで「併用不可」と思ってしまった可能性がありますが、ポールの外側を普通自転車専用通行帯にした場合、これだけの広さ&ポールで仕切りがあることを考えると、「歩道の自転車通行可」については解除せざるを得なくなると思う。
広い自転車レーン、橋の上、ポールで仕切りありを考えると、「必要と認められる場合に限って」に該当しないでしょうから。
ちなみにたぶん、ここの先にある普通自転車専用通行帯ってこれにつながる部分なんですかね?
そもそも
これについてもそうですが、
ポールで仕切りを作った「自転車ナビライン」です。
この道路、調べてもらったところ「車両通行帯(一定区間)」の意思決定が成されていて、車線数は「2ないし3」になっているそうな。
管轄署の見解では、自転車ナビラインは車両通行帯の外側に存在しているとのことで、
道路交通法上は、自転車ナビライン上を通行すると「通行帯違反」になるという珍事を巻き起こします。
もちろん、そんなもんを警察が咎めることはありません。
けど、道路交通法では解決できない違法な「疑似自転車レーン」を容認しているとも言えるわけで、実際の運用って雑なんですね。
そして読者様の話にしても、警察署の違いにより交通規制基準の扱いも違うわけで、同じ道路なのに一体的で連続性がある規制(構造)を考えていない。
「ご利用は計画的に!」のはずなのに、全然計画性がない。
他の読者様からも、チグハグな自転車道計画について聞いてますが、
道路管理者と警察の連携がうまくいっているとは思えない状況。
これがジャパニーズスタイルです。
冒頭の件については、その先に普通自転車専用通行帯があることを考えると、
ポールの外側を再整備して普通自転車専用通行帯にしたほうが連続性がある構造になりますが、
一応は「車両通行帯がない道路」なので、自転車は「車道の左側端通行」となり、ポールの外側を通行する義務があるとも解釈できます。
どちらにせよ、分かりにくいので道路管理者と警察が話し合いして解決するしかありません。
先日の件
ついでなので書いておきますが、先日の件。
「図面を描け」などと全く理解してない人がいましたが、結局は冒頭の件とも関係します。
警察が「交通規制基準」を勘違いしていて「できない」と思い込んでいるケースもあるわけですが、なぜその構造にしたのか理由が全てわからないと、提案できるわけもない。
今回の件なんかは警察の勘違いにより、「不可能」だと思い込んでいる可能性があります。
とりあえず、読者様が警察に言われた内容は半分正解、半分間違いくらいのイメージかと思うけど、
車道に十分な幅がないのであれば、危険なので自転車は十分な幅がある歩道を走行することが基本
現場の本音が出ちゃっているのもビックリします笑。
神奈川県警クオリティなので期待しちゃダメですが、せっかく既存のポールがあるなら活かした方がいいことは間違いないと思います。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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