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幼児の飛び出しと、指定最高速度の超過。

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今回ですが、指定最高速度超過と幼児の飛び出しについてです。

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指定最高速度超過と幼児の飛び出し


判例は福岡高裁宮崎支部 昭和50年11月7日。
業務上過失傷害罪に問われています。

 

事件の概要。

・歩車道の区別がなく、幅員8.25mの道路
・被告人は指定最高速度40キロの道路にて、最高速度規制が解除される約100m手前から加速し、時速60キロで進行した。
・被害者(4歳)は犬に追われて道路に進出した。
・被告人は左前方約22m、道路左側から駆け出してきた被害者を認め急制動したものの、衝突。
・衝突地点は指定最高速度40キロの規制が終点から約6m先

一審は予見可能性がないなどとして無罪。
福岡高裁宮崎支部は指定最高速度を遵守せずに進行した過失を認めて有罪。

 

屈曲が多く、歩車道の別のない国道であつて、交通量が非常に多く、人家も立ち並んでいて、非常に危険性が高いという理由で、高中速車について終日毎時40キロメートルの最高速度を指定したものであることが認められるので、本件道路について毎時40キロメートルという最高速度を指定する前提として類型的に想定した前記の交通上の危険の中には所論の指摘する前記の危険すなわち「子供、老人を含む人が前方の道路を横断し、あるいは車両が前方で停止し若しくは横断するなど、人車が、自車の進路を横断したり遮る危険性」も含まれているものであることはこれを容易に窺知することのできることである。換言すれば、本件規制区間内の道路においては、走行中の車両の進路上にいつ、どこから、どのような態様で人間や車両その他の障害物件が進出してくるか分らないという危険性があることなどを理由に、車両の運転者に対し、その危険性の認められる道路の区間を限つて指定最高速度を遵守すべき義務を科しているものであることが認められる。すなわち車両の運転者は進路上に進出してくるべき障害物件の種類のいかんが予知できなくても、またその障害物件の進出してくるべき時期、場所、態様等の予知ができなくても、障害物件が進路上に進出してくる危険性が現実に存在する以上は高速度で進行することは危険であるから、指定最高速度を守つて進行すべきであつて、若しそのようにして進行しておれば、たとえ障害物件が現実に現われてきても、その現われてきた地点が指定最高速度を守つて進行中の当該車両の制動距離よりも前方の地点である限りは、急停車するなどしてその障害物件との衝突の危険を回避することができるという趣旨において、車両の運転者に対し道交法で規定する指定最高速度遵守の義務を科しているものであることが認められる。

 

指定最高速度遵守の道交法上の義務自体を業務上過失致死傷犯における注意義務の内容にとりこんだ場合における結果予見義務の内容のいかんについて考察すると、道交法は、その想定した前記の類型的な危険が、いつ、いかなる場所で、いかなる態様で発生することとなるのか予断ができないにしても、またその危険発生の確率が具体的危険の切迫している前記設例のような場合よりも低いにしても、苟もその危険の発生が予想される以上は、予想される危険の種類、態様等ないしは危険発生の蓋然性の程度に応じた危険防止の措置を講ずる必要があるという趣旨において、前記のように指定最高速度遵守の義務を定めているのであるから、その類型的に予想した各種危険のうちの一つの危険が具体化して現実に人身事故が発生したとして、その犯人に指定最高速度遵守の注意義務を科する場合において、犯人に期待される結果予見義務の内容は前記趣旨ないし程度の危険の予見があればよいという趣旨のものとならざるをえないわけであり、本件の公訴事実も同旨の見地に立つているものと解さざるをえないのである。以上のような見解のもとに、本件の審理経過、証拠関係等をも参酌しながら、前記公訴事実をあらためて検討してみると、検察官は本件の事実関係のもとにおいては、被告人が被害者の飛び出し行為を認めてから被害者との衝突を回避すべき措置をとるように求めるのは酷にすぎるというよりは不可能を強いるものであると考えて、被告人が現実にその被害者を発見する以前の時点において、前記において説示したような趣旨において幼児の被害者が自車の進路上に出てくることのありうることを予測できたとして、そのことを前提に前記のように指定最高速度遵守の注意義務を科し、若し被告人がその注意義務を守つて運転進行しておれば、たとえ被害者が前記のように飛び出してきても、その飛び出してきた被害者との衝突を優に回避することができたとして、前記業務上過失傷害の公訴を提起したものと考えられる。すなわち本件公訴事実において被告人に期待された結果予見義務の内容は、本件規制区間内を走行中、いつ、どこから、どのような態様で進出してくるかは予知できないにしても、子供を含む人間が被告人車の進路上に進出する蓋然性は十分にあつたことを予知することができたというものであつて、これを前提として、右のような態様ないしは右程度の蓋然性のある危険に対処するには徐行する程の慎重な措置をとる必要はないにしても、少くとも指定最高速度を守つて進行すべき注意義務があるとしたものであり、原判決が論じているように被告人車の進路上の特定の地点ないしは場所から幼児が進出してくること、換言すれば被害者の幼児が原判示防護壁の裏側から被告人車の進路上に進出してくること、しかも急に飛び出すという態様で進出してくることの予見ができたとして、さらにはその飛び出し行為は被害者が「野犬を恐がつて自宅に逃げ帰ろうとして」なされたものであることまでの予見ができたとして、それを前提に前記のような注意義務を科しているものではないことが認められるのである。

(中略)

結果の予見すなわちその規制区間内のどこから、いつ、どのような態様で進出してくるかは予知できないにしても、子供を含む人間が被告人車の進路上に進出することのありうべきことは優にこれを予知することができたものと認められるのであるから、これを前提とした指定最高速度遵守の注意義務も存在することとなるべきことは多言を要しないところであつて、原判決が前記のように「被害者のような異常な飛び出し行為をする幼児がいることを予見することは、到底できなかつた」として、被告人には指定最高速度遵守の注意義務が存在しない趣旨の判断をしたのは誤りであつたことが明らかにされたものと考える。

(中略)

速度制限解除の道路標識を設置して、その設置地点以遠の衝突地点を含む危険地域について速度規制の解除をしたのは、同所を通行する車両が法規で定められたとおりに規制区間の終点一杯まで指定最高速度を守つて運転進行しておれば、障害物件がその通行車両の制動距離の範囲内に突如として進出してきたような特別な場合は格別、そうでない限りは一応接触、衝突等の危険は防止することができるという見とおしのもとに、通行車両の加速の便宜すなわち同所は被告人車の進行方向からみてゆるやかな勾配の上り坂となつているので、通行車両がいくらかでも早い時点で加速を開始することができるように配慮するとともに若しその空き地出入口をこえた地点に規制区間の終点を設けるとなると、同所付近は前記のようにそれまでに通行してきた道路に劣らない程の危険性のある道路であり、従つて場合によつては指定最高速度を守つて運転進行するだけでは足りず、徐行ないしは急停車の措置までとることを要求されることのありうることの予想される道路であるのに、ともするとそれまで通行してきた道路と同様の道路状況がつづくものと考えて、同じ速度ないし運転体勢のままで、その危険性のある道路部分を通行しがちになり、かえつて事故を誘発しやすいということを考慮したことなどの事由によるのではないかと考えられるのであるが、その規制区間の終点を定めた事由のいかんの点はいずれにしても、規制区間の終点までは規制速度を守るべきであるという法規の趣旨を忠実に履行することなく、制限速度解除地点の手前の地点から加速を開始して、規制区間内を時速約60キロメートルで進行したことが原因となつて前記の衝突事故をひき起したものとされている本件においては、被告人に指定最高速度不遵守の過失責任があることはいうまでもないことであり、衝突地点が速度規制の解除された道路上であつたということを理由にその責任を免れることはできないのであるから、本件の衝突が前記のように速度規制の解除された道路上で起きているということは前記のように被告人に本件の結果についての予見可能性があり、かつ指定最高速度遵守の注意義務も存在したと判断することの妨げとなるものではない。

 

福岡高裁宮崎支部 昭和50年11月7日

この判例ですが、要は指定最高速度の時速40キロを遵守していれば、いつ、どこに飛び出しがあるかまでは予見できなくても、少なくともこの事故については急制動で回避できたでしょ?というだけの話です。

 

ポイントになるとしたら、指定最高速度として規制している意味を説示している点。
いろいろ危ないから最高速度を指定しているわけで、いつ、どこで飛び出しが起きるかという具体的な予見はできなくても、そのような危険があるから最高速度を指定しているわけで、最高速度を遵守するのは当然という立場です。

 

もちろんですが、最高速度を遵守した上で回避不可能な事故にまで有罪にするようなことはありません。
そういうのは普通に無罪判決がいくつもあります。

 

衝突地点が指定最高速度の終点からわずかに先でも、飛び出しを発見した地点では指定最高速度区域内ですし。

ところで

なんでもかんでもクルマが悪くなり有罪になる…と思っている人もいるみたいですが、そのようなことはなく、回避不可能な事故は昭和の時代から無罪判決が普通にあります。

 

要は「回避不可能」と本人が思い込んでいるだけで、

 

・ちゃんと前方注視していれば防げた事故
・ちゃんと制限速度を遵守していれば防げた事故
・徐行義務など具体的規制を遵守していれば防げた事故

 

こういう「防げた事故」については有罪にしてますが、今回のケースで言えば「指定最高速度を遵守していれば停止できたのに、速度超過していたから止まれなかった」という案件。

 

逆に「指定最高速度を遵守していても防げなかった」場合についても無罪になります。

 

スピード超過ってあらゆる可能性を消し去るわけですが、それを理解している人は残念ながら少ない。

 


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