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大型車の死角がある場合の、路外右折進入車の注意義務。

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以前チラっと書いた気がしますが、

 

対向車が渋滞停止しているとき、道路外右折車に課された義務。
こちらの続きです。 17条2項の前に これについて「歩道の直前で一時停止義務(17条2項)」を主張する人が多くてびっくりしますが、 (通行区分) 第十七条 2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の...

 

対向車が停止してくれてその前を横切って道路外に右折する場合、まずは25条の2第1項により、車道左側端を正常に進行する車両を妨げてはならない。
いきなり17条2項(歩道直前で一時停止)だと、

左側端を正常に進行する2輪車と事故ります。

 

実際のところ、判例上ではどのような注意義務違反が認定されているのか調べてみました。

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道路外に右折進入する車両の注意義務

判例は高松地裁 令和3年2月22日。
右折した車両の運転者が過失運転致死罪に問われています。

 

状況がイラストと異なる点は以下。

・譲った対向車が大型車(対向車の左側は死角)
・歩道はなく幅員1.3mの路側帯
・路側帯を進行したのはオートバイ

これについて以下の注意義務違反を認定しています。

大型貨物自動車の左側には2輪車等の通行可能な余地があって、この通行余地の見通しが困難であったから、一時停止及び微発進を繰り返すなどして通行余地を直進してくる車両の有無及びその安全を確認して右折進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、(中略)漠然時速約10キロで右折進行した過失

 

高松地裁 令和3年2月22日

これに対して弁護人は、徐行義務は42条1号に規定があるが停止微発進義務は道路交通法上規定がないことなどを理由に反論していますが、

・路外右折時の徐行義務(25条2項)
・路外右折時に正常な交通を妨げることが禁止(25条の2第1項)

この2つを理由に、一時停止と微発進を繰り返すなどして大型車の左側にある通行余地を確認する義務があったと認定。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

大型車の左端で一時停止して、微発進を繰り返すなどして左側端の通行余地を確認して進行すべき注意義務違反としています。

 

この「一時停止後に微発進を繰り返す注意義務」については、以前取り上げた歩道を横切り車道に進出する際の広島高裁判決でも出てきますが、

 

歩道を通行する自転車と、路外に出るために左折するクルマ。
このような事故は悲しいところですが、 県道を走っていた車がこちらの駐車場に入ろうと左折したところ走ってきた自転車と衝突したということです 要は歩道通行自転車と、路外に出るために左折したクルマが歩道上で衝突した事故になります。 一時停止 歩道...

 

今回のケースと広島高裁判決では事例が違いますが、死角進行する上では同様の注意義務を認定しています。

 

なお、以前挙げた「路側帯を時速50キロで直進したオートバイ」の判例との整合性をどう考えるかになりますが、

 

路側帯を通行する自転車は、どの程度の速度まで認められているのか?
自転車は路側帯を通行可能ですが、ちょっと前の記事についていろいろ質問を受けていたので。 路側帯の定義と自転車 路側帯と路肩を混同すると話がおかしくなるので、まずは定義から確認します。 三の四 路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を...

 

同じように路側帯を進行したオートバイと右折車の事故で、交差点右折なのか道路外右折なのかの違いはありますが、東京高裁 昭和60年3月18日判決は路側帯を時速50キロで進行したことは「通常予想されないところ」だとしている。
また、東京高裁判決は右折車は相応に注意義務を果たしていた点でも差がある。
なので今回のケースとは状況が違うというところかと。

しかし、路側帯は主として歩行者の通行の用に共するために設けられているもの(ただし、歩行者の通行が禁止されている自動車専用道路の場合を除く。)であって、軽車両だけが、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除いて、通行を許されているにすぎず、この場合においても軽車両は歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければならないもの(同法17条の2第2項)とされているのである。ところで、路側帯の通行を許された軽車両とは、人又は動物の力により運転する車両に限られる(同法2条1項11号、16条2項)のであって、これらの車両は自動車や原動機付自転車と異なりその性質上低速のものであり、かかる軽車両だけが歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することを許されているにすぎない路側帯は、本来高速の車両の通行を全く想定していないものと考えられる。もっとも、現実には法律上路側帯の通行を禁止されている原動機付自転車や自動二輪車が路側帯内を通行する事態が時にみられるのであり、このような現実を全く無視することはできないが、このような場合であっても原動機付自転車や自動二輪車の側では適宜速度を調節して進行するのが一般的であり、これらの車両が時速50キロメートルもの高速度で路側帯内を通行することは通常予想されないところといわなければならない。そうすると、このような異常な走行をする直進車については、交差点における直進車優先の規定の適用はなく、右折車はかかる直進車に対してまでその通行を妨げてはならない義務があるものとは解されない。

 

(中略)

 

右通行余地を自転車、自動二輪車等が進行してくるに備えブレーキペダルに右足をのせ左方を注視しながら時速5、6キロメートルで進行したところ、左斜め前方約12mの地点を対向して進行してくる自動二輪車(以下、被害車両という)を認めて急制動し、被告人車の先端がわずかに路側帯内に入った地点で停止したことが認められるのであって、被告人としては右通行余地を対向して進行してくる車両に対して相当の注意を払っていたものと認められる。そして右の程度の注意を払っていれば、路側帯内を適法に進行してくる歩行者や軽車両は勿論、原動機付自転車や自動二輪車が進行してくる場合であってもそれらが適宜速度を調節して進行してくる限り、それらとの衝突を回避することが十分可能であったと認められる。もっとも、右の程度の注意では被害車両の如く路側帯内を時速50キロメートルもの速度で進行してくる車両との衝突を回避できないけれども、これを以て被告人の過失とみることは相当ではない。すなわち、前説示どおり路側帯は主として歩行者の通行の用に共するために設けられているのであり、例外的に自転車等の軽車両が歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することが許されているにすぎないのであって、本来高速の車両の通行を全く予定していないのである(以下略)

 

東京高裁 昭和60年3月18日

あまりに高速度で路側帯を通行してきた場合には話が変わります。
右折側の注意のみでは回避不可能になるし。

 

なお、そもそも路側帯をオートバイが進行したのは違反です。
25条の2第1項でいう「正常な交通」とは「違反がないこと」とイコールではありません。
高松地裁判決でも、路側帯を通行してきたバイクも含め25条の2第1項で考えていますが、要はこのような死角である以上、

自転車が来るのか、歩行者が来るのか、オートバイが来るのかは見えないのだからわからない
何が来るのか来ないのかが不明だから「一時停止後微発進を繰り返して確認すべき注意義務」になるわけで、結果論として自転車と衝突したら「正常な交通を妨害」、オートバイと衝突したら「正常ではない交通を妨害」になるわけではない。

 

いるかいないかわからないものを確認するための注意義務なわけで、結果論で見ると理解できないかもしれません。
25条の2第1項を果たすために「確認として」注意義務があるわけで、最終的に何が来たのかは関係ない。

ちなみに

冒頭の判例ですが、おそらく「譲った側の大型車」も過失運転致死罪に問われたものと思われます。
理由ですが、上の判例における被告人車とオートバイの関係では衝突がなく、非接触の驚愕事故によりオートバイが転倒。

 

転倒したオートバイの存在に気がつかないまま大型車が発進して轢過したからです。

 

対向右折車に「譲る」という行為は否定しませんが、譲られた右折車は本来、かなりの注意義務が課されます。

 

いきなりこんな感じで進行したら、左側端を正常に進行する2輪車と衝突するので、

対向車が大型車なのか普通車なのかで死角が違いますが、対向車が大型車などで死角があるならば「一時停止後に微発進を繰り返す注意義務」がある。

そして2輪車側の注意義務については、以前取り上げた札幌高裁判決が理解しやすい。

 

渋滞の隙間から「道路外へ右折」したクルマと、原付が衝突した判例。
道路外へ右折する際には、「正常な交通」を妨げてはならないという義務がありますが、 (横断等の禁止) 第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右...

 

もちろん25条の2第1項の義務を負う右折車のほうが注意義務が強いことは言うまでもなく。
対向車が譲ってくれたからといって、「ありがとう」なんてそそくさと右折しちゃダメなんですね。
本来は。
注意深い人は道路外右折自体を極力避けますが、対向車線の見通しが悪い状況で道路外右折するにはかなりの注意義務があるということです。

 

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない


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