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「40キロ」の速度標識が見えない場合、時速67キロで通行すると罪になるか?

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いきなりですが質問です。

 

道路交通法では速度標識がある場合にはその標識速度に従う義務(指定最高速度遵守義務)があり、速度標識がない道路では政令で定めた最高速度に従う義務(法定最高速度遵守義務)がありますが、

(最高速度)
第二十二条 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。

この規定には故意と過失の処罰規定があります。
一般道の法定最高速度はクルマは60キロ。

ある方向から交差点に進入したときに、どうやっても「40キロ」の速度標識が見えません。
この道路を時速67キロで通行した場合、何の罪になるでしょうか?

指定最高速度遵守義務違反(過失)として、27キロの速度超過となる。
②標識が見えないため、このドライバーは何の罪にもならない。
法定最高速度遵守義務違反(故意)として、7キロの速度超過になる。
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指定最高速度標識が見えない場合

判例は大阪高裁 昭和50年5月30日。
道路交通法違反(速度超過)被告事件です。

 

検察官は「指定最高速度遵守義務違反の過失犯」(つまり標識を見落として速度超過した)として起訴しましたが、まず、標識が無効であると裁判所が指摘。

本件現場において被告人に対し最高速度を規制すべき道路標識としては本件道路標識が存していたのであるが、本件道路標識は次に述べる理由により被告人のように市道から本件交差点に進入して左折し府道を東行しようとする車両の運転者に対する関係では適法有効なものであるとはいえない。すなわち、道路標識を設置して交通の規制をするときには、車両がその前方から見やすいように設置しなければ適法有効なものであるとはいえないところ(道路交通法4条1項、同法施行令1条の2第1項)、本件道路標識については、車両の運転者が市道から本件交差点に進入して左折するに際し、本件道路標識の方を注視しているかぎり、北東すみ切りの半ば付近に至れば左約45度斜め前方約10数メートルの距離にこれを見ることができ、さらにその後約10メートル進行する間も左前方にこれを見ることができるのであるが、前記認定の道路状況のもとにおいては、運転者は進路前方の交通の安全確認だけでなく府道を直進東行してくる車両に対する安全確認をもしなければならず、そのためには左折体勢に入りながら右後方を注視しなければならないことにかんがみると、左折にあたつての徐行義務を尽していても、左折しているときには本件道路標識を容易に認識することができないというべきであり、そして左折を終つて直進の体勢になつたときにはすでに本件道路標識は左前方の上方にあつてこれを見ることができないのであるから、結局本件道路標識は左折進行の運転者に対する関係では見やすいように設置されているものということができないのである(本来、交差点における左折車両に対する道路標識は、左折が終了して直進状態になつたときにおいて見やすいように設置すべきものであろう)。してみると、被告人は本件道路標識により最高速度の規制を受けるに由なかつたものであり、これを見落して本件現場において40キロメートル毎時をこえる速度で自動車を運転しても、なんら過失による指定最高速度遵守義務違反の罪責を負うことはないというべきである(なお、検察官は当審において、大阪府内においては、その全域につき普通自動車等の最高速度を40キロメートル毎時とする原則的規制がなされ、この規制が道路標識によるなされていることは公知の事実であるから、本件道路標識の無効は本件現場の指定最高速度が40キロメートル毎時に規制されていることに消長を来たさないとして最高裁昭和48年2月12日第二小法廷決定・刑集27巻1号8頁を引用するが、右判例は区域を指定してする速度規制の効力に関するものであるところ、本件は右判例と事案を異にし、道路の区間を指定して速度規制が行われている場合であるから、本件道路標識が無効であるかぎり、被告人に対してはその規制の効力が及ばないというほかないものである)。

 

大阪高裁 昭和50年5月30日

検察官は「指定最高速度遵守義務違反の過失犯」(つまりは標識の見落とし)として起訴してますが、そもそも標識が視認できないから無効だし、指定最高速度遵守義務違反は成立しないとして公訴棄却。

 

無罪ではなく公訴棄却、つまり裁判を打ち切りにしていますが、以下が理由。

被告人に対しては道路標識による最高速度の規制の効力が及ばず、過失による指定最高速度遵守義務違反の罪は成立しないのであるが、関係各証拠によれば、被告人は右公訴事実の日時、場所において67キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転したことが認められるので、被告人の右所為は故意に法定最高速度遵守義務に違反したものとして道路交通法118条1項2号の罪にあたるというべきである。そして、被告人の右行為は同法125条1項別表により同法9章にいう反則行為に該当し、かつ、記録によれば、被告人は同法125条2項各号に掲げる例外事由がないと認められるから、同章にいう反則者に該当するものであるところ、記録によれば同法130条各号の場合でないのに同条所定の反則金納付の通告手続が行われていないことが明らかであるから、本件公訴提起はその手続が規定に違反した無効なものといわなければならない。

 

大阪高裁 昭和50年5月30日

標識が無効なので過失による「指定最高速度遵守義務違反」は成立しないものの、時速67キロは「法定速度遵守義務違反」になる。
標識が無効、つまり被告人にとっては「速度標識がない道路」になるので、車両が従う最高速度は法定速度の60キロになるからですね。

ところが7キロ超過は反則行為になるため、反則告知をしてから反則金を払わないなど争う姿勢を見せないと裁判にかけることができない。
なので結局、裁判を打ち切りにするという判決になるわけです。

 

つまり正解は③。

①指定最高速度遵守義務違反(過失)として、27キロの速度超過となる。
②標識が見えないため、このドライバーは何の罪にもならない。

法定最高速度遵守義務違反(故意)として、7キロの速度超過になる。

白バイの速度の話

ちょっと前に書きましたが、

 

結局、白バイの速度(118キロ)は法律上問題なしと言えるのか?
こちらの続きです。 そもそもの事故&裁判報道はこちら。 これらについて、質問を頂いた内容がこちら。 Aさん 管理人さんはパトカーの速度が違反だと捉えているようにお見受けしましたが、北海道道路交通法施行細則3条の2(2)イで「専ら交通の取締り...

 

この中で検察は、事故直前の白バイの速度118キロについて、警ら中で、法律上は問題ないとしながらも、北海道警察は事故防止に向け、最高速度は100キロの通達を白バイにしていたことも新たに明らかにしました。

 

死亡した白バイ警官、最高速度100キロの“通達”の中…120キロで直進して衝突、右折のトラック側「高速のバイクの接近を予見し、回避は不可能」(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
おととし9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われている大型トラックの運転手の裁判…白バイの時速は約120キロでしたが、北海道警察は事故防止に向け、最高速度を10

これ、現に速度超過車の取締りのためであれば「法律上問題ない」になりますが、そうではなく単なる警らであれば違法。
以前の記事でも書いたように、北海道道路交通法施行細則は一定の場合に白バイやパトカーについて「速度標識に従う義務」を免除します。
つまりそれらの白バイやパトカーには「速度標識がない道路」になるので、法定最高速度に従う義務がある。

 

北海道道路交通法施行細則の規定は単に「速度標識がある道路において速度超過車の取締りであれば、赤色灯をつけないまま法定最高速度まで出してもいい」というだけの規定ですが、コメント頂いた方もそうでしたし、一部の方々は北海道道路交通法施行細則を読み間違いしているかと。

 

先日もメールにて「お前の解釈は間違っている」と言われてしまいましたが、これについては同じ規定がある他県だと解釈通達が出ていて解説してある通り。

 

おかしな解釈を信じる前に、条文をきちんと確認し、他県の通達とも整合性を確認されたほうがいいと思いますよ。
白バイやパトカーが警ら中に「速度無制限になる」なんてルールがあるわけなくて、細則は法を越えられないわけですから…

 

一例として、全く同じ内容の細則がある石川県の解釈。

北海道道路交通法施行細則 石川県道路交通法施行細則
第3条の2

法第4条第2項の規定により交通規制の対象から除く車両は、道路標識等により表示するもののほか、次の各号に掲げるとおりとする。
⑵ 最高速度の規制の対象から除く車両
イ 専ら交通の取締りに従事する自動車(高速自動車国道の本線車道にあっては100キロメートル毎時、その他の道路にあっては60キロメートル毎時を超える最高速度の規制を除く。)

第五条

法第四条第二項の規定による交通規制の対象から除く車両(以下「規制対象除外車」という。)は、道路標識等により表示するもののほか、次の表の上欄に掲げる規制について、それぞれ当該下欄に掲げる車両とする。

二 最高速度の規制

専ら交通の取締りに従事する自動車(最高速度の規制が令第十一条又は令第二十七条に定める速度以下の場合に限る。)

表現に差がありますが、内容は同じ。
そして解釈はこうなる。

2 最高速度の規制対象から除く車両

警察用車両の最高速度については、道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)では、専ら交通の取締りに従事する自動車(以下「交通取締車」という。)であっても、最高速度の違反の車両等を取締中の緊急自動車を除いては、最高速度の規定(法第22条)の適用を除外する規定がない。したがって、交通取締車であっても、公安委員会の最高速度の規制(以下「指定最高速度」という。)に従わなければならないので、これらの車両をあらかじめ指定最高速度の対象から除外し、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号。以下「令」という。)第11条に定める60キロメートル毎時を最高速度とするただし、指定最高速度が60キロメートル毎時を超えているときは、指定最高速度を交通取締車にも適用するものである。
なお、交通取締車が指定最高速度の規制の対象から除かれたのは、指定最高速度の規制区間内において、速度違反の車両等を追尾する場合の適応性を担保するためのものである。

 

https://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/information/upload/kisei20150731-3_1.pdf

「指定最高速度の対象から除外し、道路交通法施行令第11条に定める60キロメートル毎時を最高速度とする」とありますが、指定最高速度標識に従う義務から除外したら、従うべき最高速度が法定最高速度になるのは当たり前。

 

施行細則は単に「標識にかかわらず法定最高速度までは赤色灯無しで速度超過車の追尾をしてよい」というだけの規定で、そこからさらに法定最高速度を越えて追尾する際には赤色灯をつけないと違法になります。
速度超過車の追尾をする際に、法定最高速度を越えて赤色灯をつけないままだとパトカーや白バイも違法になりますが、赤色灯をつけていても速度超過車の追尾以外では時速118キロを容認する規定はありません。

 

パトカーが赤色灯をつけずに速度超過車を取締りしても…
ちょっと前に書いた内容ですが、これ。 なお、警察官がパトカーにより最高速度を超過して速度違反車両を追尾した場合において、赤色警光灯をつけていなかつたからといつて、警察官について道路交通法二二条一項違反の罪の成否が問題となることがあるのは格別...

 

他県の通達とも整合性を確認しましょう。
個人的にはなぜおかしな解釈を信じるのか不思議なんですが。


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