マヴィックのホイールは、エアロのコメットシリーズ、ファスト&ライトのコスミックシリーズ、エンデュランスモデルのキシリウムシリーズと3つの方向性が違うホイールがあります。
その中で定番とも言えるキシリウムシリーズですが、長年マヴィックを支えてきた名作ということもあり、なかなかこだわった作りになっています。
アルミリムのキシリウム系は、キシリウムUST、キシリウムエリートUST、キシリウムプロUSTとありますが、この3つは単に重量の違いだけと見ると非常につまらない!
中身が全く違うのです。
Contents
スペックからおさらい
最初に、皆さんがホイールを見るときに重視するであろう、重量などのスペックを見ていきましょう。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST | |
F重量 | 775g | 665g | 590g |
R重量 | 895g | 855g | 820g |
前後重量 | 1650g | 1520g | 1410g |
リム | アルミISM | アルミISM 4D | アルミISM 4D |
ハブ(フリー) | FTS-L | FTS-L | インスタントドライブ360 |
ハブ(調整機構) | QRM | QRM+(調整可能) | QRMオート |
スポーク素材 | スチール | スチール | アルミ |
Fスポークパターン | 18本ラジアル | 18本ラジアル | 18本ラジアル |
Rスポークパターン | 20本
DS:2クロス NDS:ラジアル |
20本
イソパルス組 |
20本
イソパルス組 |
定価(税別) | 65,000 | 95,000 | 140,000 |
スペックだけ並べるとこうなります。
これを見て、
こういう見方をすると、クソつまらないホイールになります。
重量以上に気にするポイントは、
・リムの切削技術
・リアスポークのパターン
・スポーク素材
この3点です。
ここを見ないで重量だけ比較すると、クソつまらない結果にしかなりません。
3つのキシリウムの違い
リムの切削技術
リムのスペックを見ると、こうなっています。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST |
ISM | ISM 4D | ISM 4D |
ISMというのはインタースポークミリングの略で、要はリムのスポークとスポークの間を切削する技術です。
キシリウムだけがISMで、他二つはISM 4Dとなっています。
ISM 4Dのほうが上位の技術で、単に削るだけでなく滑らかさも追求し空力まで良くするという技術です。
ISM 4Dのほうがリムが軽量に仕上がりますので、キシリウムエリートとキシリウムプロはリムが軽いということになります。
ちなみに、キシリウムエリートとキシリウムプロは、リム自体は全く同じです。
こちらは私物のキシリウムエリートSという古いキシリウムですが、リムの切削はありますが、4D加工になる前の切削です。
切削した部分がシルバーになっているので、油汚れが目立って大変ですw
(現行モデルは全てブラックになってます)
キシリウムエリート(&プロ)のフロントリムでだいたい410gとかそれくらいですが、キシリウムのリム重量はちょっとわかりません。
ただキシリウムエリートのリムよりは重くなることは間違いありません。
リムの重量が軽くなると加速時にも有利ですし、リム重量の50g差は結構体感できる要素です。
ゾンダとかだと460gとかありますし、軽量リムで知られるデュラエースC24のフロントリムで385g程度。
デュラC24は約20gのリムテープが加算されますから、トータルのリム重量はキシリウムエリート(&プロ)はかなり軽いんですね。
マヴィックは元々リム屋ですので、リムがいいのがマヴィックの特徴かと。
スポークパターン
次にリアホイールのスポークパターンを見ていきましょう。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST |
20本
DS:2クロス NDS:ラジアル |
20本
イソパルス組 |
20本
イソパルス組 |
DS:ドライブサイド(フリー側)
NDS:ノンドライブサイド(反フリー側)
スポーク数は全て同じですね。
キシリウムはフリー側が2クロス、反フリー側がラジアルです。
キシリウムエリートとキシリウムプロは、イソパルス組になっています。
イソパルス組というのは、フリー側がラジアル組、反フリー側が2クロスというマヴィック独特の組み方です。
こちらは私物のキシリウムエリートSですが、反フリー側はクロスしてますよね。
フリー側はラジアル組。
つまりスポークがクロスせずに放射状に延びています。
つまり、キシリウムと、キシリウムエリート(&プロ)では、左右のスポークの組み方が逆なんですね。
2クロスは駆動剛性重視、ラジアルは横剛性重視なのですが、イソパルス組は横剛性を高めながら駆動剛性を発揮し、それでいて左右のスポークテンションを是正するという組み方です。
マヴィックには、コスミックプロカーボンUSTとコスミックプロカーボンSL USTというホイールがありますが、
https://roadbike-navi.xyz/archives/7104
この二つもリム自体は同じもので、スポークパターンを変えているホイールです。
SLはイソパルス組で、非SLはキシリウムと同様にイソパルスを逆にしているんですね。
これにより、非SLはSLよりも剛性を落としているのですが、キシリウムも同じで、キシリウムエリート(&プロ)よりも剛性を落としたモデルということになります。
こちらのハブは現行モデルのキシリウムエリートUSTのハブですが、
スポークパターンはフリー側がやはりラジアルです。
ハンフリー側はクロスしているのでイソパルスですね。
ちなみにキシリウムエリートの現行モデルは、ハブのカラーが選べます(イエロー、レッド、ブラック)。
フルクラムでは、レーシング3以上のホイールでリアスポークが2:1パターンになっていますが、あれも左右のスポークテンションの是正という意味合いです。
レーシング5とかだと2:1になっていないわけで、そこで差別化しているわけです。
スポーク素材
最後にスポーク素材です。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST |
スチール | スチール | アルミ |
キシリウムエリートとキシリウムプロはリムが同じでスポークパターンも同じなのですが、最後にスポーク素材が違います。
プロだけアルミスポークですが、アルミスポークのほうが剛性が高いので、ここでエリートとプロを差別化しています。
ちなみにキシリウムプロはメーカーサイトではジクラルスポークとなっていますが、ジクラルスポークというのがアルミスポークを指します。
プロでは一本だけマヴィックのシンボルカラーのイエローのスポークになっているのがかっこいいポイント。
他社でアルミスポークというと、フルクラムのレーシングゼロやカンパニョーロのシャマルウルトラがあります。
この3つは同じようなランクと見ていいでしょう。
ついでにハブも
ハブについてはそこまで大きな要素ではないと思っているのですが、こういう違いがあります。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST |
FTS-L | FTS-L | インスタントドライブ360 |
FTS-Lというのはマヴィック従来の二つ爪のラチェットで駆動するタイプです。
(画像はキシリウムエリートSなので、現行モデルとはハブカラーが違います)
こんな小さな爪が二つあり、
それがフリーボディ内のギザギザに引っ掛かって駆動します。
キシリウムプロだけはインスタントドライブ360というシステムですが、これはDTのスターラチェットと同じです。
40の歯が噛みあうことで駆動するのですが、二つ爪のFTS-Lよりも駆動剛性が高まるという仕組みです。
ハブの調整機構でキシリウムエリートだけはQRM+となっていますが、これはホイールをフレームに付けた状態でガタが取れる仕組みです。
専用のレンチを使って調整できます。
キシリウムだとここの調整はできず、キシリウムプロは調整不要というシステムです。
これらの違いからみる、3つのキシリウムの違い
ここまで挙げた違いからまとめるとこうなります。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST | |
リム重量 | 普通 | 軽い | 軽い |
ホイール剛性(相対的に) | 低い | 中 | 高い |
重量(相対的に) | 重 | 普通 | 軽い |
ホイール剛性を見ていくと、剛性を高める仕組みがこうなります。
キシリウムUST | キシリウムエリートUST | キシリウムプロUST |
ー | イソパルス | イソパルス
アルミスポーク インスタントドライブ360 |
重量差と価格だけで見ると、キシリウムUSTとキシリウムプロUSTの差は、重量差240g、価格差75000円となりますが、そんな所よりも剛性を高める仕掛けが全く違うということになるわけですね。
キシリウムはリムも普通で、剛性はそれほど高くないホイール。
キシリウムエリートとキシリウムプロは、同じ軽量リムを使いながらも、スポーク素材とハブで剛性差を出しているホイール。
こうなるわけです。
エリートとプロの差も、重量価格だけ見れば、
110gの差で、55000円も違う
これだけになってしまいますが、中身はかなり違うという話なわけです。
Mavic【マビック】Ksyrium Pro UST Clincher Tubeless Road Wheelset
どのキシリウムを買うべきか?
キシリウムと言ってもこれだけ違うホイールなわけで、プロは剛性をかなり高めているモデルです。
前に
アルミスポークは意味がない
と衝撃的な発表をして物議を醸した方がいましたが、前のモデルのキシリウムエリートSとキシリウムSLS(現モデルのプロに相当)は、ハブはどちらも二つ爪、スポーク素材の違いくらいでした。
それでもハッキリわかる乗り味の違いです。
キシリウムについては、時々完成車についてくることもあるようですが、完成車についてきたらちょっとラッキー、だけど鉄下駄ホイールからの買い替え目的だったら、キシリウムエリート以上がオススメです。
キシリウムプロも、前のモデルのキシリウムSLSを借りて100キロほど走った頃があるのですが、その当時はナローリム&クリンチャーだったこともあると思いますが、結構硬いホイールという印象でした。
今のモデルはチューブレスなので、多少は空気圧で剛性をコントロールできますので、硬いと感じても多少の調整幅はあるかもしれません。
とにかく良く進むホイールを、というならキシリウムプロ、お値段を抑えながらもいいホイールをというならキシリウムエリートでも十分満足いくかと思います。
ちなみに、鉄下駄からキシリウムエリートUSTに変えた方のインプレです。
ちなみにですが、ディスクブレーキ版の三つのキシリウムの場合、キシリウム(無印)の時点でインスタントドライブ360になっています。
これはスルーアクスルのシャフト径の問題から、FTS-Lのフリーボディでは対応できなかったのだろうと言われていますが、スポークパターンなどはキシリウムエリート以上でイソパルス組になっているなど、リムブレーキ版と共通点は多いです。
Mavic【マビック】Ksyrium Elite UST Clincher Tubeless Road Wheelset
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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