こちらで挙げたケースについて、このようなケースで「左方優先」が働かない理由について質問を頂いたのですが、
これは法律上は明確ではありません。
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「左方優先」と「直進優先」の関係性
確かに以下がバッティングするようにも見えます。
第三十六条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。
一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車
36条1項1号は「次項の規定が適用される場合」を除外していますが「次条の規定が適用される場合」を除外していない。
つまり36条1項1号と37条がバッティングするようにも見える。
参りましたね…
交差点事故は「出会い頭」とよく言われますが、せっかく出会った二人は見つめ合い譲り合う…というわけではありません。
交差点で出会った二人が恋に落ちる…ということでもいいのですが、以下の判例があります。
判例は札幌高裁 昭和50年11月27日。
見通しが悪い交差点なので徐行義務(42条1号)がありますが、左方優先と直進優先がバッティングしました。
交差点で出会った二人が、互いに譲り合い、見つめあって、それからお別れすれば円満に解決したでしょう。
しかし現実には対立し、やがて衝突した。
道路交通法上は双方ともに優先権を持つように読めるだけに、困ってしまいました。
裁判所の判断はこちら。
相手車両が左方道路からの右折車である場合には、いわゆる左方車優先の原則(法36条1項1号)との関係が問題になるのであるが、法36条1項は、同条2項が適用される場合を除きながら、法37条が適用される場合を除外していないので、条文の文言上、交通整理の行なわれていない交差点における直進車と左方道路からの右折車との通行順位につき、法36条1項1号と37条のいずれを優先的に適用すべきであるかが必ずしも明らかではない。しかしながら、右折車は右折のために当然に減速する必要があるのであるから、直進車と右折車を比較すれば、一般的に右折車の方が危険回避措置をとることが容易なのであつて、右折車はたとえ自車が左方車であつても右方直進車の進行妨害をしてはならないと解することが相当であり、そのように解することが道路交通の安全と円滑を図る法の目的にかなうところであると考えられる。したがつて、右のような場合には、法36条1項1号を排して法37条が適用されなければならない。
札幌高裁 昭和50年11月27日
右折するほうがより注意義務が大きなことから、法36条1項1号よりも37条が適用され、直進優先になります。
なお、互いに見つめあうことについては禁止されていません。
したがって
冒頭の動画について五分五分では納得いかないし理不尽と考える人もいるでしょうし、自転車に重大な違反があることは間違いありませんが、直進車にも徐行義務違反がある以上、過失責任は免れません。
徐行していたならだいぶ過失が減る可能性もありますが…
しかしまあ、「出会いは突然」ですよね。
出会いを求める人は交差点にどうぞ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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