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破線は進路変更禁止!?指定通行区分の効力とは?

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だいぶ前になりますが、こんな記事がありましたよね?

 

【実録】交通違反の青キップを切られたけど、反則金を支払わず刑事手続を求めていくとどうなるか | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい
交通規則は守るものであるし、違反をしたらその償いをせねばならない。けれど時々その過程や根拠において理不尽さを覚えた経験は誰にでもあるのではないだろうか。これはそんな状況を究明すべく、正式な手続きを突き詰めたレポートである。

 

詳しくは記事を読んでからにしていただけると助かりますが、読者様から「なぜ破線なのに進路変更が違反になるのか?」と質問を頂きました。

 

これですが、正直なところ違反として取ることが妥当とは思いませんが、なぜ違反になるか説明します。

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ポイントになるのは「交差点の範囲」

現場は世田谷区の瀬田交差点です。

 

 

指定通行区分と進路変更禁止の車両通行帯が四車線ありますが、横断歩道を越えると破線(白線)になります。

 

 

マップはこう。

イラストにします。

この記事のライターさんは第2通行帯(直進レーン)を進行し、2つ目の部分を左折した。

これについて指定通行区分違反として検挙したわけです。

 

さて、ここで考えてみましょう。
指定通行区分の通行方法は道路交通法35条1項。

(指定通行区分)
第三十五条 車両(特定小型原動機付自転車等及び右折につき一般原動機付自転車が前条第五項本文の規定によることとされる交差点において左折又は右折をする一般原動機付自転車を除く。)は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、同条第一項、第二項及び第四項の規定にかかわらず、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。(以下略)

分かりやすく抜き出すとこうなります。

車両は、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。

「交差点で」とありますが、要は交差点を通行する際に左折したいなら左折レーンに、直進したいなら直進レーンに、というルール。
つまり、交差点の範囲がどこなのかの問題なんですね。

 

警察的には赤の範囲全て含めて複合交差点と解釈している。
なので直進レーンを進行したクルマは、「この交差点において」直進にしか進行できない。

そうするとこれは、直進レーンから左折した扱いになりますよね。
上図の範囲を交差点と捉えれば。

ところがこの記事を書いた人は、2つの交差点と解釈した。

2つの交差点と解釈すれば、指定通行区分の効力は青交差点にしか及ばない。
2つの交差点と解釈した場合、この人は青交差点を直進した後に赤交差点を左折した扱いになるため、指定通行区分違反が成立しないことになる。

紛らわしい要素を挙げるとするならば、交差点の入口と出口付近にそれぞれ信号機があること。
別個の交差点だと誤認するリスクがあります。

 

 

信号機が手前と奥にあることから、2つの交差点だと誤認しかねない。

つまり、「破線は進路変更禁止なのか?」という論点がそもそもおかしくて、交差点の範囲がどこなのか?という話なのです。
一個の複合交差点と解釈した場合、35条1項の指定通行区分の効力は「赤の範囲」に掛かる。

直進レーンから進行した以上、「交差点を直進」しないといけませんよね。

 

ところがこの記事を書いた人は、2つの交差点と解釈した。

2つの交差点と解釈した場合、35条1項の指定通行区分が及ぶ範囲は「青の範囲」になり、青交差点を直進後に赤交差点を左折したことになる。
2つの交差点だと解釈すれば、指定通行区分違反にはなりませんよね。

 

35条1項の罪は故意(120条1項3号)のほか、過失の処罰規定もあります(120条3項)。
これを故意・過失どちらで捉えるのか疑問がありますが、「破線は進路変更禁止なのか?」はそもそも関係なくて、「交差点の範囲はどこまでなのか?」が問題になります。

 

2つの交差点と捉えれば合法、1つの交差点と捉えれば指定通行区分違反(35条1項)。

交差点内をイエローラインにできない理由

じゃあ紛らわしいから交差点内の破線をイエローラインにすればいいよね?というわけにはいかないんですね。

 

なぜなら、イエローラインにすると左方道路から左折して合流する車両の動きが制限されてしまう可能性があるので。

 

 

冒頭の記事を書いた人が争える余地があるとすれば、「交差点の範囲が分かりにくいため2つの交差点と誤認したことにより指定通行区分違反が成立しない」。

 

広い意味でいうところの標識標示の誤認とも言えますが、個人的にはこの方に違反を認定する暇があるなら、構造と規制内容を見直して分かりやすくするほうがいい気がします。
要はヒューマンエラーを誘発するリスクがあるにもかかわらず、構造や規制内容は見直すことなく人を責めるわけですが、下記を見てください。

 

分かりにくいということは事故多発するリスクがあります。
現実として「ワースト4」や「ワースト2」と出てきますが(年度により違う)、

ワースト4:瀬田交差点|事故多発交差点マップ (2021年版)|日本損害保険協会
全国47都道府県で人身事故が多発した交差点のデータをまとめました。交通事故低減のヒントに幅広くご活用ください。
ワースト2:瀬田交差点|事故多発交差点マップ (2017年版)|日本損害保険協会
全国47都道府県で人身事故が多発した交差点のデータをまとめました。交通事故低減のヒントに幅広くご活用ください。

分かりにくい時点で構造の敗北だと思うし、この人を違反認定し取締りしたところで事故防止にはあまり関係ない気がします。
なお、否認事件として検察送致されているようですが、不起訴とのこと。

 

自転車でも「この交差点の二段階右折ってどうやるの?」みたいな交差点はいくらでもありますよね。
ダブル左折レーンを直進するにはどうするのよ?などとよく問題になりますよね。

 

自転車は第1車線からしか直進できないことを知らないドライバーも多い。
これは昔からアルアル話なのかもしれませんが、多車線交差点において、自転車は最左車線からしか直進できないことを知らないドライバーはそれなりにいる。 最も左端の車線が左折専用レーンだったとしても、自転車は左折レーンから直進するしかない規定です。...

 

免許持っていたら交差点の範囲を即座に理解できる…なんてわけもないし、上の動画なんて免許持っていても「自転車のルール」を知らない人は知らない。
そもそも交差点の範囲なんて昔から判例上も争いが多い気がしますが、個人的には「こんな交差点もわからないのかよ」と片付けようとするから事故が多発するような気がします。

 

ヒューマンはエラーするものだし、2つの交差点と解釈したとして非難に値するのかはだいぶ疑問。

 

なので読者様から頂いた質問。

読者様
読者様
この記事内容について教えてください。
なぜ破線なのに進路変更禁止になるのかわかりません。

答えとしては、こちら。

1つの交差点と捉えれば、直進レーンを進行した以上、交差点を直進しかできないために左折したドライバーは指定通行区分違反になります。
2つの交差点と解釈すれば、直進レーンを進行して交差点を直進し、2つ目の交差点を左折した扱いになるため指定通行区分違反にはなりません。
つまり、「交差点の範囲がどこまでなのか?」の問題です。

まあ、初見の人がすぐに理解できる構造じゃないと、すでに敗北感しかないような気がします。
なお複合交差点と解釈した場合、「右折する際は交差点の側端に沿って徐行」する軽車両はなかなか難しい動きになりますが、それが正しいのかも含めて疑問が残ります。

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