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オートバイが横断歩行者と衝突後、違法駐車車両と衝突。過失割合はどうなる?

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違法駐停車車両が交通事故に関わった場合に賠償責任を負うことがある話は何度か書いてますが、

違法駐停車を追い越ししたら対向車と衝突。違法駐停車車両は損害賠償責任を負うか?
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適法駐車でも損害賠償責任を負うことがある事例。
ちょっと前に違法停車により惹起された事故について損害賠償責任を認めた判例を紹介しましたが 違法駐停車ではないものの、適法駐車車両が事故を誘因したとして損害賠償責任を認めた判例があります。 適法駐車でも損害賠償責任を負う事例 判例は名古屋地裁...

下記のような判例があります。

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横断歩行者と衝突後、違法駐車車両に衝突

判例は東京地裁 平成8年3月6日。
事故の態様です。

片側三車線の信号がある横断歩道。
歩行者は青信号で横断し、オートバイは対面信号が赤なので減速。

オートバイは対面信号が青に変わったことから加速。
第2第3車線の停止車両とグリーンベルト(中央分離帯)によりオートバイからみて右側方向は視認できませんが、残存横断歩行者がいたため衝突(第一事故)。

横断歩行者と衝突したオートバイはそのまま滑走し、違法駐車車両に衝突(第二事故)。
オートバイの運転者が死亡した事件です。

 

なお時間帯は深夜ですが、以下の状況になります。

本件道路は駐車禁止、転回禁止、時速50キロメートルの速度規制がなされている幹線道路であり、事故直後の実況見分時と同様、本件事故当時も車両の通行のかなり多い交通頻繁な状況であつたと推認される。

 

本件事故当時は降雨はなく、本件事故現場が市街地にあつて照明のあるところであるため、視界状況は良好であつたと推認される。

横断歩行者、オートバイ、違法駐車車両が介在した事故になりますが、オートバイ運転者Aの遺族が横断歩行者X、違法駐車車両Yに損害賠償請求した事件です(反訴あり)。

 

先に過失割合から。
第一事故についてはこちら。

横断歩行者X オートバイA
30 70

第二事故についての過失割合はこちら。

オートバイA 横断歩行者X 違法駐車車両Y
55% 15% 30%

違法駐車車両からすると「予見不可能だし因果関係がなく過失がない」と主張するわけですが、裁判所は第一事故について駐車車両との因果関係は否定(当たり前)。
第二事故については因果関係を肯定。

3  被告Yの運行供用者責任
(一) 本件第一事故との関係について
加害車の駐車行為が本件第一事故の発生に対して何らかの要因となつたと認めるに足りる証拠はなく、本件第一事故との間に相当因果関係は認められない。

(二) 本件第二事故との関係について
(1) 加害車は、本件道路上に駐車されていたのみであつて、積極的に本件第二事故を惹起させたわけではないが、本件道路のように、夜間においても車両の通行の頻繁な、駐車禁止の交通規制の敷かれている幹線道路上において、駐車位置が道路の左端とはいえ、車両を駐車することによつて車両が最も安全に走行することのできる第一車線をほぼ完全に占拠して同車線を走行しようとする車両の通行を困難な状態を惹起させることは、後方から走行してくる車両にとつては、本来安全に走行し得る道路上に巨大な障害物が作出されたことに等しく、後続車両の安全かつ円滑な走行を妨げ、車両間の追突等の交通事故を惹起する事態を招きかねないたいへん危険な行為であり、その違法性は非常に高いといわなければならない。
(2) そして、このような駐車行為を行えば、頻繁に通行する車両の円滑な走行の妨げとなり、後方から走行する車両が衝突する危険性を惹起することは、駐車行為を行う運転者にとつて容易に予測し得るものというべきである。
(3) 前記認定に係る加害車の損傷程度からすると、Aの死亡が、本件第一事故の衝撃ではなく、むしろ、本件第二事故での衝撃によつてもたらされたと推認するのが合理的であり、Aの死亡と本件第二事故との相当因果関係を認めることができる
(4) 以上の事実を踏まえると、Yによる加害車の駐車行為は、本件第一事故の発生との間には因果関係はないものの、Aの死亡をもたらした本件第二事故を発生させた不法行為として評価することが相当であるから、加害車の運行供用者としての地位にある被告Yによる前記免責の主張は採用できない。

 

東京地裁 平成8年3月6日

第二事故についての過失割合はこちら。

本件事故の発生に対するY、X、Aの事故当事者の各過失の存在が認められるが、Aの死亡という最も痛ましい結果となつたのは、加害車に衝突したときの衝撃が強かつたことによるものであり、それはまさにAが加速した被害車の速度が高かつたことに起因すること、道路を走行する車両にとつては、横断歩道を歩行する歩行者の安全確保が最も重要な注意義務の一つであるところ、信号残り状態で横断しようとする歩行者であつても、これは遵守されなければならないのであり、右注意義務をまずもつて守らなかつたAの過失が本件事故の最大の引き金となつていることを考慮すると、本件において、過失相殺されるべきAの過失割合としては、55%とするのが相当である(残り45%のうち、被告らが負担すべき過失割合は、被告Xが15%、被告Yが30%とするのが相当である。)。

 

東京地裁 平成8年3月6日

この判例、2つの事故があるわけです。

 

①信号が赤から青に変わり、かつ進行方向右側の視認性が悪い場合には残存横断歩行者の可能性を考慮しないといけない。

右車線の車両が「なぜ青信号で進行しないのか?」がポイントになる。

 

②違法駐車車両は「ただ止まっているだけ」でも不法行為責任を負う可能性がある。

 

③横断歩行者は第一事故については被害者ですが、第二事故については加害者でもある。

横断歩行者の過失

あくまでも横断歩行者は青信号で横断開始しているので、38条1項により優先権があると考えられますが、青点滅信号は「速やかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならないこと」として歩行者にも注意義務を課してますし、死角であれば青信号で第一車線を進行する車両があることが予見可能。

なので歩行者側にも注意義務違反があります。

被告Xは、本件横断歩道を開始するに当たつては、対面する本件歩行者信号が青色であることを確認しているものの、横断歩行者としては、対面する同信号の表示に注意を払い、青点滅の状態になつた場合には、速やかに横断行為を完了するか、それが困難であれば、元の歩道に戻るか又は本件のような中央分離帯のある中間地点に退避するかの行動をとり、歩行者用信号が赤色になつた後に青色となる本件車両信号に従つて本件道路を通行する車両の通行の妨げにならないように配慮すべきであるにもかかわらず、途中で本件歩行者信号が青点滅から赤表示となつたことに気付くことなく漫然と歩行を継続したために、被害車と衝突するに至つたものであるから、被告Xには、周囲の交通状況に注視、配慮すべき安全確認義務を懈怠した過失が認められる。
他方、Aも、本件横断歩道に差し掛かつた段階で、本件車両信号が青色になつたからといつてそのまま加速、通過するべきではなく、信号残りの状態で横断しようとする歩行者の存在を念頭に置き、左前方のみならず、右前方の交通事情に対しても注意して走行すべきであり、特に、本件では、中央分離帯にある植樹の存在や第二車線上に停止していた4、5台の車両の存在により右前方の注視が困難なのであるから、十分に速度を落とした上で本件横断歩道を通過することが必要であるにもかかわらず、減速するどころかかえつて加速して走行していたことについて、安全運転義務懈怠の過失を認めることができる。

 

東京地裁 平成8年3月6日

第一事故については歩行者過失が30%。

横断歩行者X オートバイA
30 70

車両運転者としては残存横断歩行者が予見可能な場面なので減速すべき注意義務違反を認定してますが、青信号は「進行することができる」であって「進め」ではないので、誤解しないよう。

違法駐車車両の責任

以前書いたように、違法駐停車なら事故との因果関係を認める場合があります。
違法駐停車ではなくても事故の誘因になれば不法行為責任を認定する場合もあるのですが、要はカジュアルにそのへんに停めちゃダメなんですよね。

 

第二事故について違法駐車車両の責任を30%としていますが、

オートバイA 横断歩行者X 違法駐車車両Y
55% 15% 30%

違法駐車が事故との因果関係が認められれば過失責任を負います。
「勝手に突っ込んできて知らんがな」とはならないので。


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