信号がない横断歩道については、「道路交通法上」は道路標識と道路標示の両方がないと無効になるわけですが、先日書いたこちら。

横断歩道の道路標示が完全消失していたとして、無罪(過失運転致傷)とした判例があります。
事故発生3ヶ月前の横断歩道。
完全に路面標示が消失。
刑事と民事で過失認定が割れる理由を書きましたが、ご意見を頂きました。

横断歩道は道路標示と標識がセットで無いと効力が無い
イコール雪国では冬期間の路地にある横断歩道は十中八九が効力無効になるのですが(^-^;
圧雪路の下に道路標示が埋もれ真っ白になるので・・・
これについては一応、特例があります。
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横断歩道の積雪特例
横断歩道の設置については施行令1条の2にありますが、
第一条の二
3 法第四条第一項の規定により公安委員会が横断歩道又は自転車横断帯(以下「横断歩道等」という。)を設けるときは、道路標識及び道路標示を設置してするものとする。ただし、次の各号に掲げる場合にあつては、それぞれ当該各号に定めるところによることができる。
一 横断歩道等を設けようとする場所に信号機が設置されている場合 道路標示のみを設置すること。
道路標識「及び」道路標示が必要としながらも、1条の2第3項1号で「信号がある場合は道路標示のみ」としています。
で、この規定には「2号」がありまして、未舗装路や積雪の場合はこうなる。
内閣府令(施行規則)では未舗装路や積雪特例として、横断歩道の四隅に標識を立てることになってまして、
未舗装路や積雪等で道路標示の設置や管理が難しい場合には、標識を四隅に立てると標識で囲んだエリアが横断歩道になる特例があります。
ぶっちゃけ見たことがない…
ちょっと探して見ましたが、
これだと「四隅」にはないのですが、積雪の影響が大きい横断歩道だとオーバーハング方式でやたら標識をアピールしていたりする…のですかね?
一応「積雪特例」なるものもあるにはあるのですが、たぶん知られていないと思う。
けどたぶん、積雪がひどい中かっ飛ばす車両は少ないだろうし、仮に積雪で道路標示が埋もれても何とかなるのだろうか?
道路交通法の問題と、注意義務は別
こちらの記事でも書きましたが、

「過失運転致死傷罪」の注意義務違反(過失)って、必ずしも道路交通法の義務に限っていません。
道路交通法上は横断歩道が無効になったとしても、そこが横断歩道だと理解できる程度であれば注意義務はあるわけだし、横断歩行者がいることも予見可能なので事故を回避するために減速する注意義務があるのは当然。
なのでこちらで取り上げた内容って、

たぶん特殊な事例なんじゃないかなと。
これの刑事判決文(横浜地裁川崎支部)を探しても見つからないのですが、報道内容からすると検察は「被告人は何回もここを通行していて、横断歩道があることを認識していただろ!」と主張した様子。
事故は2018年10月31日昼に発生した。川崎市川崎区の片側2車線の市道で信号機のない横断歩道を渡っていた男性が、左側から直進してきたタンクローリーにはねられた。一命は取り留めたものの、右半身にまひが残り、高次脳機能障害の影響で介護が必要になった。
周辺は工場地帯。大型トラックが頻繁に往来し、舗装が傷みやすい。県警は18年4月、現場近くの企業から消えかかった横断歩道の白線を塗り直すよう要望を受けていた。だが、それから半年がたっても県警は周辺と合わせて状況を確認中で補修はしていなかった。 「消えた横断歩道」ではねられた 摩耗を放置した神奈川県も一部責任を認め和解 劣化した白線は全国に:東京新聞 TOKYO Web川崎市の横断歩道で歩行者が車にはねられた一因は「白線」が消えていたことにあると、道路標示を管理する責任を負う神奈川県が過失の一部を認め...
判決は「車の進行方向の横断歩道を示す路面の白線標示は完全に消失していた。現場が横断歩道上であると認識するのは困難」などとし、「横断歩行者の予見は可能ではなかった」とした。また、検察側が「被告は過去に現場を複数回通行していた。横断歩道と認識できた」と主張した点については、「道路標示を記憶することを運転者に義務付けすることはできない」と退けた。
白線が消えた横断歩道、「摩滅が一因」で交通事故 県が受け入れ和解:朝日新聞デジタル横断歩道を歩行中、車にはねられたのは横断歩道の白線が摩耗して消えていたためだなどとして、川崎市の男性(66)らが道路標示を管理する神奈川県などに損害賠償を求めた訴訟は24日、横浜地裁川崎支部で和解が…
けどさすがにこれだと、刑事責任を問うのは難しかったのかもしれません。
同じく道路標示がだいぶ消えていた横断歩道について、以下の過失を認定して有罪にした判例もあるのですが、量刑判断としては「被告人車両の進行方向の車線上の横断歩道の白線表示がほぼ消失し」として考慮していました。
被告人は、(中略)、交通整理の行われていない交差点を(中略)に向かい直進するにあたり、過去に同交差点を通行したことがあったため、同交差点出口に横断歩道が設けられ、その白線表示の一部が消失し、一部が残存していることを知っていたのであるから、歩行者等が同表示に従って横断することを予見できた上、当時、同表示の手前の右側車線には右折待ちの停止車両があったため、同表示の右方の見通しが困難であったのであるから、同表示の手前で徐行又は一時停止し、同表示に従って横断する歩行者等の有無に留意し、その安全を確認しながら進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、
大津地裁 令和3年2月12日
積雪特例の横断歩道がどんだけ存在するのかは知りませんが、法律上は標識を四隅に立てると横断歩道になります。
未舗装路や積雪の特例ですが、存在するなら是非みたいです。
一応、こういう法律により積雪で横断歩道が埋もれてもカバーする仕組みはありますが、あくまでも「道路交通法上の話」なんですね。
仮に「道路交通法上は」横断歩道が無効になっていても、そこが横断歩道だと認識できるのであれば注意義務は免れない。
横浜地裁川崎支部の刑事判決ですが、予告表示はギリギリ視認可能でして、
標識も視認可能。
もしこの標識がオーバーハング方式とあわせてこれでもか!というくらいついていたら、さすがに道路標示が完全消失していても有罪になったのかもしれません。
ダブルオーバーハング標識に、通常の標識の三点攻めでアピールしまくってますが…
ちなみにこのような場合。
横断歩道は全く見えませんが、歩行者用信号があるのでまだマシなんですかね。
横断歩道関係の判例ってかなり多くて、中にはなかなか興味深いものもありますが、積雪絡みの判例って見た記憶はないです。


「歩行者は当たり屋だ!」と主張して違反取消を求めている判例とか、「自転車横断帯を横断した自転車は当たり屋」として無罪にした判例や、損害賠償請求を棄却(つまり自転車過失100%)の判例、歩行者が横断歩道を通過した車両を蹴って全責任を歩行者にした判例などはありますが、



あまり勉強になる判例でもないし。
四隅に標識がある横断歩道をご存知の方は教えてください。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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