PVアクセスランキング にほんブログ村 当サイトはAmazonアソシエイト等各種アフィリエイトプログラムに参加しています。
スポンサーリンク

逆は正を打ち消せない。

blog
スポンサーリンク

先日の件ですが、

その横断歩道は信号があるか?歩行者用信号機がないけど車両用信号機がある場合。
以前から時々出てくる動画ですが、 元ネタはこちら。 これの事故現場はここ。 ちょっと考えてみましょう。 車道には信号機があるけど、歩行者用信号機はない。 そして横断歩道には横断歩道の標識があります。 さて、この横断歩道は信号があるでしょうか...

元ネタはこちら。

これの事故現場はここ。

「下から上に進行する際」には信号があるけど、上から下に向かう際には信号が視認できないのだから「下から上に進行する際」にも信号規制がないと主張する方もいるらしい。
つまり両方向に視認可能な対面信号がないと、どちらの信号も効力がないという考え方。

 

何か勘違いしてません?

スポンサーリンク

なぜすり替えた?

逆向き(上から下)に対面信号が視認できないことと、事故横断自転車には対面信号があることは別問題なので(信号無視罪の構成要件は対面信号に従わないことで成立する)、なぜにすり替えたのか意味がわからないのですが、記事でも触れたように警察的には仮に赤信号無視する歩行者や自転車がいても注意指導していない。
しかし事故が起きた場合には信号無視として処理せざるを得ない。

これって、警察的には「規制したくてした」のではなくて、「下から上方向には対面信号があることから結果的に信号規制された」というほうが正確かと。

規制するつもりがなくても、構造と法律上は信号無視の構成要件を満たしてしまう。

 

しかし
①逆向きに対面信号がないこと
②交差する脇道に信号規制がないこと
③交差する脇道がT字路で左折しかできないこと

 

などを考えれば、警察的には注意指導する必要がない。
けど事故になったときには、信号無視として処理せざるを得ない。
単なる信号無視なら違反者本人だけの問題だけど、事故となれば相手方がいるわけなので平等に法律を適用するしかないのだから仕方ない。
平等に法律を適用して事故処理するのが警察で、公平的見地から過失相殺するのが裁判所(民法722)。
警察が客観的事実を無視した事故処理をするわけにはいかないし、民事責任に大きく影響しかねないし、事故の調書を作成する上では信号無視として処理せざるを得ないだけの話。

 

要は構造と法律のバグでしかないし、警察的には注意指導する対象とは見てない。
逆向きに信号がないことが、正方向の信号を打ち消すとことにならないのはT字路の二段階右折なんかを考えれば分かりやすいかと。

二段階右折する際に対面信号がなかったとして、逆方向(右から左)に進行する信号の効力を打ち消すと考えるのかな…
このような交差点の場合、横断歩行者も三灯式信号に従いますが、逆方向に信号がないことと、正方向に対面信号があることは別問題。

 

そしてこのようなT字路二段階右折時に対面する信号がない場合に、その方向にある信号に従うべきかについては交通量や交差点の形状などから総合的に判断されるのですが、

警察的には注意指導してない&事故になったときには信号無視として処理するとの話だったので、事実上民事の問題がメイン。
なので民事の判例をみていきましょう。

規制効力がない赤信号

平成20年施行令改正後は「歩行者用信号」に普通自転車に対する効力がありますが、改正以前は歩行者用信号は普通自転車に対する規制効力がありませんでした。
もちろん昭和35年に道路交通法が制定されてから、車両が横断歩道を横断することを禁止したことはありません。

イ 横断歩道を進行する普通自転車が従うべき信号灯火を定めることについて

 

この項目に対しては、
○ 自転車に乗ったまま横断歩道を通行することはできないはずであり、また、自転車で横断歩道を通行することは大変危険。
といった御意見がありました。

今回の改正は、道路交通法の一部を改正する法律(平成19年法律第90号。以下「改正法」といいます。)により、例外的に歩道を通行することができる普通自転車の範囲を明確化したことに伴い、自転車横断帯が設置されていない交差点において、これらの普通自転車が横断歩道を進行して道路を横断することが見込まれることを踏まえ、横断歩道を通行する普通自転車が従うべき信号を車両用でなく歩行者用灯器とするものです。
道路交通法においては、普通自転車が横断歩道を通行することを禁止する規定はありませんが、横断歩道は歩行者の横断のための場所であることから、交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)において、横断歩道の通行について、歩行者の通行を妨げてはならない旨を周知し、歩行者の安全確保を図ることとしています。

 

警察庁パブリックコメント

なぜ?「自転車は横断歩道を乗ったまま横断しちゃダメ」という説が定着した理由。
いまだに「自転車は横断歩道を横断するときに、乗ったままではダメ」と理解している人がいます。 これは誤りでして、 同法が自転車に乗って横断歩道を通行することを禁止しているとまでは解せない 平成30年1月18日 福岡高裁 このように、自転車に乗...

 

改正以前の判例ですが、押しボタン式信号を自転車が赤信号のまま横断して起きた事故。
押しボタン式の歩行者用信号には当時、自転車に対する規制効力はない。
なので自転車からすると「信号がない横断歩道」になり、車道を通行する車両からすれば「信号がある横断歩道」になりますが、押しボタンを操作せずに赤信号で横断歩道を横断したことをどうみなすか?

原告が進行しようとしたすぐ近くには、本件横断歩道上を通過する歩行者用の押しボタン式信号機が設置され、右信号機のうち、東西道路側の車両用の信号機が本件交差点のすぐ近くに設置されており、東西道路を本件交差点に向かつて接近してくる車両からは、右信号機によつて本件交差点自体の交通規制が行われていると誤解し易い状況になつているのであるから、車両用の対面信号が青色を表示している際に本件交差点を南北に通過する場合には、東西道路を走行してくる車両の有無、動静に充分な注意を払うべきであるにもかかわらず、X車が停止したのに気を許し、左方に対する注意が不十分なままで本件交差点を通過しようとし、しかも、原告が、すぐ近くにある押しボタン式信号機を利用すれば、本件事故を容易に防ぐことができたと解されることの諸事情を考慮すれば、本件事故発生について、被告には40パーセントの、原告には60パーセントのそれぞれ過失があると解される。

大分地裁 平成7年8月24日

実質的に原告側の赤信号相当とみなして過失修正してますが、原告の主張は原告過失20%、被告の主張は原告過失90%でした。

 

何が言いたいかというと、このように道路交通法違反にはならない「信号無視風」のことがあっても実質的に赤信号無視相当に捉えることもあれば、道路交通法違反として構成要件を満たしてしまう赤信号無視があったとしてもそれを重過失とみなすかは別問題

 

これにしても、

赤信号無視として構成要件を満たしていても、実質的にはさほど重視されないと思われますが、この事故の過失割合は赤信号無視を除けば、広路車と狭路車の基本過失割合25:75から横断歩道通行分を修正して20:80が相場。
赤信号無視を勘案しても50:50程度だろうと思われますが、「この事故について」は信号無視の構成要件を満たしてしまうよね、という話が、「逆方向の話」にすり替えられていくのはある意味では衝撃です。

 

逆方向に対面信号がないことが、この横断自転車に対面信号がないことにはならないし、警察的にも「注意指導してないけど、事故の場合は信号無視として処理せざるを得ない」というだけの話がどこまで飛躍するのだろうw

 

しかし、逆方向の対面信号がないと、正方向の信号の効力まで打ち消すという恐ろしい考え方をする人がいるのは驚き。

 

仮に横方向の信号の一方が壊れていたときに、

対面信号が赤である側の効力を打ち消すと考えるのだろうか…
少なくとも対面信号が機能している限りは、対面している車両や歩行者が規制されるのは当たり前。
対面信号がない側をどう考えるかは別問題。

 

逆方向にも視認できないと成り立たないという前提がそもそも間違っているので(信号無視の構成要件は対面信号に従わないことで成立)、

全く意味がない主張。
けどこれって、「自転車を除く」の一方通行道路で逆向き自転車に標識や信号がない問題とも似ている面があるし、要は構造と法律が一致してないから起きるバグなのよ。
少なくとも対面信号がある横断自転車については、信号無視の構成要件を満たしてしまう。
しかし交差道路側に信号がないT字路という事情を考えると、可罰的違法性はないし警察的には注意指導する必要もない。
けど事故が起きた以上は、相手方との兼ね合いから平等に法を適用するしかなく、信号無視として処理せざるを得ない。

 

単にそれだけの話なのですが、なかなか不思議ですよね。
なお「逆向き」について信号無視罪の構成要件を満たしているのかについては疑問が残ります。
けど事故映像の話なので、そもそも「逆」は関係ないのよ。

 

逆向きに対面信号がないと、正方向の効力まで打ち消すと考える人がいるのはなかなかびっくりしますが、たまたま構成要件を満たしてしまうからそのように事故処理するしかなく、可罰的違法性はないのだから警察も注意指導取締りしてないと考えるのが妥当でしょうね。
そして可罰的違法性がないことと、民事の過失相殺は何の関係もないのだから、警察は平等に法律を適用して事故処理するだけ。

けど、「警察に聞いてきました!」みたいな人が現れるんだろうな~。

だから「警察に聞きました」は意味がない。
こちらについてですが、なかなかなメールをしてくる方が。 赤坂警察署の○ダさん?という女性の方が対応してくださいましたが、こんなやり取り。 ・まずは当該横断歩道の位置確認 ・歩道を通行する歩行者や自転車の立場で、この横断歩道は信号に規制されて...

なかなか興味深い案件でしたが、どんどん話がすり替えられていくのも不思議。
そして日本の道路交通にはこういうトラップがまあまああるので、気をつけてないとどんな不利益食らうかわからんのよ。

 

なお、事故自体については左折自転車がより注意すべきだったと考えます。
左折自転車の目線で見ると、「信号がない横断歩道」に対する注意(38条1項)、狭路から広路に進行する注意(36条2項)があるのでより注意すべきなのは当たり前。
たまたまトラップがあった以上、横断自転車も相応の責任を負うに過ぎないので。
それぞれの視線から負う注意義務の話なのに、「逆向き」を持ち出して話をすり替えるのはなかなか不思議。

コメント

タイトルとURLをコピーしました