以前取り上げてますが、佐賀県警の警視が自転車で赤信号無視し横断歩行者に衝突した事故について、重過失致死罪で略式起訴されたそうな。
小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視=1月19日付けで依願退職=が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀区検は27日、重過失致死罪で元警視の男性を略式起訴した。
事故は昨年10月25日に発生。警視が進行方向の赤信号に気付かずに自転車で県道の路側帯を走行し、横断歩道を歩いていた70代男性に衝突した。男性は搬送後に入院し、昨年12月中旬に死亡した。県警は、重過失致死容疑で佐賀地検に書類送検していた。
自転車で衝突した歩行者死亡 元佐賀県警警視の男性を略式起訴 3月27日、佐賀区検(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視=1月19日付けで依願退職=が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀区検は27日、重過失致死罪で元警視の男性を略式起訴した。 事故は
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事故報道の変遷
この事故ですが、事故直後(2023年10月)の報道はこれ。
佐賀県警は26日、県警本部に勤務する50代の男性警視が自転車で通勤中、小城市で歩行者の70代男性に衝突する事故が起きたと発表した。70代男性は転倒して頭の骨折やくも膜下出血などの重傷を負った。事故の詳しい状況や原因を調べている。
県警交通企画課によると、警視は刑事部に所属。25日午前7時40分ごろ、小城市三日月町金田の県道で路側帯をスポーツ自転車のクロスバイクで走行中、前方にいた男性に衝突した。現場は片側1車線で、近くには横断歩道があった。警視が110番し、男性は佐賀市内の病院に搬送された。26日に病院から検査結果の報告を受け、命に別条はないが、うまく会話ができない状態という。
佐賀県警の警視、自転車で通勤中に歩行者と事故 小城市、70代男性が重傷(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース佐賀県警は26日、県警本部に勤務する50代の男性警視が自転車で通勤中、小城市で歩行者の70代男性に衝突する事故が起きたと発表した。70代男性は転倒して頭の骨折やくも膜下出血などの重傷を負った。事故
これだけを見ると前方不注視のまま歩行者を見逃したのかなと思ってましたが、今年1月の報道はこれ。
佐賀県警の50代の男性警視が、去年10月、自転車で出勤中に歩行者の男性をはね、その後死亡させた事故で、警察は男性警視を重過失致死の疑いで19日、書類送検しました。
警視は19日付けで辞職しています。
重過失致死の疑いで書類送検されたのは、佐賀県警の刑事部に所属する50代の男性警視です。
警察によりますと男性警視は去年10月、佐賀県小城市三日月町の県道を自転車で通勤中、前方確認が不十分なまま、横断歩道を歩いて渡っていた70代の男性をはね、死亡させた疑いがもたれています。
事故当時、押しボタン式の歩行者側の横断歩道は青だったとみられています。
佐賀県警警視“重過失致死”送検 自転車ではねる(九州朝日放送) - Yahoo!ニュース佐賀県警の50代の男性警視が、去年10月、自転車で出勤中に歩行者の男性をはね、その後死亡させた事故で、警察は男性警視を重過失致死の疑いで19日、書類送検しました。 警視は19日付けで辞職しています
この報道に強烈な違和感を感じまして。
赤信号無視とは書いてないけど、報道を見る限り赤信号無視なんじゃないかと。
結局続く報道にて、やはり赤信号無視だったことが確定。
小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀県警は19日、重過失致死の疑いで警視を書類送検した。警視は同日付で本部長訓戒を受け、依願退職した。
県警によると、事故では警視が進行方向の赤信号に気付かずに自転車で県道の路側帯を走行し、横断歩道を歩いていた70代男性に衝突した。男性は搬送後に入院し、昨年12月中旬に死亡した。警視は「前をよく見ていなかった」と供述していて、県警は前方の確認不足という重大な過失があったと判断した。
自転車死亡事故、警視を書類送検 佐賀県警、重過失致死容疑で(佐賀新聞) - Yahoo!ニュース小城市で昨年10月、佐賀県警の50代男性警視が自転車で通勤中に歩行者に衝突して死亡させた事故で、佐賀県警は19日、重過失致死の疑いで警視を書類送検した。警視は同日付で本部長訓戒を受け、依願退職した
交通事故の報道が不正確なのは今に始まったことじゃないけど、なんだかなあと思ってしまいます。
なお、略式起訴なので罰金刑になります。
路側帯と信号の話
ところで、路側帯を通行する自転車が従う信号については勘違いする人が多い。
単路の横断歩道で考えます。
この場合、路側帯を通行する歩行者は車道の信号に規制されませんが、自転車は信号に規制されます。
理由はこれ。
信号の種類 | 信号の意味 |
赤色の灯火 | 二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。 |
備考 この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前
二 交差点以外の場所で横断歩道等又は踏切がある場所にあつては、横断歩道等又は踏切の直前
車両は「停止位置を越えて進行することが禁止」。
横断歩道の直前が停止位置だとなるので、路側帯通行自転車も信号無視になります。
ただし歩行者については三灯式赤信号の意味が「横断が禁止」なので、横断しないなら進行することは可能。
歩行者 | 自転車 |
横断が禁止 | 停止位置を越えた進行が禁止 |
歩行者と自転車では規制内容が違うけど、分かりにくいといえば分かりにくい。
現実的には歩行者に注意しながら路側帯を赤信号無視する自転車がいても、警察は注意しない気がするけど。
単路ではなく交差点の場合も、路側帯通行自転車は信号規制の対象です。
なぜなら、路側帯は交差点の一部になるので。
路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点という
東京高裁 昭和60年3月18日
交差点の定義が「歩道等と車道の区別」ではなく「歩道と車道の区別」になっている点がややこしい。
分かりにくいですが
自転車のルールは分かりにくいものが多いし、多少間違えたとしても前方左右を注視していれば事故を起こさければまだマシです。
事故が起きれば赤信号無視として扱われ、赤信号無視は重過失になる。
自転車が従う信号って分かりにくいですが、以前、車道を通行していて歩行者用信号に従ってスクランブル交差点に進入し、赤切符を切られた件が話題になってましたよね。
自転車で赤切符切られた話
先日呟いたらレポート需要があるとのことなので、つらつら書いていきたいと思います。主観と心の声がうるさいと思いますが、気が向いたら読んでみてください。
遡ること3週間ほど前
仕事が休みだった義理母に0歳息子を預けて、自転車で買い出しに出ました。— あしゃ (@asami2692) November 17, 2021
この人、「従う信号を間違えたから赤切符」と勘違いしている人がいますが、警察官が赤切符を切ることを決めた理由はそこではない。
横断歩行者妨害をしたから赤切符。
赤切符の内容は信号無視にせざるを得ないけど、従う信号を間違えた程度では、通常は赤切符なんて切らないわけ。
事故を起こした警視が、路側帯通行自転車が三灯式信号に従う義務があると認識していたのかはわかりませんが、警察官でもよくわかってない人が多いのでもうちょい分かりやすくできないのかな。
どこかの警察なんて、「自転車の二段階右折は任意」とか、「電動キックボードは玩具だから自由に遊べる」と回答するそうですが…
警察官がこんな感じなので、一般人はもうお察しとしか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
そもそもこの記事では、肝心な件が忘れられている。自転車が車道の左端(自由に速度を出せる)ではなく、歩行者の通行妨害までして路側帯を走行するのならば、道交法上では「徐行義務」がある。わざわざそんな義務のある路側帯を走行するチャリ乗りはいないはずだが。凶器になるクロスバイクで道交法違反の暴走運転(スピード違反、赤信号無視)をしているわけだから、飲酒運転より悪質。このポリは懲戒免職にすべきだったが
コメントありがとうございます。
恐れ入りますが、路側帯には徐行義務はなく「歩行者の通行を妨げないような速度と方法」になります。
第十七条の三
2 前項の場合において、特例特定小型原動機付自転車及び軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。
徐行義務があるのは歩道です。
第六十三条の四
2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。
今回の事故において加害自転車が路側帯を通行していた理由についてはわかりかねますが、路側帯で歩行者に衝突したのではなく交差する横断歩道になります。
つまり、路側帯の通行方法の問題ではなく信号無視が加害行為の原因。
法解釈を誤っているようですし、加害原因が何なのかをきちんと事実確認した上でご意見をお願いいたします。