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なぜ警察は、自転車の違反取り締まりに消極的なのか?

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こちらで書いた件にご意見を頂きました。

警察庁が「自転車の安全利用促進に向けた効果的な広報啓発手法に関する調査事業報告書」を公開。
警察庁から「自転車の安全利用促進に向けた効果的な広報啓発手法に関する調査事業報告書」なるものが出てまして、 びっくりしたのは186ページもあります。 より訴求効果のある広報啓発の在り方の調査を目的として自転車利用者の意識調査や広告効果の検証...
読者様
読者様
管理人さんにこのことをコメントしてもお門違いなのですが、、、
自分はこの報告書全文を読んだ訳では無いのですが、交通ルールを知っていても守らない理由の二番目に対して対策を述べているのかが不思議に感じました。
自転車利用者に何とかさせるの考えしか無い、と、持っていきたいのか?
警察官で出来ることをまず最初にするべきだと思うのですが。。。
一番目の原因に対して対策を考えるのが嫌なのか?

無駄なデータ取りに協力させられた方々が不憫でなりません。
以上、単なるグチでした。

ルールを知っていても守らない理由の一位はこれ。

自転車の交通ルールをわかっていても違反をしてしまう理由としては、「取締りをしていない、見つからないから」が 33.4%で最も高く

確かに、最も高い理由にアプローチしないのも不思議です。

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都道府県警察の温度差

自転車の違反に対し青切符が導入されますが、勘違いしている人が多いのは、違反したら即青切符という運用は予定してないこと。

国家公安委員会委員長記者会見要旨
令和5年12月26日(火)11:02~11:09

 

問   自転車運転の青切符を盛り込んだ報告書が国家公安委員にも報告されたと思います。そこでお伺いしたいのは今後の教育の問題です。特定小型原付でも具体的な教育があまりなされている様子がなくて、今後、警察庁だけではなくて文科省とか総務省とも連携しなければならないと思います。閣僚としてどのように働きかけるおつもりかお願いします。

答  まずご指摘の自転車につきましては、近年、対歩行者との事故が増加傾向にあるとこういうふうにまず認識をしております。そのことを踏まえまして、警察庁においては、本年の8月以降、有識者検討会を開催してきたところでございます。お尋ねのとおり、このたび、有識者検討会においては、安全教育、違反の処理、交通規制の3点に関して、今後の取組の方向性について提言をする中間報告書が取りまとめられ、提言いただいたところでございます。
このうち、交通安全教育につきましては、官民の知見により、それぞれの年齢層、ライフステージに応じた安全教育に係るガイドラインの策定をいたしまして、安全教育の質の担保をすることが提案されているところでございます。これを実現するためには、教育現場や自治体との連携が非常に重要であるため、関係省庁に対して必要な働き掛けを行っていくよう、警察庁を指導してまいりたいと考えております。
そのようにしっかりと連携をいたしまして、やってまいりたいと思っておりますが、違反の処理につきましては、自転車利用者による交通違反を交通反則通告制度の対象とすることが提言をされておりますが、制度の運用に当たっては、指導警告をまず原則といたしますこれに従わないなどの特に悪質、あるいは危険な違反に限っては青切符による取締りを行うことにより、目的である違反者の行動改善を促すこと、こういった取組をしっかりとやってまいりたいと考えております。

問   取締りについては、まず切符を切るということではないということですね。

答  申し上げたとおり、まずはやはり指導警告これを原則といたしておりますので、報道等では即青切符というイメージが残っておりますが、やはり交通ルールを守っていただき、結果的に事故が起こらないことが私どもの目的でございますから、その点については、申し上げたとおりでございます。

国家公安委員会委員長記者会見要旨

青切符制度が導入されても、基本は注意指導です。

そもそも2021年に一度「自転車に対する少額違反金制度」の創設が検討されましたが、都道府県警察での温度差が大きいとして見送りされてます。

 

◯2021年の報道

警察庁の有識者検討会が求めていた自転車運転に対する違反金制度の創設について、同庁は今回の道路交通法改正案には盛り込まない方針を固めた。担当者は「さらに時間をかけた丁寧な議論が必要。引き続き検討する」としている。

(中略)

しかし、自転車の取り締まりは都道府県警で力の入れ方に差があり、全国一律での実施は現場で混乱が生じることなどから今回は見送りが決まった。自転車利用者からの反発が予想されることも考慮したという。同庁は今後、交通ルールの周知の徹底を図る。

 

自転車違反金は見送り 利用者からの反発考慮 道交法改正案 | 毎日新聞
警察庁の有識者検討会が求めていた自転車運転に対する違反金制度の創設について、同庁は今回の道路交通法改正案には盛り込まない方針を固めた。担当者は「さらに時間をかけた丁寧な議論が必要。引き続き検討する」としている。

都道府県警での温度差ってこういうこと。
徳島県警は昨年、9年ぶりに自転車の違反に対し赤切符を切ったと。

県警が自転車の運転者に赤切符を交付したのは9年ぶりで、8月から自転車の取り締まりを強化して以降は初めてです。

 

県警 9年ぶりに自転車に乗っていた男性に赤切符を交付【徳島】(JRT四国放送) - Yahoo!ニュース
9月1日、徳島県鳴門市で、自転車に乗っていた男性が一時停止違反をしたとして、道路交通法違反の疑いで、徳島県警に赤切符を交付されていたことが分かりました。 県警が自転車の運転者に赤切符を交付したのは

警視庁(東京都)はまあまあ積極的に赤切符を切ってますが、足並みが揃っていない。
自転車乗車中の携帯電話使用について興味深い報道がありまして、兵庫県がダントツ多いけど34県では検挙事例がない。

警察庁は、携帯電話を使用しながら自転車を運転する行為の罰則を強化し、反則金納付で刑事罰を免れる「交通反則通告制度(青切符)」の対象に入れることを検討している。携帯電話使用に起因する自転車事故は増えているが、摘発件数は地域によって偏りがある。兵庫県警が6割を占め群を抜いて多い一方、34県警では摘発がない。

携帯使用の自転車、罰則強化へ=事故増加で、摘発に地域差―兵庫6割、34県はゼロ・警察庁
警察庁は、携帯電話を使用しながら自転車を運転する行為の罰則を強化し、反則金納付で刑事罰を免れる「交通反則通告制度(青切符)」の対象に入れることを検討している。携帯電話使用に起因する自転車事故は増えているが、摘発件数は地域によって偏りがある。...

34県では携帯電話使用の自転車がいない…なんてわけもなくて、足並みが揃っていないのですよ。
某県警では三年前に「本部通達で自転車に切符を切れない」と末端の警察官が言ってました。

 

警察庁(国家公安委員会)が「基本は注意指導、従わないときや悪質な違反に青切符」という理由は、おそらくは都道府県警察間での足並みが揃っていないからだと思う
人手不足なのか、考え方の違いなのかはわかりません。

 

青切符で罰則強化と勘違いしている人が多いけど、赤切符だと警察と検察の事務処理負担が大きいのを解消する程度の話で、違反=青切符とは考えていない。

厳罰化は効果があるか?

仮にビシバシと青切符を切ると自転車の違反が減るのか?というと、多少は効果があると思いますがなんとも言えません。

 

というのも、昭和30年頃には自転車の2人乗りや無灯火で有罪にした判例が残っています。
つまり、積極的に赤切符を切っていたのかと。

昭和30年代は、自転車2人乗りで「有罪」。
自転車の「悪質な」違反に対して警視庁は赤切符運用を始めましたが、今まで自転車の違反なんて注意止まりがせいぜい。 赤切符でも98~99%は不起訴なんですが。 でも昭和30年代、チャリ2人乗りでガッツリと有罪にしていたりします。 チャリ2人乗り...
自転車の無灯火は犯罪なのか高裁まで争う。
ちょっと前に自転車の2人乗りで有罪にした判例を紹介しましたが、 同様の判例は名古屋高裁金沢支部 昭和34年10月20日判決にもあります。 (罪となるべき事実) 被告人は昭和34年4月10日午後2時20分頃敦賀市松島百三十字松原地先道路におい...

どちらも高裁判例ですが、2人乗りや無灯火で高裁まで争う時代です。
無灯火の自転車のペダルに片足をかけ地面を三回蹴って約5m前進した行為が、自転車の無灯火通行に該当するかを争った判例もありますが(広島高裁松江支部 昭和25年8月30日判決)、今の時代にこんなもんを検挙することはあり得ない。
いつの時代から自転車の違反を取り締まりしなくなったのかはよくわかりませんが、そのへんに路上駐車が普通にいる程度に取り締まりの効果は限定的なのかもしれません。

 

都道府県警の温度差、取り締まりに掛ける人員、取り締まりによる効果を考えて警察庁は「基本は注意指導、従わないときや悪質な違反は青切符」と考えているのだと思う。

海外との比較

オランダは自転車大国と言われますが、違反取り締まりはむしろ日本より多い。

携帯電話を持ちながら自転車に乗ると約53,000の罰金。16パーセント増加

オランダ当局は昨年、自転車運転中に携帯電話を使用したとして自転車利用者に5万3259件の罰金を課した。これは16.3%という「驚くべき」増加であると法務安全省が木曜日に発表した。自転車に乗りながらテキストメッセージを送信すると、140ユーロの罰金が科せられます。

About 53,000 fines for biking while holding a phone; up 16 percent
Authorities in the Netherlands issued cyclists 53,259 fines last year for using their phones while cycling. That is a “r...

無法者大国ニッポンの自転車取り締まり件数を見てみると、令和4年(2022年)の自転車の交通違反の検挙件数(赤切符)が24549件、指導警告が131万8830件。

指導警告は実質的に単なる注意止まりで罰則があるわけではないのと、オランダのデータは「ながらスマホのみ」なので比較しにくいですが(日本はながらスマホ以外も含めた総数)、

ジャパンの自転車赤切符 オランダの「ながらスマホ」による罰金
24549件 53259件

日本の自転車赤切符については不起訴率が98~99%と警察庁が報告しているので、起訴されたのが多めに2%とみると、罰金に至ったケースは推定ですが490.98件か。

 

オランダさんの人口(約1759万人)と日本の人口(1億2494万7千人)、オランダと日本の自転車利用率や分担率を考慮しても罰金に至ったケースはオランダさんのほうがはるかに多いかと。
ほかにもオランダは違法電動自転車の検挙のために専用装置を開発していたりする。

オランダさん、違法電動自転車摘発用にローラー台を開発。
いきなりですが、こちら。 警察さんがローラー台を使ってトレーニング中…なわけもなく、違法電動自転車の速度計測用に開発された「Rollerbank」というもの。 このローラー台がオランダ国内に計247台配置され、違法電動自転車の摘発に活用され...

オランダの自転車死亡者数は2021年が207件、2022年は290件と大幅に増加してますが、自転車インフラがかなり整っていると言われるオランダでも自転車の取り締まりは日本より厳しい。

Actuele verkeersongevallencijfers
Elk jaar rapporteert de minister van Infrastructuur en Waterstaat via een Kamerbrief de actuele verkeersongevallencijfer...

日本は自転車インフラも脆弱、取り締まりもほとんどないに等しいのでぐちゃぐちゃですが、警察庁の方針としては積極的に青切符を切る運用は予定しておらず、交通教育を重視したいからこのような調査結果なんだと思われます。

警察庁が「自転車の安全利用促進に向けた効果的な広報啓発手法に関する調査事業報告書」を公開。
警察庁から「自転車の安全利用促進に向けた効果的な広報啓発手法に関する調査事業報告書」なるものが出てまして、 びっくりしたのは186ページもあります。 より訴求効果のある広報啓発の在り方の調査を目的として自転車利用者の意識調査や広告効果の検証...

ルール自体が難解なので、インターネット上では謎のルールが横行しますが…警察署でも「自転車の二段階右折は任意」などと答えるそうなので警察官すらわかってないのですよ。
電動キックボードは玩具だから自由に遊んでOKと答える警察もあるくらいなので、警察官に聞いても正解かどうかは別問題。

悲報!?自転車の二段階右折は義務から任意に格下げ!?
読者様からこのようなメールを頂いたのですが。 あるYoutuberが警察に直接聞いた自転車交通ルールとして以下を発信していました。 ・1車線目が左折レーン、2車線目が直進レーンの場合、2車線目を走行して良い ・交差点で二段階右折しなくても良...

海外と比較しても日本の取り締まりは緩めです。

それらを踏まえて

自転車の違反に苦しめられているのは歩行者だけではなく自転車もそう。
例えば、ノールックで車道に降りて逆走斜め横断した自転車と、車道を通行していた自転車の衝突事故について、

過失割合は50:50(東京地裁 平成20年6月5日)。
だいぶ笑えない判決になる。

先日の判例についてちょっと補足。
先日挙げた判例なんですが、 ちょっと補足。 なぜ車道ロードバイクにも5割の過失が付いたか まず、事故の前提から。 ・原告(ロードバイク)は車道を通行していた。 ・被告(自転車)は歩道を通行していた。 ・歩道には配電ボックスがあり、被告の身長...

なので自転車を使う立場からしても自転車の違反を積極的に取り締まりして欲しいところですが、おそらくはそれ以前の問題です。

・ルールが難解
・ルールを理解していない

警察庁が行ったルールの認知度のアンケート結果はこうなります。

https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/pdf/houkokusyo.pdf

けどこれってリアルな数字を表してないと思ってまして、例えばY字路の二段階右折ってどっちが正解なのよ?みたいに具体的に質問したら、答えられないでしょう。

そりゃ単純な十字路ばかりじゃないので、「二段階右折義務」と言われても具体性がない。
それこそ、車道外側線と歩道の間を歩道と勘違いしている人も普通にいて、歩道と勘違いして逆走する自転車もいる。

しまいには「歩道の逆走は違反」などとありもしないルールを語る人も多いので、ルールがよくわからない上にどこを走ればいいのかすらよくわからない人が普通にいる状況。
なので違反即青切符よりも交通教育に傾くのかもしれませんが、違反取り締まりに消極的な理由はおそらく、都道府県警察での温度差が大きいのではないでしょうか。

 

そして安心して通行できる環境も少ないし、先日の鹿児島市の事例のように、「自転車レーン」「約46キロ整備」なんて報道をしながら、これですよ。

自転車通行帯を示す青はほとんどなく、オレンジなんて歩道に自転車マークを描いただけ。

自転車マークを描いたら魔法のように自転車がルールを守りだすわけもないし、全てがぐちゃぐちゃとしか言いようがない。
取り締まり、自転車インフラ、交通教育、ルール自体の全てがぐちゃぐちゃな気がするけど、警察庁の方針はまずは交通教育に傾いているようです。

 

まあ、この結果からすると取り締まりされないから守らない人が多いことは明白なんですけどね。

自転車の交通ルールをわかっていても違反をしてしまう理由としては、「取締りをしていない、見つからないから」が 33.4%で最も高く

やるべきことはたくさんあるので、どれからやるかの問題なのかもしれません。

コメント

  1. きゃばりーのらんぱんて より:

    わざわざ取り上げて頂いて恐縮です。

    自転車に限らず交通ルールは、お互いの安全のためだと思います。
    ルールを知っているけど守られない理由に「取り締まりがない」が1位ですが、更にその深層には「自分はルールを守ってなくても安全だ」と思ってるからナノでは?と、思ってます。
    夜間無灯火や逆走、飲酒運転とかは「自分は大丈夫」で、実際に事故にはあってないと思うんです。
    この深層心理を押し殺して、ルールを守っていても、ノールック車道降臨逆走車とぶつかって裁判でイーブンでは悲しい。
    ルールを守っていても、司法では護って貰えてない。
    コレではルールを守るモチベーションがダダ下がりです。

    まあ、モチベーションでは無く、安全の為にやる事はやらないとですけどね。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      おっしゃる通りで、たまたま事故に遭わなかったなら大丈夫みたいな謎の自信なんだと思います。
      ノールック車道降臨事件はなぜにイーブンになるのか理解し難いですが、これも現実なんですよね。
      アホが突撃する可能性を考慮して乗るしかないのです。

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