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パトカーが横断歩行者(幼児)をはねて、6600万は妥当か?

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緊急走行のパトカー(赤信号)が、横断歩行者(青信号)をはねて死亡させた事故について、東京地裁は東京都に約6600万の賠償命令を下したと。

東京都千代田区のJR四ツ谷駅前の横断歩道で緊急走行中のパトカーにはねられて5歳の男児が死亡した事故を巡って、遺族が東京都に計約2億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、都に計約6600万円の賠償を命じた。菊池憲久裁判長は「パトカーの前方不注意の過失は相応に大きい」と認めた。

判決によると、2019年8月18日、青信号の横断歩道を渡っていた男児が警視庁のパトカーにはねられた。パトカーは緊急走行中で、時速40~50キロで赤信号の交差点を直進していた。男児は頭を強く打って約1カ月後に死亡した。

都側は賠償責任を負うことを争っておらず、賠償額が争点だった。判決は、男児には何ら落ち度がないとし、「苦痛を受けながら闘病して死亡するに至り、未来を絶たれたことを考慮する」と賠償額の算定理由を説明した。

パトカーにはねられ5歳死亡 東京都に6600万円賠償命令 地裁(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
東京都千代田区のJR四ツ谷駅前の横断歩道で緊急走行中のパトカーにはねられて5歳の男児が死亡した事故を巡って、遺族が東京都に計約2億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、都に計約6600万
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約6600万は妥当か?

約6600万という数字をみるとかなり低いように思えますが、おそらく、自賠責保険等による既払い分を差し引いた残額だと思われます。
なのでこのような判決の場合、「認められた総額」と「賠償命令が出た額」が一致しないことがあるので注意。

 

どうしても生活控除で差し引く分等があるわけですが、報道を見る限り東京都側は過失割合を争ってなくて、賠償金額の算定方法のみが争点だったのでしょうか?
事故の民事裁判というと過失割合を争っていると思う人もいるかもしれませんが、例えば池袋暴走事故の民事(東京地裁令5.10.27)は被告は過失割合を争っておらず、賠償金額が争点。

 

今回のパトカー事故判決については、おそらく既払い分を差し引いた残りが6600万という意味なんだろうなと思う。
ところで。

緊急走行の妥当性

緊急車両は赤信号でも通過できますが、徐行と安全確認は必須です。

(緊急自動車の通行区分等)
第三十九条
2 緊急自動車は、法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない。この場合においては、他の交通に注意して徐行しなければならない

よって赤信号はもちろんのこと、横断歩道でも一時停止(法令による停止)は必須ではない。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条
この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない

報道によると時速40~50キロとあるように、徐行とは程遠い。
運転していた巡査部長は過失運転致死罪で起訴され、禁錮2年6月、執行猶予3年で確定してますが、そもそもどういう事故だったのか。

事故は8月18日午前10時40分ごろ、東京都千代田区麴町6丁目の国道20号交差点で発生。男児側の信号が青色で、パトカーはサイレンを鳴らしながら注意を呼びかけていた。捜査関係者によると、減速して交差点に進入後、再び加速したところだったといい、中央分離帯の植栽の陰になって男児が見えなかったという

パトカーにはねられた5歳児死亡 巡査部長は書類送検へ:朝日新聞デジタル
東京・四ツ谷駅前の交差点で8月、横断歩道を渡っていた男児(5)が緊急走行中のパトカーにはねられた事故で、重体だった男児が13日死亡した。警視庁が発表した。運転していた新宿署の男性巡査部長(51)につ…

減速して再加速した速度が40~50キロという意味なのかはわかりませんが、交差点の出口までは徐行すべきだったでしょうね。
そもそもなぜ緊急走行をしていたか?もちょっと問題があります。

新宿署によると、パトカーは薬物使用の容疑で調べていた男性の尿を緊急鑑定するため、警視庁本部へ向かっていた。巡査部長は十七日午後二時半から勤務し、体調などに問題はなかったという。助手席に乗っていた同課の三十代の男性巡査長が事故直後、「パトカーで男の子をはねてしまった」と一一〇番した。

(中略)

新宿署によると、署では薬物使用の疑いがある男性に任意同行を求め、提出を受けた尿の簡易検査を実施。薬物の陽性反応が出たため、警視庁本部で本鑑定をする必要があった。任意捜査のため長時間の拘束はできず、署は「緊急性があった」と説明する。薬物事件などで鑑定を急ぐために緊急走行するケースは、これまでもあったという。

パトカーはね4歳重体 四ツ谷駅前 横断歩道が「青」:東京新聞 TOKYO Web
十八日午前十時四十分ごろ、東京都千代田区麹町六のJR四ツ谷駅前の交差点で、青信号で横断歩道を歩いていた都内の男児(4つ)が、緊急走行中...

緊急走行の妥当性にも疑問が残りますが、赤信号の交差点を時速40~50キロでかっ飛ばす必要性が全く無い事案。
不必要な緊急走行をした上に、緊急走行時に必要とされる「赤信号時の徐行と安全確認」を怠り、事故が起きた。
不必要なことを不適切に運転して起きた事故に思えますが、ご遺族の心情を考えると6600万という数字に納得いかないだろうなと(繰り返しますが、おそらく自賠責保険の既払い分を差し引いた残りだと思われます)。

 

ちょっと前に緊急走行車両の判例をいくつか挙げましたが、

赤信号パトカーと青信号オートバイの事故からみる、「推測」の無意味。
かなり大々的に報道されてますが、被害者の方のご冥福を。 事故を目撃した人によりますと、「パトカーのサイレンが聞こえて、その数秒後に衝撃音のような鈍い音がした」ため、外を見ると、「警察官が転倒したバイクの運転手に声掛けしているような様子があり...

赤信号の交差点に進入する以上、サイレンに気がつかずに進入する一般車両もいるわけで、かなりの注意義務が要求される。
時速40~50キロはさすがに…

 

ご遺族が納得して判決を受け入れるのか、控訴するのかはわかりませんが、どうなるのでしょうか。


コメント

  1. ゆき より:

    そもそも道路には聴覚障害者も居る訳で、日中では視認しにくい赤色灯の反射や、直接視認できるまで普通に青信号を信じて歩行者含めて進行してくる可能性が有るのですよね。
    故に徐行は非常に大切なんだけど、地元だと救急車と違って安全確認がイマイチなんですよねぇ。
    中央分離帯とか右折待ちトラックで死角が有るのにノー減速で通過とか。
    サイレン鳴らしたら無敵と勘違いしてるのかも。

    事故ってからサイレン鳴らして、鳴らして緊急走行中だったと主張した事すら有るし。
    ※裁判所の裁判例検索で公開。令和3(ワ)1305で触れてます。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      緊急車両の事故判例はいくつかありますが、緊急車両側が注意義務を果たしていた事例は少ない気がします。
      起きるべくして起きた事故なのかも。

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