ちょっと前に書いたこちらについて質問を頂いたのですが、
交通規制された場所ですよね?
これはちゃんと判例があるんです。
道路使用許可&交通規制された場所で道路交通法違反が成立するか?
要は道路使用許可を得て交通規制された場所(クローズドな空間)で道路交通法の適用があるかないかですよね。
判例上は道路と認定され、道路交通法違反は成立します。
判例は東京高裁 昭和42年5月31日。
長野県の県道について、道路工事のために通行禁止となっていた場所において無免許運転をしたもの。
工事関係者が工事車両を無免許運転です。
「被告人は本件自動車を運転して右道路の南側端寄りの部分をならす作業に従事していたものであるところ」とある通り。
原判決挙示の実況見分調書によれば、被告人が無免許で大型特殊自動車(ロード・ローラー)を運転したとされる原判示第一の道路は、長野県々道にして、本来、一般通行の用に供する道であつたことが明らかであるから、道路法第2条第1項、第3条第4号所定の道路にあたり、したがつて、道路交通法第64条、第2条第17号、第1号により、本件自動車の如き車両等の運転には免許を要する道路交通法上の道路と認められることもまた明らかである。所論は、被告人が本件自動車を運転した区間は、道路工事のため、道路標識をもつて一般の通行が禁止された場所であるから、道路交通法にいわゆる道路ではない旨、縷々主張するが、所論のような通行の禁止は、道路管理者が、一定の場合に、道路の構造保全、または、交通の危険を防止するため、一時的に行なう道路管理上の措置に過ぎない(道路法第46第1項、第48条第1、2項参照)のであり、むしろ、道路本来の目的効用を達成するための措置であつて、それが道路たることを否定するものではない。これを、運転免許制度の趣旨からみても、同制度は、道路における車両による危険の防止を図らんとするにあるものであるところ、所論のような通行禁止の標識のみをもつてしては禁止区間内に一般通行人が立ち入ることを完全に防止しうるものではないのみならず、右にいわゆる危険とは、ただに一般通行人に対する危険に限らず、所論のような通行禁止区間内において工事に従事する者、あるいは、同区間内に存する物に対する危険等、ひろく、一切の危険を含むものと解すべきであるから、たとえ、所論のように道路標識が設置されて一般の通行が禁止され、かつ、被告人の運転した自動車が工事用の自動車で、その運転区間も右通行禁止区間内に止まるとしても、本件の如き自動車の運転に免許を要しないものとする合理的根拠とはなしがたい。以上の諸点に関する所論はすべて独自の見解というほかなく、論旨は採用の限りではない。
東京高裁 昭和42年5月31日
事故を起こしたなら救護義務が発生し、放置して逃げたら救護義務違反になり得ます。
ただし速やかに救護車が救護したなら、可罰的な違法性があるのかは疑問。
そしてここで必ずといっていいほど出てくる疑問。
これも答えは簡単です。
「レース」として道路使用許可を出して交通規制したのだから、レースとして一般的に認められる範囲では選手に各条の規定を適用する理由がない。
横井・木宮氏や法総研は、学校の校庭などを道路と認めると、77条(道路使用許可)なども適用しなければならなくなり不合理であるということなどを根拠に道路性を否定しているが、もともと、学校の校庭や工場の敷地などは一般交通の用に供する場所として設けられたものではなく、道路としての形態も備えていない。したがって、そのような場所で運動会を行ったり、工事をしたり、工作物を設ける場合に使用の方法や形態などについて警察署長の許可を得なくても道路交通の安全や円滑を損なうおそれはなく、77条の適用などはその必要がない。
これに反し、64条(無免許運転の禁止)や65条(酒気帯び運転などの禁止)の規定などは、当該場所が現に公衆の通行の用に供されている以上その交通の安全を図るためにその適用が必要とされるのである。
かように、道路交通法の目的・諸規定の立法趣旨にたちかえって考えれば、道路交通法の道路と認定された場所について、ある規定が適用され、ある規定が適用されないという結果が生じても不都合ではない。東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974
「道路交通法の目的・諸規定の立法趣旨にたちかえって考えれば、道路交通法の道路と認定された場所について、ある規定が適用され、ある規定が適用されないという結果が生じても不都合ではない」と説明してますが、まんまこれ。
レースとして許可したのに、「並進禁止!」なんて適用する必要がない。
一方、中継車が酒飲んでウェーイ走行していたらそれは許されない。
条文が全てではない
東京地検の説明内容って条文上にはない裏メニューみたいなもんですが、当たり前だからわざわざ規定してないのかと。
この議論の発端は高松高裁 昭和27年3月29日判決。
小学校の校庭を「道路」と認定して無免許運転罪の成立を認めたことに対し、論争が起きた。
東京地検交通部は上で挙げたように説明してます。
安全と円滑を達成するためのルール(1条)だから、特殊な場所ではある規定が適用され、ある規定が適用されないとしても不都合はないだろ。
全部が適用されなくても、特殊な場所では安全と円滑といった目的が達成されるのだから。
レースとして許可したのに「並走禁止だろ!」なんて適用する必要はないし、一方では大会運営車両が無免許運転したら観客や選手に危険を及ぼすリスクがあるから適用する。
それぞれのルールの立法趣旨を検討して適用するかしないかが決まるわけで、一律に適用する必要はない。
その意味では、救護車両がスタンバイしている状況だったなら救護義務違反を適用する必要がないとも解釈できる気がしますが、このあたりは裁判所がどう判断するかビミョーかも。
けど、法律の適用云々以前に大会運営車両が選手に追突するという全くあり得ない事態を引き起こした以上、道義的にも速やかに停止して救護すべきでしょうね。
なお、運転者に救護義務違反が成立する場合に、同乗者が教唆犯に問われることも。
ちなみに東京地検交通部の解説書ってとんでもないボリュームになってまして、1276ページもあります。
古いもの(1974年版)は見れますが、これの最新版ってないのかな?
この解説書は、様々な解説書の見解を引用して整合性を取っているので説得力が高いのよ、これ。
まあ、救護義務云々の前になんで大会運営車両が選手に追突するのか謎ですが、
昨年の福岡国際マラソンでも大会運営車両が選手に追突してますし、どこも緩んでいるのかもしれません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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