この報道はなかなか興味深いというか、警察のスタンスが見え隠れする。
10日朝、札幌市手稲区の交差点で、自転車の男子高校生が横断中、左折してきたワゴン車に接触しました。男子高校生は擦り傷を負いましたが、ワゴン車の男性は声をかけただけで、現場から立ち去っていて、警察は事故不申告の疑いで捜査しています。
10日午前７時40分ごろ、札幌市手稲区曙の交差点で、自転車の男子高校生が横断中、正面から左折しようとしたワゴン車と接触しました。
警察と男子高校生によりますと、ワゴン車は男子高校生の自転車より先に交差点に入り、自転車の前の小学生の横断待ちをしていました。そして、小学生の横断後に動き出し、前方から直進してきた自転車と接触したとみられています。
男子高校生は右手に擦り傷を負いましたが、ワゴン車を運転の男性は「大丈夫か？おまえ、信号無視だからな！車は、こっちでやるから」と高圧的に声をかけただけで、そのまま現場から立ち去ったということです。現場はコンビニエンスストア前の片側２車線同士の交差点ですが、男子高校生は「青信号だった」と話しています。
警察は事故不申告の疑いで、立ち去ったワゴン車の行方を追っています。
男子高校生は右手に擦り傷を負った。
しかし救護義務違反ではなく事故不申告として捜査していると。
この報道ってある意味では警察のスタンスがよくわかるのですが、なぜ救護義務違反で捜査してないのでしょうか？
答えはシンプルで、警察さん、人身事故扱いではなく物損事故扱いで処理してますよね。
交通事故が起きたときに、警察さんは人身事故として処理するか、物損事故として処理するか分けてますが、物損事故として処理しているのに「救護義務違反」だと矛盾してしまう。
ましてや物損事故として処理しているのに、安全運転義務違反や付加点数をつけると矛盾する。
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
付加点数は死亡や傷害に対するものなので、「物損事故」として処理しているのに「傷害」だと矛盾してしまう。
警察さんが軽微なケガを物損事故扱いして処理することはよくありますが、警察さんのスタンスを如実に表した報道なのかと。
物損事故のほうが、警察さんの事故処理の手間は掛からないので、警察さんは擦り傷程度だと物損事故扱いにしたがります。
なにせ、警察さん的には仕事量が減りますから…
以前、確か骨折かなんかの重傷事故なのに「警察が物損事故で処理していた」と炎上した事案がありましたが、モノ扱いした以上は救護義務違反で捜査すると矛盾するし、モノ扱いした以上は安全運転義務違反も成立しなくなり、付加点数もつけられなくなる。
モノ扱いしたのに「人の傷害に係る交通事故」として付加点数をつけたら、矛盾してしまう笑。
ましてや「過失運転致傷罪」は盛大に矛盾するからお咎めなし(ただし過失運転致傷は軽微なケガだと刑の免除があるのでどのみち不起訴ですが)。
擦りむいた程度ならモノ扱いになり、ズル剥け程度じゃないと人扱いしてもらえないのかもしれません。
本当に困りますよね。
ズル剥けじゃないと人扱いされないのですから。
この国は、やや剥け程度では人扱いされず、ズル剥け以上が人扱いなんです！
えーと、何の話でしたっけ？？
「お前、信号無視だからな！」と捨てセリフを吐き逃走したそうですが、物損事故扱いされているなら「お前」じゃないという矛盾。
なお、男子高校生は青信号だったと説明しているそうですが、謎の捨てセリフを吐かれ、警察にはモノ扱いされ、擦り傷を負った高校生…
実際に物損扱いになっているかを取材するのがマスコミのお仕事なんじゃないかと思いますが…
物損事故と人身事故では、警察さんが作成する書類の量が全然違うので、擦り傷だから仕事量が少ない物損事故処理をした可能性が高い事案ですが…
被害者的に何ら異論がないならそれでも構いませんけど、モノ扱いした以上は矛盾が生じる捜査はしないし、矛盾が生じる違反は認定しなくなり…。
警察さんのスタンスを如実に表した報道に思えますが、マスコミ的にはあまりこの問題を掘り下げるつもりはないでしょう。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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