なんか不思議な記事が配信されてますが、
「自転車通行可」の歩道にて特例モード(時速6キロ)にしながら足蹴りして時速6キロを越えた場合にどうなるのか?と疑問を投げ掛け、その場合も「特例特定小型原付」(時速6キロモード)と認められる可能性が高いとしている。
これについてですが、そもそも論点がおかしい。
特例モードは「車体の構造として時速6キロを越えるスピードを出せないもの」(法17条の2第1項2号、規則5条の6の2第2項)。
これが意味するのはあくまでもエンジンとして時速6キロを越えないように制御されていることなので、足蹴りしていても特例特定小型原付として認められるのは当たり前。
けど、一方で歩道通行時には徐行義務を課しているわけよ。
第十七条の二
2 前項の場合において、特例特定小型原動機付自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず、また、特例特定小型原動機付自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。
※分かりにくいので「普通自転車通行指定部分」の件は割愛。
足蹴りして進行することも「車両の通行」なので、特例特定小型原付が歩道で足蹴り進行し、徐行とは言い難いスピードを出せば17条の2第2項の違反になる。
単にそれだけの話なので、「特例モードと認められるか?」が問題ではないと思うのですが…
以前どこかで書いたけど、特定小型原付は「時速20キロまでしか出ない車体の構造」を求めながらも、法定最高速度は時速30キロです(令11条)。
要は下り坂などで惰性進行する際には、リミッター速度の20キロを越えてしまうことがあり、そこを物理的に制御することは困難。
なので念のため法定最高速度が規定されてますが、歩道通行時も同様。
特定小型原付 | 特例特定小型原付 | |
車体の構造として上限速度 | 20キロ | 6キロ |
法律上の最高速度 | 30キロ | 徐行 |
足蹴り進行し時速6キロを越えたとしても、徐行義務は解除されてないのだから結局はあんまり変わらないのよね。
足蹴りして時速20キロとか出せば歩道での徐行義務違反になるだけですが、足蹴りして時速20キロ出せる変態がいるかは別問題。
下り坂なら惰性で出てしまう可能性があるけど、徐行とは言えない速度なら徐行義務違反になるだけかと。
なので「特例モードと認められるか?」は論点がズレている。
徐行として認められるのは、判例(ただし42条関係の判例)からすると時速10キロ程度までかと。
判例 | 実際の速度 | 徐行義務を果たしたか? |
名古屋高裁S41.12.20 | 20キロ | ✕ |
最高裁判所第二小法廷S44.7.11 | 10キロ | ○ |
大阪高裁S59.7.27 | 5キロ | ○ |
東京高裁S33.4.22 | 12、3キロ | ✕ |
歩道通行する際に歩行者に配慮するのは当たり前だし、法律上は徐行義務を課しているのだから「特例モードと認められるか?」が問題ではないのですが…
足蹴りだろうと下り坂の惰性進行だろうと、それが徐行とは言えない速度なら違反。
なのでキッチリ法律上は規制されているのよね。
おかしな論点にするから、ヤフコメ民も釣られて「明確な答えがない」とか「ルール化されていない」みたいに誘導されちゃってますが、そもそも論点がズレているのよ。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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