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自転車は18条1項に違反するか?

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読者様から質問を頂いたのですが、

求めるのはあくまでも「改善」。
先日取り上げたこちら。土曜日トラックに殺されそうになったよ!邪魔だったんだろうけど、触れるほどの幅寄せ辞めて〜会社名もナンバーもバッチリ映ってるから、僕が死んでたらすぐ捕まっちゃうで!どう気をつけたらいいのかわからないけど、みんなも気をつけ...

正直なところ、この発信者はいつも勉強不足なので真に受けないほうがいいですよ。

Xでこのような主張をしている人がいるのですが、これが違法・・?なのか詳しく教えてください。

この方の主張は、自転車が「道路(車道)の左側端に寄って」(18条1項)に違反して危険を招いたとする。

「左側端がボコボコで走りにくいときは減速すればよい」「ゴミがあって走れないときは降りて歩けばよい」とまで主張してますが、はたして?

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左側端寄り通行義務に違反するか?

18条1項は昭和39年改正道路交通法で新設されたもの(実質的には旧19条からの改正)。

(左側寄り通行等)
第十八条車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び一般原動機付自転車(原動機付自転車のうち第二条第一項第十号イに該当するものをいう。以下同じ。)にあつては道路の左側に寄つて、特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

この規定の「道路」とは、17条4項カッコ書きにより、「歩道と車道の区別がある場合は車道」と読み替えるため、「車道の左側端寄り」となる。
歩道がある場合の車道外側線は道路標示ではなく区画線なので、道路交通法上の車道の範囲はあくまでも歩道の縁石までになる。

ではこの方がいうように、「左側端がボコボコで走りにくいときは減速すればよい」「ゴミがあって走れないときは降りて歩けばよい」という程度に左側端寄りを通行することを求めているのかというとそんな珍解釈をしている解説書はなくて、執務資料(野下解説)、注解道路交通法(宮崎注解)などは

通行に適していない路肩を除いて左側端に寄る

と解釈しているのね…
要は自転車のように不安定な2輪車がボコボコを走ることのほうが「危険」なのであって、それらを避けた上で左側端に寄ることとしている。
そもそも、18条1項には但し書きがあり、

道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない

不安定な2輪車が歩道の縁石に接近しすぎたら危険だし、不安定なボコボコを走るのも危険。
それらを避けた上で左側端に寄ることを求めてますが、最近は路肩を自転車が通行しやすいように再整備している事例(コンクリートブロックを無くしたり、排水溝を見直すなど)もあるので、結局はその道路状況次第で変わる。

同条1項の「道路の左側に寄って」とは、軽車両の通行分を考慮し、軽車両が道路の左側端に寄って通行するために必要とされる部分を除いた部分の左側に寄ってという意味であり、「道路の左側端に寄って」とは、道路の路肩部分を除いた部分の左端に寄ってという意味である(宮崎注解)。このように自動車及び原動機付自転車と軽車両とで若干異なる通行区分をしたのは、速度その他通行の態様が著しく異なる両者がまったく同じ部分を通行すると、交通の安全と円滑が害われるおそれがあるためである。もっとも軽車両がまったく通行していない場合に自動車または原動機付自転車が道路の左側端まで寄って通行することまで禁止したものではないだろう(同旨、法総研・道交法87頁)。

ところで、キープレフトの原則の本来の趣旨は、通常走行の場合はできるだけ道路の左側端を通行させ、追い越しの場合は道路の中央寄りを通行させることにより種々の速度で通行する車両のうち、低速のものを道路の左側端寄りに、高速のものを道路の中央寄りに分ち、もって交通の安全と円滑を図ることにあるとされている(なお、法27条2項参照)。右のような趣旨ならひに我が国の道路および交通の現状にかんがみると、18条1項の規定をあまり厳格に解釈することは妥当ではなかろう。

判例タイムズ284号(昭和48年1月25日) 大阪高裁判事 青木暢茂

「道路の左側端に寄って」とは、この場合にあっては、路肩部分を除いた道路の左はしに近寄ってという意味である。

宮崎清文、注解道路交通法、立花書房、1966(昭和41年)、105頁

とはいえ昭和40年頃は路肩が未舗装も多かった時代。
現代的解釈では、路肩だから必ず通行に適していないとは言えないようなやたら車道外側線の外側が広い道路もあり、個別に考えるしかない。
例えばこのように車道外側線の外側(路肩)が広く、しかもきちんと舗装されている場合と、

こちらのように、車道外側線の外側がコンクリートブロックになっている場合は意味が違う。

かといって車道外側線上のコンクリートブロックとの境界ギリギリを通行することを求めているのかというと、ただでさえ傾斜がついていて不安定なわけで、そんなギリギリプレイを法律は求めてないのよね。
このあたりがどこまでなら「左側端」と言えるかについては、道路次第で変わる。

 

動画を見る限り、この自転車が18条1項に違反しているとみなす裁判官は皆無と思いますが(2輪車に乗ったことがある人ならわかると思いますが)、要はこれ以上左側端に寄りすぎたら転倒リスクがあり危険なのよね。
ウッディタモリ氏は解説書をみないで独自見解を語るだけ、もしくは解説書から都合よく切り抜いてしまう悪癖があるような偏りが強い人材ですし、気にしなくていいと思いますよ。

 

そもそも、この人は論点をズラしただけなのよ。

そもそも関係ない

この自転車が18条1項に違反しているとみる裁判官がいたらある意味衝撃ですが、仮に違反していたと仮定してみます。

 

他人が違反していたなら、至近距離を通過したり接触することが許されるとでも思ってんのかな?
それらは判例で否定されている(大阪高裁 昭和43年4月26日等)。

 

追い越しでも追い抜きでも、後車に注意義務が大きいのは当たり前の話で、理由はシンプルに「人間の目は前を向いているから」なんですね。
後ろを注視するのは進路を変えるとき。

 

まあ、様々な解説書と異なる独自見解を語る人の意見を聞いても時間のムダですし、理解する気がない人に反論しても最初から理解する気がないのだからムダな時間かと。

 

ところで、18条1項に罰則がない理由って知ってます?
道路交通法18条1項を作った宮崎氏はこう述べている。

第1項の規定の違反行為については、罰則が設けられていない。これは、この規定による通行区分は、道路一般についての車両の通行区分の基本的な原則を定めたものであり、また、道路の状況によっては、道路の左側端又は左側といってもそれらの部分がはっきりしない場合もあるので、罰則をもって強制することは必ずしも適当ではないと考えられるからである。(従前の通行区分の基本的原則を定めた旧第19条の規定についても、ほぼ同様の理由により、同じく罰則が設けられていなかった。)。

宮崎清文、注解道路交通法、立花書房、1966

大阪高裁判事 青木暢茂が「18条1項の規定をあまり厳格に解釈することは妥当ではなかろう」とした理由も、立法趣旨を勘案しているのよね。
しかし、この自転車が違反と思っている人がいることに驚愕。
解説書に反した危険思考だし、危険帯有者として免許停止を求めたほうが良さそうですね。

 

なお、18条の制定経緯については注解道路交通法(宮崎氏)が最も詳しい。
そもそも宮崎氏は警察庁の人で、道路交通法の制定や昭和39年改正での主人公みたいなもんですから…

 

インターネット上ではいろんな意見を発する人がいますが、中にはわざと間違った見解を語る人もいるし、都合よく切り抜いて語る人とか普通にいるのよね。
そういう意見を発する人はそもそも正しく理解する気がないのだから、話をするだけムダなんだと理解した方がいいと思う。

 

少なくとも下記については、

左側端がボコボコで走りにくいときは減速すればよい

ゴミがあって走れないときは降りて歩けばよい

そのような危険を犯してまで左端に寄れ、ということまで法律は求めてないし、自転車として通行が危険なら歩行者化しろとも法律は求めてなくて、通行に危険があるときはそれを避けて問題ない。
しかし、凄い思考だなぁ…
まあ、このあたりは各種解説書に書いてありますが、素人の珍説よりも有識者の見解をみるほうが有意義でしょうね。

 

裏付けがないド素人の珍説については、聞く価値がないのよ。


コメント

  1. 山中和彦 より:

    このウッディ某氏のポスト、以前も話題にされてましたが、
    自転車に敵意があるような人ですね。
    こういう人は、根拠とか関係なく、自分の意見をもっともらしく見せて言ってるだけですね。確信犯です。
    ただ、こういう書き方に騙される人も多いので、のさばりますね。(裏取りする人は少ない)

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      正しさより情報操作が好きな人もいますから…

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