こちらの続き。

自転車乗りの方、教えてください。
路側帯を走行していれば、
車道の信号が「赤」でも進んでいいでしたっけ? pic.twitter.com/qgtWHTrpzm— ジークフリート (@xxxSiegfriedxxx) November 8, 2024
これが信号無視になる理由は説明した通り、三灯火式赤信号は車両に対し「停止位置を越えて進行するな」としていて、停止位置とは停止線がない場合は交差点の直前と規定しているから。
交差点の範囲には路側帯が含まれる。
この規定は「道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)」となってますが、「歩道等(歩道又は路側帯)」ではないのよね。
路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点という
東京高裁 昭和60年3月18日(刑事)

法2条1項5号の規定により路側帯は交差点に含まれる(1.3-図4)
東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974、9ページ
だから交差点の範囲は「道路と道路が交わる部分」となり、路側帯通行自転車も赤信号で交差点に進入できない。
三灯式信号は車道に対する規制ではなく、交差点があるときは交差点への進入を規制しているわけですね。
もう少し掘り下げてみます。
Contents
路側帯がある場合の交差点の範囲
◯「路側帯がある道路」と「道路」の場合
「路側帯がある道路」と「歩道も路側帯もない道路」の交差点を考えます。
定義上はこうなる。
交差点の範囲は、2以上の道路が交わる部分(5号本文)。
しかも歩道がある場合には車道が交わる部分だとしてますが(5号カッコ書き)、
歩道がないので、定義によると道路と道路が交わる部分を交差点とするので下記が交差点の範囲。
歩道がないので5号カッコ書きの適用がなく、5号本文に従うから当然ですね。
なお、交差点には隅切りを含みます。
なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日
◯「歩道がある道路」と「道路」の場合
「歩道がある道路」と「歩道も路側帯もない道路」の交差点では、5号カッコ書き/本文を適用し「車道」と「道路」の交わる部分を交差点とする。
◯「歩道/路側帯がある道路」と「路側帯がある道路」の場合
次のケースは、縦道路は「左側に歩道/右側に路側帯」、横道路は「左右に路側帯」。
これを5号に従って解釈すると、交差点の範囲はこうなる。
あくまで5号カッコ書きは交差点の範囲から歩道部分を除外する趣旨。
縦道路は左側歩道/右側路側帯なので一瞬悩みますが、交差点の範囲はこうなる。
あくまで「道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分」としていることを考えると、縦道路の左側は「歩道と車道の区別がある」、右側は「歩道と車道の区別がない」と捉えるのが妥当でしょう。
そして三灯式赤信号って、この交差点に進入する車両を規制している。
信号の種類 | 信号の意味 |
青色の灯火 | 三 多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。 |
赤色の灯火 | 二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。 |
備考 この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前
赤信号の場合、停止位置を越えた進行を禁止している。
停止位置は①停止線、②停止線がない場合には「交差点の直前」だとしている。
法令上、信号と停止線はセットではないので(停止線が必須とする規定はない)、停止線がない路側帯であっても交差点の直前で停止することになるのは当然ですね。
話が噛み合わない理由
冒頭の動画では、なぜか間違った解釈を披露する人が多数。
しかもうちの記事を送りつけた方々がいるようですが、なぜか納得しない人も。
「停止位置を超えてはならない」
それはそうなんだけど路側帯内での停止位置が明示されていないし、「横断歩道手前で停止説」は横断歩道は路側帯の中までは伸びていないので怪しいし、「交差点の直前で停止説」も路側帯はどことも交差していないのにどこが “交差点“ なのって話にならない? https://t.co/TT3KIoxCxo
— g (@rtl1_) November 9, 2024
ここまで来ると支離滅裂としか言いようがないのですが、
「交差点の直前で停止説」も路側帯はどことも交差していないのにどこが “交差点“ なのって話にならない?
交差点の定義は①道路と道路が交わる部分(5号本文)、②歩道と車道の区別がある場合は車道が交わる部分(5号カッコ書き)としている。
「路側帯が交差する」という謎思考に陥る意味がわかりませんが、歩道がない以上は5号本文を適用し道路と道路が交わる部分を交差点と解釈するのは当然かと…
わざと論点をズラして認めたくないタイプなのか、理解力がないのかは定かではない。
ただまあ、定義を無視して独自解釈をする人と噛み合う可能性は低いし、こういう人はウッディタモリと同じなのよね。
条文を無視したり、定義を無視して論点をズラすあたりが。
なので道路交通法の議論が成り立つ可能性は限りなく低いのだから、ブロックするのが正解。
ちなみにこちら。
この動画はだいぶ前に読者様から教えてもらい、明らかな間違いだと解説記事も書いてますが、誤りを指摘するコメントも含めコメントが全削除されている。
この動画内容が誤りなのは条文をみれば明らかですが、「X」の人にしてもメディアにしても、間違いを訂正する能力が低すぎる。
警察ですら間違った説明をしますが、間違えたなら訂正すれば済む話なのに、無駄に意固地になり支離滅裂な話やすり替えをする人がいるからややこしい。
ウッディタモリと何ら変わらないように思えますが、要はこの件って一つ一つ定義を確認しながら条文に当てはめていけば答えは難しいわけではない。
難しいというより複雑なだけですが、従うべき信号すらわからないのはルールとして致命的な気がしました。
訂正性能が低い人については、そもそもムリだと思う。
他にも謎主張が目立ちますが、
路側帯に停止線がない、また横断歩道は路側帯を横切る形では設置されていないことを踏まえると丁字路を進行したら「はい信号無視ね、違反でーす」ってなるのは仮に事実であったとしても、それはそれでかなりマズイ状態だと思うけどな。
停止位置の具体的な表示は無いけど違反が成立するって罠やん。
— g (@rtl1_) November 10, 2024
例えば交差点から5m以内は駐停車禁止ですが、「ここから交差点でーす」なんて表示はどこにもない。
けど違反は成立する。
法定要件として信号と停止線をセットにしてない理由を考えると、仮に信号と停止線をセットだと規定した場合、停止線がかすれて消滅した場合や積雪により停止線が視認不可能になったときには信号の効力がないことになりかねない。
一時停止(43条)にしても停止線がない場合には交差点の直前が停止位置だと規定されてますが、
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。
信号(施行令2条)も同様に停止線がない場合は交差点の直前が停止位置だと規定しているのだから、路側帯に停止線がないことから違反が成立しないなんて解釈は取りようがないのよね。
なぜ「停止線が必須」みたいな謎前提を創作するのかも不思議。
法の不知は違反の不成立とは無関係ですが(刑法38条)、

これ程明らかな条文を理解できないとなると、道路交通法を語ることにムリがあるのよね…
いろんな人がいるなあとビックリしますが、デマ解釈を流してこの人は何をしたいのやら。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
このケースにおいて仮に歩道があったとして、
①歩道を走っている自転車には赤信号は関係ない(信号に関係なく突っ切って良い)と考えて良いですか?
②車道の自転車が歩道ワープで信号をバイパスしようとした場合、合法になる場合は交差点のどこからどこまでを歩道を走る必要がありますか?(極論、車道の停止線の前後数メートルだけ歩道に上がったら、あとは車道に戻って好き放題なのでしょうか?)
ここまでして信号を掻い潜りたいではなく単なる好奇心です。
コメントありがとうございます。
①歩道通行だと交差点に進入しないため、信号の規制は受けません。
②理屈の上では停止線を越えないなら信号無視になりませんから、そこだけ歩道に上がることで回避できます。しかし厳密にいえば歩道通行要件の「やむを得ない場合」に該当しないので、通行区分違反を適用することもあり得ます。
ご回答ありがとうございます
大変、勉強になりました。
いえいえ。