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救護義務違反の最高裁弁論。

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昨日、「飲酒運転発覚回避目的でブレスケアを買いに行った救護義務違反事件」の最高裁弁論があったのですが、

「ブレスケアひき逃げ事件」について、最高裁が論点を公開。
ブレスケアを購入するため(飲酒運転発覚回避目的)に事故を起こした後コンビニによったことが、救護義務違反(道路交通法72条1項)になるのかが争われている裁判ですが、最高裁が弁論期日を指定し、無罪とした二審判決が見直される可能性がある。ところで...

いろんな報道を見る限り、検察は「法令解釈の誤り」を主張、弁護側は原判決の正当性を主張し、双方がそれぞれに有利な判例を引用したらしい。

論点は道路交通法72条1項の「直ちに救護し」について、飲酒運転発覚回避目的でブレスケアを買いにコンビニに行ったことをどう評価するかですが、おそらくは検察側は「大阪高裁 昭和41年9月20日判決」を、弁護側は「東京高裁 平成29年4月12日判決」を引用したのではないかと予想する。

右報告が果して道路交通法72条1項後段所定の報告をした場合にあたるかどうかについて案ずるに、右にいう「直ちに」とは、同条1項前段の「直ちに」と同じくその意義は、時間的にすぐということであり「遅滞なく」又はというよりも即時性が強いものであるところ、同条1項前段の規定によれば交通事故であつた場合、事故発生に関係のある運転者等に対し直ちに車両の運転も停止し救護等の措置を講ずることを命じているのであるから、これと併せてみると同条1項後段の「直ちに」とは右にいう救護等の措置以外の行為に時間を籍してはならないという意味であつて、例えば一旦自宅へ立帰るとか、目的地で他の用務を先に済すというような時間的遷延は許されないものと解すべきである。
蓋し同法が右報告義務を認めた所以は、交通事故の善後措置としては、先ず事故発生に関係のある運転者等に負傷者の救護、道路における危険防止に必要な応急措置を講ぜしめるとともに、これとは別に人身の保護と交通取締の責務を負う警察官をして負傷者の救護に万全の措置と、速やかな交通秩序の回復につき適切な措置をとらしめるためであるから、現場に警察官がいないときの報告も、時間を藉さず直ちになさねばならないからである。

 

大阪高裁 昭和41年9月20日

救護義務及び報告義務の履行と相容れない行動を取れば、直ちにそれらの義務に違反する不作為があったものとまではいえないのであって、一定の時間的場所的離隔を生じさせて、これらの義務の履行と相容れない状態にまで至ったことを要する

 

東京高裁 平成29年4月12日

ところでちゃんと興味深い指摘を頂きまして。
仮にこれが救護義務違反に該当するとしたときに、「事故を起こしてパニックになり、200mほど走って思い直して戻った場合」にも救護義務違反が成立し、戻ってもどのみち救護義務違反になるならむしろ逃げる選択をする人すら出るのでは?という話。

 

たぶんそれはこの件と別問題なんじゃないですかね。
と言いたいところですが、「自己の利益のため飲酒運転発覚回避を優先させた行為」と「自己の利益のため逃げる選択をした行為(しかしすぐ思い直した)」の違いはなんだろう…と考えてしまう。
とはいえ、そのあたりは救護義務違反が成立して情状として評価する問題なんじゃないですかね。

 

まあ、最高裁の仕組み上、判決の見直しになる可能性が高いので、そのあたりも含め最高裁が何らかの解釈を示すのではないかと。

 

ちなみに「事故を起こし80m逃走したところで後続車のクラクションを聞き逃げられないと観念し、事故現場に戻った」事案について救護義務違反の成立を認めた判例があります。

救護義務の「直ちに」とは、どのくらいの範囲を指すのか?
昨年、「事故直後に飲酒運転発覚回避のためにコンビニにブレスケアを買いに行った事件」で東京高裁が救護義務違反の成立を否定して無罪にしましたが(最高裁に上告中)、もし最高裁が上告棄却するなら、そろそろなんじゃないかと。最高裁は判決を変えるときの...

コンビニに行くことを優先させた以上、救護義務違反が成立すると解釈するほうが自然な気がしますが…そうじゃないと「直ちに救護し」という意味がおかしくなる。
なお、「直ちに」が「停止し」のみにかかっていると勘違いする人もいますが、

直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない

それは誤り。
理由はこちら。

道路交通法第72条第1項前段は「車両等の交通による人の死傷又は物の損壊があつたときは当該車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と規定し、交通事故の発生した場合、運転者に対し被害者の救護及び道路における危険防止のため応急措置を講ずべきことを定めている。ところで、車両の交通によつて人の死傷又は物の損壊を生じた場合、単に運転中の車両内から望見したのみでは被害者の要否、及び道路における危険防止措置の要否を確認することは困難であり、一旦停車して仔細にこれを調査しなければその要否の判明しない場合が極めて多いことに鑑みると、同条は車両の交通による人の死傷又は物の損壊があつた場合、被害者の救護並に道路における危険防止の前提として、運転者に対し必ず一旦停止して負傷者の救護の要否、或は道路における危険の有無を確認すべき義務を負わせたものと解するのが相当である。それは、道路交通法第72条第1項前段に相当する旧道路交通取締法施行令第67条が「車馬等の交通に因り人の殺傷又は物の損壊があつた場合においては、当該車馬等の操縦者等は直ちに被害者の救護又は道路における危険防止、その他交通の安全を図るため必要な措置を講じなければならない。」と規定していたのに対し、新法が「運転者等は、直ちに車両等の運転を停止して」との字句を挿入した立法の趣旨からしても推論し得るところであるのみならず、文理上からも、人の死傷又は物の損壊があつた場合には運転者は直ちに運転を停止すべく、然る後負傷者が救護を要することが判明した場合にはその措置を、人の死傷或は物の損壊により道路における危険発生の恐れのある場合にはその防止措置を講ずべき二重の義務を課したものと解することができる。

 

東京高裁 昭和39年10月13日

旧道路交通取締法 現道路交通法
直ちに被害者の救護又は道路における危険防止、その他交通の安全を図るため必要な措置を講じなければならない 直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない

昭和35年以前の旧道路交通取締法では「直ちに被害者の救護又は道路における危険防止」としていたところに、道路交通法になったときには必ず一度停止して確認させることを目的として「車両等の運転を停止して」を挿入したわけですが、一度停止させる理由は救護や危険防止措置の必要性を確かめることが目的。

 

あくまでも「直ちに」すべきなのは被害者救護や道路における危険防止措置であって、その必要性を確かめる目的で「車両等の運転を停止して」を挿入したわけ。
なので、「直ちに」は停止のみにかかっているわけではないです。

 

そもそも、この事案は当初「過失運転致死は起訴、救護義務違反は不起訴」としたから話がこじれた気がしますが、検察は無罪になりうる事案については不起訴にしまくるのよね。
検察が当初きちんと起訴していたらどうなっていたのだろう。
最高裁が何らかの解釈を示すことは確実かと思われます。

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