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信号がない横断歩道で歩行者に過失が付く。

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ちょっと前になりますが、こちらの記事にコメントがありまして。

横断「歩行者」だから無過失とも限りませんが。
こちらで書いた件ですが、横断自転車ではなく横断「歩行者」だった場合に過失割合がクルマ:歩行者=100:0になると考える人が多いようですが、「基本」過失割合は確かに100:0。けど歩行者が無過失になるとは言い切れません。実際の判例から実例を挙...
読者様
読者様
なんで違反してない歩行者が過失なんだよ
エア判例か?

歩行者に違反がないことと過失の有無は別問題ですし、疑うなら裁判所名や判決年月日を書いているのだからご自身で確認したらいかがでしょうか?

状況 高齢者等 歩行者過失
広島高裁S60.2.26 横断歩道前で車両の状況を確認し、すぐに横断せずタバコに火をつけ確認せず横断開始 10%
神戸地裁H8.5.23 夜間、小走り 高齢者 5%
大阪地裁R2.9.25 昼間、直前横断 10%
東京地裁S46.4.17 左折時 ※20%
東京地裁S46.1.30 青信号で横断 20%
大阪地裁H28.2.3 死角 高齢者 5%
京都地裁 S48.1.30 夜間、横断歩道で四つん這いで探し物 70%
東京地裁S54.2.1 青色の表示中に本件道路の横断を開始し、センターラインの約3.5m手前付近で青色点滅の表示に変わつたが、極めて遅い歩調で横断し続け、センターライン付近で赤色の表示に変わつたが、なお従前どおりの歩行を続け、センターラインを少し越えた付近で本件車両用信号が青色信号と変わり、その後6秒程度歩行し続けた 40%

※東京地裁昭和46年4月17日判決は、二審で無過失になったかのような要旨あり(判決文不詳)。

 

どこぞのYouTuberみたいに判決年月日を伏せているわけじゃないのは、誰でも調べる気があるなら調べることが可能にしているからですよ。

 

ところで、歩行者に過失がついたとしても運転者の義務を軽減する効果はないのよ。
なぜかここを勘違いしている人が多い。

 

一例として刑事裁判の内容から。

本件交通事故現場は前記のとおり交通整理の行われていない交差点で左右の見通しのきかないところであるから、道路交通法42条により徐行すべきことももとよりであるが、この点は公訴事実に鑑み論外とするも、この交差点の東側に接して横断歩道が設けられてある以上、歩行者がこの横断歩道によって被告人の進路前方を横切ることは当然予測すべき事柄に属し、更に対向自動車が連続して渋滞停車しその一部が横断歩道にもかかっていたという特殊な状況に加えて、それらの車両の間に完全に姿を没する程小柄な児童が、車両の間から小走りで突如現われたという状況のもとにおいても、一方において、道路交通法13条1項は歩行者に対し、車両等の直前又は直後で横断するという極めて危険発生の虞が多い横断方法すら、横断歩道による限りは容認しているのに対し、他方において、運転者には道路交通法71条3号により、右歩行者のために横断歩道の直前で一時停止しかつその通行を妨げないようにすべきことになっているのであるから、たとえ歩行者が渋滞車両の間から飛び出して来たとしても、そしてそれが実際に往々にしてあり得ることであろうと或は偶然稀有のことであろうと、運転者にはそのような歩行者の通行を妨げないように横断歩道の直前で直ちに一時停止できるような方法と速度で運転する注意義務が要請されるといわざるをえず、もとより右の如き渋滞車両の間隙から突然に飛び出すような歩行者の横断方法が不注意として咎められることのあるのはいうまでもないが、歩行者に責められるべき過失があることを故に、運転者に右注意義務が免ぜられるものでないことは勿論である。
しからば、被告人は本件横断歩道を通過する際に、右側に渋滞して停車していた自動車の間から横断歩道によって突然にでも被告人の進路前方に現われるやもはかり難い歩行者のありうることを思に致して前方左右を注視すると共に、かかる場合に備えて横断歩道の直前において一時停止することができる程度に減速徐行すべき注意義務があることは多言を要しないところであって、原判決がこのような最徐行を義務付けることは過当であるとしたのは、判決に影響を及ぼすこと明らかな根本的且つ重大な事実誤認であって、この点において既に論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

 

昭和42年2月10日 東京高裁

 

歩行者に咎められる過失があったとしても、運転者に課された注意義務が免ぜられるわけがないだろと当たり前の説示をしている。
要は金銭賠償上の概念「過失相殺」(民法722)においては歩行者に過失があるなら考慮されますが、だからといって運転者の義務が免ぜられたり軽減するわけもない。

 

過失相殺の話ばかりする人って、勘違いに陥りやすい気がする。

 

そもそも、違反と過失は別問題。
これがわかってない人は、過失による道路交通法違反という概念を理解できなくなる。

 

例えば、道路交通法38条1項は昭和46年以前は「過失による違反」の処罰規定がなかったため、「前方不注視で横断しようとする歩行者を見逃した過失」により歩行者妨害した場合、処罰対象にはならなかった。
昭和46年に過失による横断歩行者妨害について処罰規定を新設した理由はこれ。

車両等が横断歩道に接近する場合の義務に違反した場合には、それだけで第38条第1項の違反となる。また、横断歩道の直前で停止できるような速度で進行してきた車両等が、横断歩道の直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにする義務に違反した場合も同様である。

 

今回の改正により、横断歩道における歩行者保護のための車両等の義務の違反については、新たに過失をも罰することとした。
横断歩道における歩行者の事故において、車両等の運転者が横断歩道あるいは歩行者に気がつかなかったと弁解する場合が多いが、この種の違反については過失をも罰することにより、歩行者保護の徹底を図ることとしたのである。
車両等が横断歩道に接近する場合において、十分確認しないでその進路の前方を横断しようとする歩行者がないと軽信したり、横断歩道の直前で停止することができないような速度で進行した場合には、過失により、第38条第1項前段の横断歩道に接近する場合の義務に違反することになる。また、車両等が横断歩道の直前で停止できるような速度で横断歩道に接近した場合において、その進路の前方を横断し、または横断しようとする歩行者がいることに気がつかなかったため、横断歩道の直前で一時停止せず、歩行者の通行を妨げたときは、過失により、第38条第1項後段の横断歩道の直前の一時停止等の義務に違反することになる。

道路交通法の一部を改正する法律(警察庁交通企画課)、月刊交通、道路交通法研究会、東京法令出版、昭和46年8月

「歩行者に気がつかなかったと弁解する場合が多い」とありますが、過失の処罰規定を新設したことにより「前方不注視の過失」により「横断しようとする歩行者を見逃し」「結果的に一時停止義務を怠った」ことも処罰対象になったことになる。
前段にしても、過失による違反も処罰対象にしたため、「横断しようとする歩行者がいないことを確認せず軽信して漠然進行した過失」により減速接近義務を怠った場合も処罰対象になる。
違反と過失は別の概念。

 

そもそも横断歩行者妨害の青切符にも、過失(119条3項)と故意(119条1項5号)は分けてあるので…

 

そもそも冒頭のコメント。
なぜ今これが?と思って調べたところ、「信号がない横断歩道上で歩行者に過失がつくわけないだろ」と主張する人たちが発狂していたことが一因っぽい。
過失があるなら過失はつくけど、それは歩行者の問題でしかなく運転者には関係ないのよね。

 

なお、裁判では横断歩行者に過失相殺しないほうがたぶん多いはず。
過失がついた事例をみると、歩行者のわずかな注意で事故を回避できたケースくらいしか過失を付けてない印象で、例えばクルマが10mの距離に迫っているのに横断開始したみたいなレベルの話なのよね。

 

過失相殺って「20%」みたいな表示になるから義務が20%軽減されたかのような勘違いに陥りがちだけど、わりと結果論なのよ。
相手に過失があるとしても、自分の注意義務は変わらない。
だったらやることは変わらないはずなのに、民事はカネの問題だから相手の非を罵り合うみたいになりがちなのよね。。。

コメント

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