最近はTPUチューブがだいぶ一般的になってきた感がありますが、読者様からインナーチューブ選びについて質問を頂きました。
ブチル、ラテックス、TPUはそれぞれ長所と短所があるのでそれらを知った上で自分にあったチューブを選ぶのが吉。
タイヤチューブブランドのヴィットリアはブチル、ラテックス、TPU全てを販売してますが、ヴィットリアはそれぞれの長所短所をまとめているのでご紹介。
ブチルvsラテックスvsTPU
チューブの性能といっても転がり抵抗、軽量性、耐久性、コスト、空気保持力など様々な観点があるわけで、何を求めるか次第なんですよね。
例えばラテックスチューブは空気保持力が低くエア抜けが早いことが知られてますが、何日にも渡るツーリングライドに適しているかと聞かれたら疑問。
1日経過したらかなりエア抜けするので、ワンデイライド向きなのは言うまでもない。
ヴィットリアがまとめた資料はこちら。
重量比較
まず重量。
ブチルに比べてTPUは3分の1かそれ以下になることが多い。
なおヴィットリアはいわゆる「軽量ブチルチューブ」を出してないので、あくまでも一般的なブチルチューブを想定している。
チューブはリムに乗っかって回転しているわけですが、リム重量を気にするサイクリストが多いのと同じでチューブ重量の差は発進時や加速時のフィーリングに影響する。
等速進行している分には重量差はほとんど影響しないにしても、加速時に体感差が大きいのはよく知られた事実かと。
ラテックスはブチルより軽量ですが、軽量性でいうならTPUの倍くらいになる。
転がり抵抗
自転車タイヤは変形を繰り返しながら進みますが、インナーチューブの素材の違いは転がり抵抗に影響する。
ヴィットリアの資料を見る限り、素材自体の性質差というよりも「ラテックスやTPUはブチルより薄く作れる→薄さが転がり抵抗に影響する」と捉えているようにも思えるけど、ラテックスやTPUはブチルに比べ転がり抵抗は半分くらい。
軽量ブチルチューブも一般的なブチルチューブより転がり抵抗がいいと言われますが、一般的なブチルチューブより薄くしていることが理由なんだと思う。
ラテックスとTPUを比較した場合、転がり抵抗は同等。
一部実験ではラテックスのほうが転がり抵抗が小さいとも出ているけど、ほぼ同等と捉えてよい。
耐久性
耐久性という比較については、ヴィットリアではTPU、ラテックス、ブチルの順だとしている。
おそらくここで言っている耐久性とは耐パンク性に近い話をしているのだと思いますが、耐パンク性能は確かにこの順序になる(ただし極端に軽量化したTPUについては別問題)。
ただしヴィットリアの資料によると「取り付けとメンテナンスが面倒でなければ」という条件付きで説明しており、逆にいえば取り付けとメンテナンスはブチルが最もラクで、軽量なTPUやラテックスはやや気を遣う。
TPUについては、各チューブメーカーから取り付け時の注意点がアナウンスされているように、取り付け時の注意を守らないと余裕で悲劇が起きる。
まあ、軽量ブチルなんかも取り付け時の注意点がアナウンスされているので、雑に扱えばパンクするのは当たり前なんですが。
日本が誇る軽量チューブ「001」にしても、きちんと扱わないとパンクしてシーラントが漏れるので注意が必要だ。
空気保持力
ちょっと興味深いのは空気保持能力、つまりエア抜けの早さ。
ラテックスはエア抜けが早いことで知られてますが、ヴィットリアの資料ではTPUの空気保持能力はブチルより上になっている。
ラテックスのエア抜けの早さはある意味異常なレベルなんですが、表で見る限りTPUが一番優れた空気保持能力があるとしている。
この項目については、ワンデイライドしかしない人ならあまり気にする必要はないと思う。
ヴィットリアも指摘してますが、ロード乗りの多くは乗ろうとする度に空気圧をチェックしてから乗るわけで、
「昨日空気入れたし今日はノーチェック」という人は少ないかと。
ところが趣味性が高いロードバイクではなく日常的に使うクロスバイクになると、頻繁に空気圧をチェックしない人もいるかと。
なので空気保持能力は自身の乗り方との兼ね合いで重視すべきかどうか変わるかもしれない。
コスト
これについては言うまでもなくブチルが最も安い。
ただし最近は激安TPUも出てきているので、あくまでもヴィットリア製品の中での比較と考えてよい。
ちなみに激安TPUについては、一部において初期不良の話も聞く。
高いTPUのほうが初期不良率が低いのかについてはイマイチよくわからなくて、激安TPUでノートラブルのサイクリストもまあまあいるし、激安TPUで初期不良に遭遇してしまった人も。
全体的な割合は不明なので、結局は運次第なのかもしれない。
総合的にみて
ヴィットリア的にはTPUが最も優れたインナーチューブと考えているのかなと思いますが、資料にあるように「取り付けとメンテナンスが面倒でなければ」ともしている。
走行にまつわる性能でいえば、現時点ではTPUが最もよい。
コストや面倒さを考えればブチルチューブに利点があるし、初期不良の話にしてもブチルチューブの初期不良はめったに聞かないので、日常的に使う自転車ならなんだかんだブチルがベターでしょう。
パンクしてパッチを貼るときや、チューブ交換の簡単さもブチルに軍配が上がるものの、転がり抵抗や軽量性ではブチルは劣る。
なので何を大要素と考えるか次第なんでしょうね。
なお、ラテックスやTPUはリムブレーキ車の一部に使用制限があるので、きちんとメーカーの指示通りに従うことも大事。
数年前にはリムブレーキ車のカーボンホイールに、アルミリム用ブレーキシューを推奨して炎上し滅亡した人がいた気がしますが、用法用量を守って正しく使いましょう。
雑に扱うと001はパンクしてシーラントを注入してしまうんてすよ(2回目)。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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