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信号無視は過失でも処罰対象。

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ちょっと前に、無車検無保険には過失処罰の規定がないと書きましたが

故意ではないから処罰できない「車検切れ」。
これの意味を勘違いしている人がわりといるようですが、パトカー2台、車検と自賠責保険切れたまま4000km走行…「故意性なし」で立件せず : 読売新聞オンライン #パトカー #車検— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) F...

なぜかこれについて

いろんな人
いろんな人
だったら信号無視したときに「うっかり」と主張すればいいよね

みたいなことを言う人が絶えない。
信号遵守義務違反罪には過失処罰の規定があります。

https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kouki/kachotsutatsu.pdf

せっかくなので実例。
たまたま先日バスに乗っていた時に起きた事案ですが、横断歩道を「横断しようとする歩行者」がいたからバスは一時停止するために減速した。
しかし後続の原付がバスを追い越しした。

(追越しを禁止する場所)
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
(罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項

これは30条3号の違反になりますが、過失処罰規定が119条3項にある。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
 第三十条(追越しを禁止する場所)、第三十三条(踏切の通過)第一項若しくは第二項、第三十八条(横断歩道等における歩行者等の優先)、第四十二条(徐行すべき場所)又は第四十三条(指定場所における一時停止)の規定の違反となるような行為をした者
3 過失により第一項第二号、第五号(第四十三条後段に係る部分を除く。)、第十四号、第十六号若しくは第十九号又は前項第二号の罪を犯した者は、十万円以下の罰金に処する
読者様
読者様
横断歩道があることに気付きませんでした!
うっかりです!
管理人
管理人
では30条3号、前方不注視の過失により横断歩道を見逃して追い越ししたから119条3項で。

標識や信号に関するものは過失処罰の規定があるはず。
なので「うっかり」で済まされないものは普通にある。
ちなみに下記最高裁判例は「過失による信号遵守義務違反罪」です。

なぜ?赤信号無視で最高裁まで?
以前取り上げたこちらの判例について質問を頂いたのですが、ちょっと分かりにくいのかな、この判例。被告人は「信号無視はしてない!」と裁判で争ったわけではありません。争ったのはなに?まずは事件の概要。(1) 被告人は,平成27年7月12日午後8時...

被告人は当初「黄色や!」と主張していたわけで、赤信号と認識してなかったのだから「信号を注視せず進行した過失」により信号無視をしたとなる。

 

過失処罰規定は全てのルールにある訳じゃないけど、過失処罰の規定を必要としないものもあります。
例えば追い越しの方法(28条1項)には過失処罰の規定がないけど、同項の故意は「追い越ししようとする認識」。
進路を変えながら追い越しの認識がないということがあり得ないので、過失処罰の規定を必要としない。

 

交差点安全進行義務(36条4項)にも過失処罰の規定がないけど、

 

◯36条4項後段

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

これの故意とは「交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するとき」の認識であって、「できる限り安全な速度と方法で進行」は裁判所から見た評価の問題。
交差点であることを認識していれば故意が成立するし、仮に交差点だと認識してなかったなら70条の過失を適用すればよい。

車両等の運転者は

①道路の状況
②交通の状況
③当該車両等の状況

に応じ

A、他人に危害を及ぼさないような速度で運転しなければならない
B、他人に危害を及ぼさないような方法で運転しなければならない

前方不注視の過失により①~③の状況を見逃したことになるのだから。

 

ところで無車検無保険に過失処罰規定がないことを揶揄し「うっかりなら無車検無保険でもいいんだ」みたいな話をする人がいるけど、単に刑法上の処罰規定がないだけで「いい」にはならないんですね。
例えば自賠法の規定。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずるただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自賠法によると①~③の全てを証明して初めて免責になりますが、無車検なら③の証明が不可能に陥り、無過失でも損害賠償責任を免れないことになる。

①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと
②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと
③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたこと

しかも自賠責保険がキレていたらなおさらシャレにならないわけだし、刑事上の処罰がなくても盛大な罰ゲームが待ち構えているようにしか思えないのですが…

 

道路交通法37条なんかも過失処罰の規定がないけど、過失により事故を起こせば過失運転致死傷罪には問われるのだし、「過失で37条に違反してもいい」にはならないのよね。
いい・悪いの価値基準を見誤りしている気がするけど、他罰性が強すぎるのかも。
民事の損害賠償を民事罰と呼ぶ法律家もいるけど、刑事罰だけが全てじゃない。
例えば警察が無車検無保険で事故を起こしたとして、被害者への賠償自体は都道府県の予算から行われる。
警察官がうっかり登録ミスをしたことが原因だったとしても、それが「重大な過失」と評価されたらその警察官に多額の請求が行くことすらありうるわけだし。

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する

ちなみにですが、同じ信号無視でも故意と過失では故意のほうが法定刑は重い。
「交差道路の安全を確認して故意に信号無視した」と、「信号自体に気づかないほどの脇見運転で信号無視した(過失)」では前者のほうが罪は重いけど、後者のほうが危険性は高いとも言えるのでして。
難しいよね。

コメント

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