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過失運転致傷は不起訴、ひき逃げは起訴。

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過失運転致傷は不起訴、ひき逃げ(救護義務違反)は起訴されたそうな。

2024年11月、浜松市で原付バイクに乗っていた高校生の男女をひき逃げしたとして逮捕・送検されていた64歳の男が起訴されました。

去年11月、浜松市中央区の交差点で、64歳の男が運転していた軽乗用車が、当時18歳の高校生の男女2人が乗っていた原付バイクと出合い頭に衝突しました。この事故で高校生の男女が肋骨や顔の骨を折る重傷を負いました。男は現場から逃走しましたが、その後警察は男性を過失運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕していました。

地検浜松支部は男を道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で起訴したものの、過失運転致傷罪は不起訴処分としたことが分かりました。理由は明らかにしてません。

高校生男女をひき逃げした罪で64歳の男を起訴 過失運転致傷罪は不起訴に 静岡地検浜松支部(静岡朝日テレビ) - Yahoo!ニュース
2024年11月、浜松市で原付バイクに乗っていた高校生の男女をひき逃げしたとして逮捕・送検されていた64歳の男が起訴されました。 去年11月、浜松市中央区の交差点で、64歳の男が運転していた軽

事故の現場はこちらです。

優先道路(交差点内にセンターラインあり)を通行していたクルマと、非優先道路を通行していた原付が衝突した事故ですよね。

 

ところで「過失運転致傷」は不起訴となってますが、過失運転致傷罪の成立要件に被害者の過失は関係がない

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

なのでこの場合、クルマの運転者が「自動車の運転上必要な注意を怠って事故を起こしたか?」が捜査のポイントになる。
優先道路通行車は徐行義務がないのだから、原付が飛び出してきた時点で制限速度内なら回避できたか?次第なんですよね。

 

◯既に回避可能性がない状態(不起訴ないし無罪になる)

◯回避可能性がある状態(有罪になるパターン)

優先道路通行車に刑事責任上の過失が認められるかについては、以前2つの判例を紹介しています。

優先道路通行車両が有罪になるケースと無罪になるケースの境目。
優先道路を通行する車両は左右の見通しがきかない交差点での徐行義務が免除されてますが(42条1号カッコ書き)、優先道路を通行中に非優先道路から進行してきた車両と衝突する事案は度々起きている。優先道路とは交差点内にセンターラインがある道路(36...

①東京高裁 昭和61年2月24日(無罪)

被告人(優先道路)の速度 約40キロ
指定最高速度 40キロ
被害者(非優先道路)の速度 時速25キロ
被告人が被害者を視認できた位置 衝突地点の6m手前

②東京高裁 昭和55年3月4日(有罪)

被告人(優先道路)の速度 約70キロ
指定最高速度 40キロ
被害者(非優先道路)の速度 20~30キロ
被告人が被害者を視認できた位置 衝突地点の27.4m手前

優先道路通行車には徐行義務がない以上、非優先道路からの飛び出しを視認できた時点で急ブレーキをかけて回避可能か?が問題になる。
前者は「6m」なので既に回避可能性がなく無罪だし、後者は「27.4m」なので回避可能と判断され有罪。

 

優先道路通行車に過失運転致死傷罪が成立するかどうかは、結局のところこの距離次第になります。
ただし信頼の原則を否定する特別な事情がある場合は別。

 

で。
ヤフコメをみていて思うんだけど、「被害者の過失が大きいから不起訴」と思っている人がわりといる。
これは論点がおかしくて、「被疑者の過失を立証できなかったから不起訴」なのよ。

 

過失運転致死傷罪の成立には被害者の過失は関係なく、被害者の過失は量刑に反映される程度。
被害者の過失が大きい事案でも、加害者に過失があるなら普通に起訴する。
しかも今回は救護義務違反で起訴していることからも、「被害者の過失が大きいから不起訴」という判断ではないことが容易にうかがえるわけでして。

 

「被害者の過失が大きい」≠「加害者に過失が認められない」

 

両者の意味は違うわけですが、ここを勘違いしていると持論と合わない事案が発生したときには説明つかなくなるのよね。
過失運転致傷の場合には、被害者のケガが軽いときには刑の免除という但し書きはありますが、

ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる

「被害者の過失が大きいときは刑を免除」という但し書きはない。

 

「被害者の過失が大きい」と「加害者に過失が認められない」はイコールではありませんが、ここを勘違いしていると過失運転致死傷罪に対する理解がおかしくなる。
そして刑事責任上の過失が認められないことと、民事責任上の過失があるかは別問題なのよね。

 

ちなみにちょっとややこしいんだけど、原付に2人乗りして2人とも負傷している。
つまり原付の「運転者」は「同乗者」をケガさせたことになるため、原付の運転者については過失運転致傷罪が成立するでしょう(実際にどのように処理したかは知りませんが)。

 

行政処分は以下が考えられる。

クルマ(優先道路) 原付(非優先道路)
優先道路進行妨害 1(ただし交差点安全進行2の可能性あり)
付加点数 9(加療30日以上と仮定)
救護義務違反 35
35 10

もしですが、優先道路通行車に回避可能性があるのに回避しなかった場合なら行政処分はこうなる。

クルマ(優先道路) 原付(非優先道路)
優先道路進行妨害 1(ただし交差点安全進行2の可能性あり)
交差点安全進行 2
付加点数 6(加療30日以上と仮定) 6(加療30日以上と仮定)
救護義務違反 35
43 7

優先道路通行車に回避可能性がないなら「非優先道路通行車の専ら不注意」に当たる可能性がありますが(原付に2人乗りした被害者の過失をどう評価するかはやや疑問)、優先道路通行車に回避可能性があるなら双方ともに「専ら以外」になるわけでして。

 

最近「行政処分は第一当事者」という珍説を流す人がいてびっくりしますが、こういう事案をみても説明つかなくなるのよね。

「行政処分は第一当事者のみ」は真実か?
どこかの人が「行政処分は第一当事者のみ」みたいな解説を繰り返しているので書いておこうと思うのですが、「基本的には関係がない」道路交通法施行令を読んでも「第一当事者に加点する」という決まりもないし、そのような慣習もない。第一当事者、第二当事者...

結局のところ、どの立場であってもやることはやりましょうとしか言えないのが交通事故になりますが、

①原付が優先道路の進行妨害をしなければ事故には至らなかった。
②クルマが救護義務を果たせば罪には問われなかった

ダメ同士がガッチャンコした結末としか言えない…

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