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死人に口なし。

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こういうのを見ていて思うんだけど、

被害者が一時停止せずに交差点に進入した前提にしている。
報道をみても一時停止せずに交差点に進入したのか、一時停止したが「まだ遠い」と軽信して交差点に進入したのかはわからないわけでして、

 

死人に口なし、とはこういうことだよね。

 

というのも、前者も後者も「交差道路の進行妨害をした」という結果は同じなんだけど、行為の悪質性やイメージの悪さは明らかに前者。
「一時不停止のままノールックで交差点に進入した」のと、「一時停止して確認したつもりだったけど甘かった」ではだいぶイメージが違うのよね。

 

判例を見ていると気づくんだけど、「一時停止して確認したつもりだったけど甘かった」事案ってわりと見かける。
一例を挙げると神戸地裁 平成16年4月16日。

横断歩道付近を横断した自転車と、横断歩道に接近する車両の注意義務。
最近なにやらおかしな判決文の読み方をする人がいてビックリすることがありますが、道路交通法38条1項は横断歩道に接近する際に「横断しようとする歩行者が明らかにいないと言えないなら」十分減速して警戒する義務を課している。横断歩道を横断した自転車...

なお,被告人は,被害者が飛び出してきた旨主張するが,被害者が本件交差点の南側道路から一時停止することなく交差点に進入してきた旨の主張であるとすれば,本件事故の直前,一時停止の白線付近で自転車にまたがって止まっている被害者の姿を目撃した旨の信用性の十分な前記証人Cの証言に照らし理由のないものであるし,前認定のとおり,被告人車両が②地点から衝突地点(③地点)までの約13.5メートルを進行する間に被害者は自転車で約1.5メートル進行しているに過ぎないから,被害者の自転車が急な飛び出しといえるような速度で本件交差点に進入したものでないこともまた明らかである。

神戸地裁 平成16年4月16日

どっちが多いかは知らないし、ましてや今回の事故がどっちなのかもわからない。
わからないものを推測して決めつける風潮が問題なのではなかろうか?(結果的に合っていたかの話ではない)

 

こういうのって情報発信者が陥りやすいのかもしれないけど、自分も以前、推測してあーだこーだと解説したら現実はまるで違っていたことがありまして。
重大な名誉毀損にすらなりかねないし、わからないものは決めつけることなくいくつか可能性を挙げれば済む話だったなと大反省。
あれこれ推測しているうちに、自分が正しいかのような錯覚に陥ることもあるわけよ。

 

今回の事故がどうだったかは知りません。
とは言うものの、仮に違っていたなら被害者は反論すらできないのよね。
死んでしまったのだから。
こういうのも反面教師として捉えるのが吉なんだけど、仮に違っていた時に関係者からすれば気分がいいわけないよね。

 

以前から指摘してますが、報道から推測されるイメージと、裁判で確定した認定事実に大きな隔たりがあることはわりとある。
一例を挙げるならこういうもの。

イッヌは無事??
こちらの件ですが、そもそも犬はケガしなかったのか?と思う人がいる様子。一審判決によると、「犬の治療費」として原告(歩行者)が請求し、被告(ロードバイク)は犬の治療費について争わずに認められてます。なのでイッヌはケガしたものと思われますが、そ...

報道から推測されるイメージとはだいぶ違う。
報道からすると「チャリカスが前をちゃんと見ないでかっ飛ばした事故」。
しかし裁判ではこのようになっている。

本件遊歩道は、公園敷地内の、歩車道の区分がなく、自転車・歩行者の通行区分もない見通しが良好な道路で、交通規制もない。本件遊歩道の路面は平坦なアスファルト舗装で、本件当時は乾燥していた。本件遊歩道は、本件現場の先で、左にカーブしており、カーブ部分の南側には、扇状の階段(以下「本件階段」という。)がある。
本件事故当日、原告は、父母とともに、本件現場付近に車で訪れ、(中略)。各人が一匹ずつリードでつないだ犬を連れていたが、原告が連れていた本件犬が自力で階段を下りなかったため、原告は、本件犬を抱えて本件階段を下りた。原告が、本件階段下の草地で本件犬を下ろしたところ、本件犬は本件階段付近の草を探っていた。本件リードは、リール付きでリードの出し入れをして伸縮できるものであった。なお、原告の父Bは、先に階段を下り、遊歩道を渡って北側の草むらで、自身が連れてきた犬を遊ばせていた。
被告は、ロードバイクである被告車を運転して、本件遊歩道のやや左側を、西から東に向かって、時速約20キロで走行していた。被告は、別紙図面3の①地点で、進行方向の(ア)地点に原告が佇立していること、被告からみて原告の左側の草むらに人(B)と同人が連れた犬がいることを認識したが、この時、原告がリードを把持して本件犬を連れていることは認識していなかった。被告は原告の右側のスペースが広く空いているように見えたため、原告の右側を通過しようと考え、また、進行先で遊歩道が左にカーブしていることから、被告車のペダルを漕ぐのをやめて速度を落として進行し、原告の右側を走行しようとした。被告が、②地点を通過しようとした時、原告が把持していた本件リードと、被告車のチェーン部分等が接触して絡まり、被告車はその場において停止する力を受けた一方、被告の身体は、慣性によって被告車から離れて、前方に進んで芝生の上に倒れ込み、被告車も倒れた。他方、原告は、右腕が引っ張られる形で転倒した。

(中略)

実況見分が行われ、本件現場において、自転車走行時及び停止時の本件リードの視認可能性を確認するために、被告車と同等の大きさの自転車を時速20キロないし25キロの速度で走行させて本件リードの視認状況が確認された。
警察官は、本件リードの存在を認識しない前提で、3度にわたり、通常の状態で前方を注視しながら自転車を走行させる実験を実施したが、本件リードを張った状態及び緩ませた状態のいずれにおいても、本件リードを発見することは困難であった。一方、警察官が、本件リードの存在に注意しながら時速約20キロで自転車を走行させた時には、本件リードを約9m手前で視認可能であった。

優者危険負担の原則からすると民事責任上の自転車過失が大きくなるのは当たり前ですが、この事実認定で「俺なら避けられた」と断言する人がいたらオカルトレベル。
警察官ですら視認できなかった犬のリードに引っ掛けたのだから刑事責任はムリだろうけど、民事責任は「平等ではなく公平」なのだから自転車過失が大きくなるのは当たり前。

 

けど、報道だけのイメージは全然違うのよね。
苫小牧白バイ事故にしても、被告人が右折を開始した時の両者の距離を報道せずに白バイの速度を強調すれば、そりゃイメージはだいぶ変わるとしか言えないけど

なぜ?時速118キロ白バイ事故で右折車に注意義務違反を認めた理由。
以前話題になっていた、苫小牧で起きた時速118キロ直進白バイと右折車の事故。札幌地裁は右折車ドライバーに注意義務違反を認め過失運転致死罪が成立するとしましたが、そもそも時速118キロ直進車を回避できるのか?と話題になってました。報道を見ても...

いろいろ推測しているつもりが、実は的外れなことは多々ある。
けど推測している本人はそれに酔いしれて視野が狭くなるから、結局反面教師にするのがよいと思う。

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